Joe's Labo

城繁幸公式。
というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

人生にもクライマックスシリーズは必要

2010-04-22 12:32:26 | 人事
ビジネスマンの精神科 (講談社現代新書)
岩波 明
講談社

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先日、某紙の編集委員と話していて、ふと会社内のメンタル・トラブルの話題となった。
なんでも地方支局に顔を出すと、4人も休職者がいて驚いたそうだ。記者20人だから実に2割。
それも、全員2,30代の若手らしい。
「いったいどういうことなんでしょうか……」と困惑していたが、無理もない。

その新聞は過去、何度も、“うつ”などのメンタルトラブルの増加は、「IT社会のストレス」だの
「ノルマや過重労働」だのが原因だという論調を張ってきた。
だがこれらは誤りだ。週休二日制の浸透やITの普及で、むしろ日本人の年間総実労働時間は
(長期的には)減少傾向にある。そもそも、東京の政治部ならともかく、地方支局で過労というのは
あまり聞かない。
そしてとても重要なことだが、新聞崩壊とかなんとか言われているが、新聞社の平均賃金は
腐ってもメーカーよりは高く、それくらいの若手でも800万くらいは貰っている。

つまり、「全然恵まれた労働環境なのに、なぜわが社の社員はこうもバタバタ壊れるのか」
という点に困惑しているわけだ。

とはいえ、理由自体ははっきりしている。
30代前半までに、「本社出世コース」と「地方ドサ回り兵隊コース」に分けて
後は30年間放置プレイなんて硬直的な人事制度こそが原因だ。


30過ぎの若手に「おまえあと30年間消化試合だから。あ、でも仕事は手抜くなよ」というのは
やっぱり無理があるのだ。消化試合を無くすには、社内にクライマックスシリーズを導入しないとね。

この点について、精神科医の岩波明氏が興味深い指摘をしている(狂気という隣人)。
氏の同僚である医師が、数年の間に5人も自殺したこと、そして、よく指摘される「医師の過労」
といった問題が、この場合はあてはまらないことを述べた上で、一つの“仮説”を示す。

自殺を考える以前に、あるいはうつ病の状態になる以前に、すでに彼らは
生きていくこと自体に希望を失っていたのではないか?そしてまたこのことが、
最近増加している自殺者たち、あるいは自殺しようと考えている多くの人々に
あてはまるのではないでしょうか。


僕の感覚からすると、この指摘がもっとも現場に当てはまる気がする。

ちなみに、冒頭の編集委員さんには「もうちょっと簡単な対策はないですかね?」と聞かれたので
もっと簡単な対策も提案しておいた。
それは、最初から「正社員でありさえすれば満足だ」という人材を採用することだ。
高い収入はもちろん、やりがいや社会の公器たらんというような情熱も持っていない層だけ採れば、
そこまでの惨状にはならないだろう。
要は、最初から仕事を消化試合だと思っているタイプを採るわけだ。

「そんなのじゃ仕事は回らないよ」というのであれば、システム自体にメスを入れるしかない。
飲めば一発で直る処方箋なんて存在しないのだ。


※精神科医の著作にはいい加減なものも多いが、氏は数少ない「信頼できる書き手」だ。
 「ビジネスマンの精神科」は、メンタルトラブル対策の重要性を理解する上でも有用なハンドブックだろう。

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23 コメント

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Unknown (ZG)
2010-04-22 13:23:34
平社員5人の上に1人の上司だったら、2割のおべんちゃら、ゴマすり、手もみで済むかも、それが逆転して5人の上司に1、2人の平社員がゴマすってりゃ、頭オーバーフローになってしまいますがな。
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幸せが金だけで買えれば苦労しない (台湾的日本人)
2010-04-22 18:18:41
なるほど、とても興味深い内容です。
金銭的に恵まれているから幸せと考えるのが、いかに短絡的で恐ろしいかを示している気がします(もちろん、それが絶対の幸せと信じる人もいますが)。

私も台湾に住んでいて、はっきり言って収入は嫌になるほど安いですが(毎月6万円くらい)、日本に帰りたいとは思いませんよ。

理由は「人間扱い」してくれるからです。日本じゃフリーターやニートになったら、それだけで「人生の失格者」扱いされるし、白い目で見られますが、こっちはそんなことないですからね。

おまけに日本に興味ある人がたくさんいますから、日本人と分かるとフレンドリーに接してくれます。

人から言わせれば「たったそれだけ?」と言われますが、その「それだけのこと」が私には一番大事なんです。

金銭だけがいいからと言って、それが幸せだと考えられるのは短絡的だと思います。
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メンタル系にすら根性論 (松本孝行)
2010-04-22 20:33:40
 どうもメンタルヘルスの問題も、「気合いが足りないんだ」とか「若者は弱くなっている」という精神論・根性論がまかり通っているようですね。そんなんで治るなら、誰もが根性強くしますってねぇ…

 今の日本ってどうもシステムの問題に目を向けない人が多いような気がするんですよね。たちあがれ日本のおじいちゃんたちも、根性論が目立ちますし。

 もっとシステム面に目を向けないと、根治は不可能でしょう。
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本社ビジネス (Ts)
2010-04-22 20:46:34
日経ビジネスの記事を読んでやっとここまで来たか、という感じ。

日本が先進国で居続けるには、介護でも環境でもなく「本社ビジネス」しかないと思ってる。国際企業グループのアジア統括本社を日本においてもらう。

ただし日本人が「ホワイトカラーとして有能」で「英語が流暢」でないといけないので、これから必死に努力しないといけない。無論これができなければ先進国から転落するだけ。
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Unknown (fisico)
2010-04-22 23:16:47
身につまされる話です。
自分もある意味同じ様な状況。
今でこそ会社に対してクールな見方ができるようになりましたが、10歳若い時だったらヤバイ!

