Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

公教育から生み出せる人材は、社会のニーズとずれている

2010-02-13 09:39:53 | その他
今週、アゴラで中学受験の是非が話題になっていた。
中学受験にかぎらず、日本の教育制度にいろいろと課題が多いのは事実だ。

東大出てみて個人的に思うのは、受験勉強ってほとんどまったく役に立ってないなということ。
しかも4年間遊んでるから、入学時を頂点としてそこから教養もインテリジェンスも下がり続ける。
大学まで一生懸命詰め込むだけ詰め込んで、4年間ぼぅーっとするシステムは実に無駄だ。

最近、とみにそう思うようになったのは、欧米の大学院で学んだ人(国籍問わず)と会う機会が
増えたからというのが大きい。
たぶん18歳時点の知識量では、普通の東大や一橋の学生は彼らに負けてない、というかむしろ
勝っていると思うのだが、30歳過ぎた今だと結構な差で負けている気がする。※ 
大学生活+20代の間に、決定的にまくられてしまっているわけだ。

まあ商社なんかでは頑張っている人も多いのだけど、大手のインフラなんかに入って10年経つと、
もう人材の市場価値がゼロというか、“企業”という保育器の中でしか生きていけない生き物に
なっている人が多い。
もともと年功序列制度というのは、そうやって人を企業カラーに染め上げて縛りつける制度なので、
この結果自体は想定通りと言えるけど、本人の人生にとっても社会にとっても、これはいまや明らかな
損失だろう。

というわけで、人事制度はもちろんのこと、教育制度についても以下の点は無視できない。
・詰め込み教育は効果ゼロではないが、それだけでは実社会であまり役に立たない。
・大学4年間の高等教育がとても重要。そこを無為に過ごす日本の教育システムは非効率。

詰め込み自体は何らかの形で残るだろうけど、大学教育自体はなんとかすべきだ。
それには労働市場の完全流動化を実現して、
「初任給が人によって全然違う」「3年目で事業責任者になれる」
ような土壌を作るしかない。大学で学ぶことが要求される社会の実現だ。

というような話はいつも言っていることなので、もう知ってるよという人も多いだろう。
今回は私立の中高一貫校について、ちょっと思うところをまとめてみたい。

一昔前まで、人事の間では「付属校上がり」を一段下に見る傾向のある人が多かった。
同じ慶応の法学部なら、付属校より一般入試経験者の方が、受験というフィルターを経ている分、
優秀に違いないというシグナル効果だ。企業自身、かつては詰め込み型を重視していたということだ。
実際、幼稚舎のOBに聞いても「中学、高校と後から入ってくる人の方が成績は良い」のは事実らしい
から、この先入観はあながち間違いでもない。

でも、最近こういう考えは、少なくとも企業側からはとんと聞かなくなった。いつも言っているように
求める人材像が変わってきたからだ。
「一生懸命詰め込んできました」というタイプは、もちろん悪くはないが別に好かれもしない。

僕もそうだったからわかるんだけど、公立の一番ダメなところは、ごくごく平均的なモデルにそって
カリキュラムが組まれているため、頑張る子でも、というか頑張れば頑張るほど枠にはまった“普通の子”
になってしまうということだ。

で、その平均的モデルというのは大昔に作られた昭和モデルなせいで、実社会でえらく苦労する羽目になる。
中学、高校は地方公立で優等生、大学もそこそこ良い国立大、でも今では平均年齢40歳企業の“永遠の若手”
状態という人は少なくない。むしろ僕の知人はそんなのばっかりだ。
これもまた、若い世代の閉塞感の一つだと思う。

個人的には、私学の中高一貫校出身者の方が、話していて余裕があるというか、組織依存でない
アウトサイダー指数が高い気がする。

もちろん、リスクはある。
たとえば同じくらいの偏差値の私大学生を100人面接したとすると、頭一つ抜けている私立中高出身者が
いる一方で、一番ダメなのも同じ私立校出身者だったりする。
それでも、たぶんそういう人は公立校に行っても勉強はしていないはずなので、やはり今の時代、
私立を選択するのは合理的な気がする。

余談だが、“勉強時間”という意味なら、大学までガンガン詰め込みして、在学中は“優”かせぐために
一生懸命授業に出て、卒業後は官費で欧米の大学院に留学している財務や経産官僚が最強だろう。
実際めちゃくちゃ優秀な人は多い。
であるので、労働市場改革や教育改革を待たなくても、大学四年生対象に“達成度試験”みたいなもの
を作って就職活動に使わせれば、みんな勉強するだろうから手っ取り早く底上げにはなると思われる。

もっとも、霞が関を見ても明らかなように、優秀な若手を採ったところで、それを活かす人事制度が
ないと組織全体のパフォーマンスは上がらないわけで、結局は雇用流動化が必要である点に変わりはない。


※日本人で40代以上だと、章男ちゃんみたいに差を感じない人もいっぱいいるけど。

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70 コメント

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Unknown (台湾逃亡中)
2010-02-13 11:44:56
大学が専門教育の場ではなくなって、久しいと言われています。友人の高校教師も、それをはっきりと言っていますし。最早、就職予備校だ、と。しかし、その就職予備校としての価値も、下がりつつあると感じています。

日本に居た時から感じてはいたのですが、台湾に来てから、日本以外の国の学生との交流を通して、日本の大学と、会社の制度って、本当に奇妙だと、確信しました。

優秀な人材が生かされないってのは、なんとも勿体無いですし、そういう仕組みになっていないから、教育にかけるコストをばんばんカットする事になるんでしょうね。

本当に優秀な人や、ある程度お金がある人が、国外に出て学んだり仕事をするのは、当然だよなと感じています。

台湾あたりで、そう感じるんだから、ヨーロッパやアメリカに行ったら、もっと強烈にそういうのを感じるんだろうな。
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規制はダメですって (V)
2010-02-13 12:57:43
>労働市場改革や教育改革を待たなくても、大学四年生対象に“達成度試験”みたいなもの
>を作って就職活動に使わせれば、みんな勉強するだろうから手っ取り早く底上げにはなると思われる。

