Joe's Labo

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というか避難所。移行か?
なんか使いづらいな・・・

書評「最悪期まであと2年! 次なる大恐慌」

2010-04-01 14:05:52 | 書評
最悪期まであと2年! 次なる大恐慌―人口トレンドが教える消費崩壊のシナリオ
ハリー・S・デント・ジュニア
ダイヤモンド社

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派手なタイトルだが、各国の経済成長について、人口経済学の視点から割と真面目に予測した書だ。
「老いていくアジア」「人口経済学」といった良書があるので、割と知っている人も多い考え方だと思う。
簡単に言えば、生産年齢人口の割合が高くなっていく間(人口ボーナス期)に工業化が進むと
経済は急速に発展し、割合が減少に転じると長期的な低迷に入るというもの。
本書はこれに世代ごとの支出の波を重ねることで、より突っ込んだ予測を立てる。

あくまで一つの観点に過ぎないのだが、20年前に日本の凋落を予想している点は評価していいだろう。
また、本書の言う「支出の波」とダウ平均がこれまでのところ、きれいに一致しているのも事実だ。

では、本書の描く近未来はどういったものか。
先進各国のベビーブーム的世代が支出ピークを過ぎることで、デフレが各国の基調になるとする。
日本こそ先進各国の未来図というわけだ。

日経平均株価は1990年から2003年にかけて家計消費と同様に右肩下がりのトレンドを
描いていたが、この間の下落率は80%にも達した。つまり、米国のベビーブーム世代
によるバブル・ブームは、たとえ原油高や信用危機、住宅バブルの崩壊などが
起こらなかったとしても、ほどなく終わる。
欧米諸国にとって日本は、株式と不動産のバブルが縮小すれば何が起こるかという
格好の見本なのである。


一方、21世紀が人口増加率の高いアジアの世紀になることは間違いないが、中国の覇権は長くは
続かない。一人っ子政策のせいで人口ボーナスがあと数年で終了し、先進国化する前に失速するためだ。
本書の予測では、21世紀後半に経済チャンピオンの地位に就くのはインドである。

個別の主要国の予測も載っているのだが、(今のままなら)日本の未来ははっきりいって暗い。
ただし、その頃にはロシア、イタリア、ドイツ、スペインといった茶飲み友達が出来ているので、
寂しい老後ではないだろう。

余談だが、この手のパニック本というのは不況時には平積みになっているものだ。
内容はピンキリなので、出版社と著者(訳者)名を参考にするといい。
両方聞いたこと無い名前だとパスした方が無難だろう。

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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (猪口冷斗)
2010-04-01 15:43:19
 「バブル再来」で見事に転けてくれた著者という位置づけなんですが。
 まぁ推論という事なら、論理的な説得力はありますね。
 でも、風が吹けば桶屋が儲かるとは誰も思っていないと思いますよ。
Unknown (通りすがり)
2010-04-01 17:47:43
>内容はピンキリなので、出版社と著者(訳者)名を参考にするといい。
ですよね。ここに紹介されたので見てみます

20年後、夕張とJALがポコポコ生まれる日本で行政サービスのアウトソーシングや
民間警備をしたいと漠然と考えている大学生なのでこれは読んでみたい
うー自信がない
Unknown (ZG)
2010-04-01 21:04:36
アメリカで、ラ・バンバが流行った頃、何故流行るのか、それは、ヒスパニックの出生率が高いからって聞いた、今のアメリカは3億人超えてるんでしょ。
Unknown (ソロス)
2010-04-01 23:17:41
某投資家はいままでのバブルは小手調べで、これから真打の「超バブル」が来るって言ってたっけな。

それが本当なら危機に乗じて荒稼ぎせねば。

本当ならねえ・・・
今のままなら (スターチスの花言葉)
2010-04-02 12:33:35
今のままならではなくて具体的に何からはじめたら
良いのでしょうか?
Unknown (epi)
2010-04-02 14:41:01
右肩上がりの経済においては、ある部分でマイナスが発生しても、他の部分でそれを補って余りあるプロフィットを得ることが出来ました。
それにより富の偏在が発生しますが、国・権力による「利益の再分配」によって、民衆の不安を減少させることが社会の安定につながりました。

縮小均衡社会になりつつある現在は状況が変わっています。
全体合計のプロフィットがプラスにならない状況下では利益の再分配なんて出来ません。
むしろ「損失の再分配」をしなければならない状況です。
つまり、社会のためにあえて「全員に多かれ少なかれ不利益の発生する」施策を行わなければいけないのかもしれません。

しかし、それを推進する立場になると、選挙に落ちる確率はかなり高くなります。
代議士たちも頭で分かっていたとしても、公式な場では怖くて言えないでしょう。
民主主義の難しい一面ですね。


>余談だが、この手のパニック本というのは不況時には平積みになっているものだ。

去年あたりは「ドル崩壊」「アメリカの没落」みたいな本が山盛りになっていますが、ずいぶん少なくなりましたね。
浜○子氏がヨーロッパ本を出したようで、次の流行は「欧州崩壊」でしょうか(笑)。
パニック本は「筆の早い学者の格好のお小遣い稼ぎ」のように思える今日この頃。
Unknown (yu-ki)
2010-04-03 01:53:29
今日、城さんの著作
「辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代」を購入し、読み始めました。
ただ一言好きです。

そこで聞いてみたいのですが
昭和的価値観人間と平成的価値観人間で討論をした時
きっと議論は平行線を辿る一方だと思います。

この場合、平成的価値観の人はどういう行動を取るのが一番だと思いますか?
僕はお互い論点が違うのだからただ時間の無駄でスッパリきり上げたというか討論を辞めた方がいいと考えているのですが。
Unknown (Unknown)
2010-04-03 02:02:59
内容には賛否両論ありますが、一昔前の不況のときよりはマシですね。昔は不況になると週末思想が流行して世界はもう滅びるだのあやしい宗教が多くでたものですが、今回はその時に比べればマシな内容の本が多いと思います。

日本の景気なんてものはもうよくなんてならないんだよということですが、景気が悪い子供ができない結婚しない程度の話ですむのは大したものです。

今の20代みていると皆地に足つけてしっかりしていると思いますよ。
逃げ切り狙いの人とは分かりあえないだろう (城)
2010-04-03 07:54:26
>今のままならではなくて具体的に何からはじめたら
良いのでしょうか?

徹底した規制緩和と民営化と財政再建を全部同時に。でもそれでも金足りないだろうから社会保障カットと地方切り捨て都市への移住も。左巻きの方々は反対しそうだけど、中国共産党のお墨付き政策ですから。

>きっと議論は平行線を辿る一方だと思います。

同感。ただ、既得権抜きに合理的に考えれば正論はひとつ。20代の団塊世代をタイムマシンで現代に連れてきたら、すぐ会社辞めると思うよ。
例えば (スターチズの花言葉)
2010-04-03 08:58:18
今週の週刊東洋経済で八代尚宏先生は派遣全面禁止に否定的 で派遣で働く人の 雇用環境改善を指摘 されていました。 従来と微妙にニュアンスが変わっている 気がします。
城先生の考える規制緩和路線は従来型小泉構造改革路線を継承しているのでしょうか?
それとも微妙なアクセントやかくし味の 味付けがあるのですか?