こんな年功序列なんて制度やめれば、中高年の活性化の意味でも、企業にとってメリットがあると思うんですけどねえ。
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Unknown (シロガネ)
2010-04-22 23:35:36
>台湾的日本人さん
台湾にも「フリーター」という人(社会的地位?)はいるのですか?


ちなみに私は未だにフリーターと単なるアルバイターの違いが分かりません。
なんですが、ここ数年フリーターと言うと何か臭いのようなものがついているような響きになりますね。
どこか差別的なような。
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名古屋の河村たかし市長 (1970年生まれ)
2010-04-23 01:13:28
名古屋の河村たかし市長の政治姿勢「日本をこういう社会にしたい」の中に「やりなおしのきく社会」というのがあったと思います。
一橋大学を出ながら、家業の古紙回収業を継ぎ、中小企業の辛酸を味わい、一時期は仕事の傍ら司法試験を目指した河村さんならではの体験が生きたものだと思います。一方で、河村さんはリアリストですから、人生50歳で20歳の時と同じように再スタートが切れるわけではないとも十分理解しているとも思います。

現在のように、「新卒至上主義」でその上、人生の早いうちに先が見えてしまうような会社で転職もままならない、仮に転職したら「正社員」という身分を失い、人生設計もできない。

こういう社会はおかしいと言って、既得権益にかみついて吠えてくれる元気な還暦過ぎのおじさんがいることが唯一の救いでしょうか。

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Uターン就職 (Brown)
2010-04-23 23:27:14
テレビでやってたのですが最近就職氷河期も手伝ってか、最近は学生の間でUターン就職が増えているらしいです。
何でも都市部の企業は競争率が高すぎるからUターンで競争率が
(都市部より)低い地方企業を狙うのが理由なんだとか。

地方の中小企業の経営者は「今まで大手に流れていた優秀な
人材が地方にも来てくれるから、うちとしても採用したい」
と言ってました。

学生に実際聞いたことないのですが、本当にUターンで優秀な学生が地方に流れてるのでしょうか?
どうもそんな気がしません。逆に超優秀な学生は年功とは関係ない企業や海外に流れてると思うのですが。
それにUターン就職しても結局は「県庁所在地勤務のエリートコース」と「辺鄙な場所のドサまわり兵隊」な人事制度の会社なら、何のためのUターンなんだか。

学生が「年功序列」を希望する割合が過去最大という結果も少し前に
出ましたが、それと合わせて考えても最近の学生の
傾向は目が離せません。
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ある意味我々も発想の転換が必要ですね。 (氷河期戦士)
2010-04-23 23:42:00
>最初から仕事を消化試合だと思っているタイプを採る

そういう人材では「男性」では駄目で、「女性」ならいいんですよね。これまた男性差別を見つけてしまいました。

バブル期辺りに就職し、会社に宙ぶらりんになっているオバサンたちが企業にいるようですね。そういうオバサ
ンたちは上手い汁をすすり、鬱とは無縁の生活を送っています。

私は腹立たしい。でも、こういう根性を男性も持つべきなんでしょうね。それを「ゆとり世代」はよく分かっている。外資やベンチャーで身体壊してまで働こうという
人たちより頭がいいのかもしれません。

初めから無謀な戦いに挑まず、かといってニートやフリーターじゃ肩身が狭いから、最も既得権を持っていた「一般職女性」の身分を掴み取ろうとする。もし、カネ
が欲しければ株などで副業する。―――頑張って報われ
なくて鬱になるリスクを回避するにはこれしかないのか
もしれませんね。

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今回のブログは意外といい案 (Unknown)
2010-04-24 00:32:38
「要は、最初から仕事を消化試合だと思っているタイプを採るわけだ。」というのは、草食系の若者が多い今、なかなかいい提案だと思います。

先輩方をみていると、会社に多くのものを求めすぎているのではないかという気がします。勿論賃金や保険といった対価福利厚生といった最低限のものは支給されてしかるべきですが、キャリアやプライベートな部分は、会社が用意してくれれば利用すればいいし、利用してくれなければ自分なりに楽しむ方法をみつけるという方法を考えたほうがいいと思います。

どんな仕事もつらい部分もあり、つらいのが当たり前だというところがあると思いますが、そういうのを乗り越えて自分なりに楽しみながら生活してしまうのも社会人としてのスキルの1つなのではないでしょうか。
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