ルポ 雇用劣化不況 (岩波新書)竹信 三恵子岩波書店このアイテムの詳細を見る |
「大変だあ、大変だあ」というフェーズ1の話がほぼ全編、97%くらい続く。
まあ岩波の雇用問題だからこんなもんだろうなと予想はしていたものの
いい加減進歩しろよといいたい。7、8年は遅れてるぞ。
ちなみにその“貧乏暇なし”の原因だが、こちらも伝統の「経営者と国が悪い」。
グローバリゼーションというスパイスをブレンドしてはいるが、あまり新鮮味は無い。
そして中盤で介護や流通の例を持ち出し「とはいっても正社員も大変だ」とフォロー
するのももはや定番。
それでもようやく、最後の最後で申し訳程度に解雇規制の存在しないデンマークと
フレクスキュリティに言及している分、進歩はしているか。
まあ最初からそれ以外に解決策なんてありえないんだから、当然の帰結だ。
といっても、著者の歯切れはものすごく悪い。
同一労働同一賃金の規定も無しに国が派遣法を改正したから、ここまで格差が
開いたのだと非難するが、
同一労働同一賃金の実施に頑強に反対し続けているのは連合じゃないか。
そこを認めない限り、百万言つらねたところで価値は無い。
というより、こういうのはご自身の会社で考えてみると、よくおわかりになりますよ。
まあ編集委員というお立場上、いろいろ言いにくい部分もあるでしょうから、私が代わって
シミュレーションしてあげましょう。
某新聞社には給与体系が7掛けの子会社と、そこで使われる契約社員やフリーライターと
いった非正規雇用など、いくつかのヒエラルキーがある。
同じ仕事をしていても、本社様から天下ってきた殿上人と子会社プロパーとフリーライター
では賃金格差が存在し、特に正社員と非正規の間には大きな溝がある。
さて、この状況で同一労働同一賃金を実施すると…
誰がどのくらいの価値の仕事をしているのか、職能給ではわからないから、とりあえず
本社様の正社員の平均賃金である1500万円ほどみんなに支給するとしよう。
人件費は大幅にアップしてしまう。経営者が悪いそうだから、とりあえず新聞社社長の給料は
半分だ。それでめでたく同一労働同一賃金は達成!悪徳資本家を懲らしめ、格差も
ワーキングプアも消えました!
…ってなるわきゃないだろう。
たぶん、何人かきわめて優秀な人間はそれだけ支給されるだろうが、それ以外の
非正規雇用は全員クビになり、正社員の残業&編プロの請負が増えるだけだろう。
一部の人の言う「国と経営者が全部悪い」的な政策で生まれる現実はこれである。
新聞社のトップなんて、まあメーカーよりは高いだろうが、それでも一億は貰ってないはず。そんなのをボランティアにしたって、数人しか雇えない。
要するに、労働者間の再分配が機能していないのが問題なのだ。
著者のいうように「市場原理に任せたからこうなった」というのは本末転倒で
ただしくは「市場原理が機能していないからこうなった」と言うべきだ。
よって、まずは市場原理が機能できない原因である規制を外すことが重要となる。
労働者全体へのセーフティネットの整備は必要だろうが、
(恐らく流動化で処遇の下がる)中高年の正社員に対しては既に失業給付という
ものが存在している。それ以上、たとえば賃下げ分は100%保証しろなどという
のは流動化でもなんでもなく、出来ないと知りつつ時間稼ぎのためにばらまく煙幕だ。
そういう矛盾が手に取った瞬間脳裏をよぎってしまうので、僕はもうこの手の本には
とても乗れない。いや、もう岩波ってだけで内容は想像がついてしまう。
何より、労働者ヒエラルキーの頂点に君臨し、年収2000万は貰っている
スーパー勝ち組中高年正社員の著者に
「みんな苦しいのです、だから安易な流動化の議論など避けるべきなのです」
と言われても、申し訳ないけど1gの説得力も感じない。
なんにせよ、岩波の書籍で“労働市場の流動化”に言及したのは初めてではないか。
そういう意味では記念碑的な一冊かも。
国内資本でも、そう簡単には買収できないようになってしまいましたね。
“最後の昭和的楽園”にいる著者は幸せな一生を送ったんでしょうねえ。ググって見たら平和で裕福で上から目線な方だった。(苦笑)おそらく貧乏世帯を取材しても同じ日本人とは思えないんだろうなあ。(あ、不要な敵を増やすのは止めておこう)
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2009/0514/239701.htm
この本を読むと、日本の官僚って狡猾だよなあと改めて思いました(笑)。
稼いでも稼いでも税金が追いかけてくるんですね。
年収1000万だと、手取りはその75~80%くらいですので800万とします。マンションの家賃やローン、駐車場代、車の維持費で月20万、保険・ネット・携帯で月5万、水道光熱費で月2万円、家庭の飲食費で月6万、衣服で平均して月2万、週末の家族サービスで月2万、夫婦や子供のお小遣いも入れたら、月の生活費だけで40万を突破します。月40万に抑えても、年間で480万。
月15万貯金して、年間で180万円。生活費と合計で660万。残りは140万ですが、海外旅行に家族で1回行ったら、ほとんど残りませんね。子供が私立でも行って学費がかかったら、海外旅行も行けません。
実際は、家電や車も故障すれば、その他色んな臨時の出費もありますし、老後を考えれば貯金ももっと必要なので、もっと切り詰めなければなりません。
まあ、だから城さんの東大の同期が「毎年の海外旅行も、BMWも、子供二人を私学に通わせることも夢のまた夢」というのはそのとおりで、優良大企業でも中間管理職にとどまる限り、年収1000万くらいが限界ですから。
しかし、年収1000万でも苦しいのは皆さんお気づきの通り、住居・車の月20万円というコストです。これが地方や、都内でも親から貰った土地ならば、月10万もかからないので、浮いたお金で毎年の海外旅行、BMW、私学のどれか一つくらいは叶えられます。あるいは都内で住宅を購入するにしても、もっと狭い家か、下町やニュータウンのさらに安めのところにすれば安く済むでしょう。
都内の人気住宅地のマンション、海外旅行、BMW、私学・・・といった「中流の生活」を求めると、年収1000万でも苦しいわけです。
公立校の凋落や就職活動の多様化も考えると、都市部の優位は今後いっそう強まるだろう。
「子どもがいてフルタイムで働けない自分がいけないんだ
だから パートや派遣で雇ってもらえるだけありがたい」
と思っていた自分の考え自体が
間違っていたと 目からうろこが落ちる思いでした。
能力があっても 年齢的に正社員として雇ってもらうのは難しく
結局 非正規雇用で 経済的に中途半端な自立しかできない女性の立場としては
是非読んでみたいと思います。