一番手っ取り早い「大学改革」は、官庁から大手企業まで入試の合格発表に乗り込んで面接しその時点でリクルートしていくこと。

・やる気のない教師
・やる気のない学生
・不要な校舎
・低密度の4年間
・不要なFランク大学

すべて一掃できる。今の日本で無理やり勉強させる制度を作っても無意味。
http://www.j-cast.com/kaisha/2009/05/21041544.html
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Unknown (AMC)
2010-02-13 13:02:19
> 4年間遊んでるから

普通の国立大学レベルの大学生は、文系・理系関係なく、論文や実験、研究などで大学に泊まり込むなど、下手な社会人より遥かに忙しい毎日を送っていると思うのだけど、一体どこの異世界の大学生をさしているんでしょうか?
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Unknown (goodworker)
2010-02-13 14:07:08
城さん

こんにちは。
私は社会人三年目の男子です。

城さんのブログや新書を拝見して、
外資系への転職を決断しました。

大手にいる安心感はありましたが、
何よりポストが硬直している閉塞感や、
残業を強いられる点で不満を感じていました。

城さんが主張しているjobmarketの流動化が、
実現する日は必ず来ると思います。

というか、
僕たち20代が戦って勝ち取らないといけないと思ってます。

本当にきっかけを作って頂き、
ありがとうございました。

引き続き頑張ってください。
僕たちも頑張ります!



必ず
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大阪府の学校教育より思うこと。 (Shimotaka)
2010-02-13 14:20:32
・公立学校の可能性
私の地元、大阪府ではトップクラスの学校を中心に教育重点化や特色ある高校づくりを進めています。私自身は重点化対象校を出ていますが、全体的には熱心な先生や生徒が多かったと思います。公立学校の再興のためには、このような差別化をしていくべきだと思います。もっとも、改革も発展途上だし大学入試にしか見ていないのでは問題ですが。
小・中学校でのバウチャーも意味はあると思います。(そうなると住所で自動的に通う学校を割り振る制度にもメスをいれるべきですが。)

・橋下発言と府立大
初めて聞いたときは違和感を感じたのですが(大阪府立大は東大阪市の中小企業との産学連携にかかわるなど、必ずしも府民にとって無意味とはいえない)、これは大学と社会の関係を表しているように思えます。
学生は要領よく単位をそろえて卒業できればいいと割り切り(僕自身も含め…)、一部の教員=学者はどうせ熱心に講義しても無駄だの自分のことさえ気にしてればいい(世間ずれのリスク)だのと割り切り、学生の親はいいところへ就職するツールと割り切り、世間(企業も含む)は大学の研究や教育に興味なし…(博士の就職難にも通じる。)これでは大学が社会のインフラとして十分に機能するのは難しいと思います。ある意味、わざわざ公的部門で大学を運営する理由がないと言うのも当たっている気がします。もっとも、潰せとか吸収させよとかいうことはナンセンスで、今申し上げた構造的な問題を全て変えるべきだと思いますが。(ちなみに僕は府立大ではなく市立大の人間です。)

長々と失礼しました。
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同感です (某20代官僚)
2010-02-13 14:41:32
現役20代官僚です。

>もっとも、霞が関を見ても明らかなように、優秀な若手を採ったところで、それを活かす人事制度が
>ないと組織全体のパフォーマンスは上がらないわけで、結局は雇用流動化が必要である点に変わりはない。

ここはまさに同感です。
私は優秀なほうではありませんが、霞ヶ関の人事制度は本当にひどいもんだと日々感じています。
優秀な同期があまり意味のない仕事を毎日朝までさせられているのを見ると、人材の無駄使いここに極まれリと思います。

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今は違うのだろうが (a2c-tk)
2010-02-13 14:43:11
城さんよりちょっと上の章男ちゃん世代です。

理系はわかりませんけど文系だとそんな感じでしたね。語学と体育はほとんど出席して、他の科目はレポートと試験(直前に出回る過去問コピー収集が鍵)だけ通せば4年間遊んで過ごせます。私は週5日ちゃんと通ってましたよ。学食で食事するためでしたが。

もちろん今は違うらしく、サークルのOB会で一回り以上歳の離れた後輩と大学生活とか就職活動とか自分の頃はこうだったみたいな話をしましたが、とても驚いていましたね。

だから「4年間遊んでるから」というのは城さんの経験談としては間違っていないと思いますよ。
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Unknown (Unknown)
2010-02-13 15:10:26
システムの問題より勉強しない学生の問題でしょう。
大学でいろいろ身につけてくる人はたくさんいますよ。
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Unknown (池尾信者)
2010-02-13 15:14:01
札幌の一流公立高(笑)だったけど、二年時くらいから、頭が悪いのはまじめに教師の話を聞いてる自分ではなく、向こう(教師)だと確信しました。それから、予備校通ったけど、教科書もらったら自宅で独習。

結局は、教師の競争があればいいので、今はネットがあるから、どんどん頭のいい奴は発掘されると思う。

国立も私学もバカ学生ばかりなのは、第一に教師の競争がないから。第二に経営の自由がないから。第三に学位授与機構に競争がないから。第四に女子大生がかわいいすぎるから。
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Unknown (Unknown)
2010-02-13 15:20:24
当方理系大学部生やっています。はっきりいって勉強している方では無いですが、それでものんびりしてる感じは無いです。大学行ったら暇なんて聞きましたが、とんだ嘘でした。
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