知的財産研究室

弁護士高橋淳のブロクです。最高裁HPに掲載される最新判例等の知財に関する話題を取り上げます。

太陽電池バックシート事件判決

2015-05-18 17:21:45 | 最新知財裁判例

1 事件番号
平成26年(行ケ)第10020号
平成26年12月18日

2 主たる争点
主たる争点は進歩性の有無です。

3 判旨
3-1 相違点2-1’(本件発明1では、塗膜が硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜で
あるのに対し、甲1発明2は、耐候性層(フッ素樹脂塗布液(商品名、ルミフロン、旭硝子株式会社製
)の塗布膜)である点)
 
ルミフロンを硬化させて使用すると各性質の向上が期待できることは、当業者にとって周知の事項であ
るといえる。そして、技術説明資料の配合処方例(5枚目の表-2)についてもルミフロンを硬化させ
た例しか記載されていないことを含めて考慮すれば、当業者は、甲1発明2のルミフロンを硬化して用
いることを容易に想到することができると認められる。
 
3-2 相違点2-2’(本件発明1では、水不透過性シートと硬化塗膜とが直接接着している構成で
あるのに対し、甲1発明2では、水不透過性シートと耐候性層(フッ素樹脂塗布液の塗布膜)との間に
紫外線遮蔽層が存在し、その反対側にプライマー層/防汚層が積層されている点)について

刊行物1の記載によれば、防汚層、紫外線遮蔽層、又は耐候性層の1層あるいはそれ以上を任意に設け
ることができる旨の記載がされている一方で、これらの任意の1層を設けるに際して特段の条件がある
ことは記載されていない。
したがって、刊行物1に接した当業者であれば、甲1発明2において、紫外線遮蔽層、防汚層を省略し
(これに伴って必然的にプライマー層も省略される)、「裏面保護層」について、「膜厚800Åの酸
化アルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シ-トからなる積層体」に直接
接着して「耐候性層」のみを設けること、すなわち水不透過性シートに耐候性層を直接接着している構
成を容易に想到することができると認められる。


3-3 相違点2-3’(本件発明1では、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜中に白
色顔料又は黒色顔料が分散しているのに対し、甲1発明2では、フッ素樹脂塗布液の塗布膜に白色顔料
又は黒色顔料が分散しているか不明である点)について

太陽電池のバックシートに意匠性を付与したり、透過した太陽光を光反射あるいは光拡散させて再利用
したりするために、白色や黒色等の顔料を添加することは、本件特許の出願当時、当業者にとって周知
の事項であると認められる。
したがって、甲1発明2において、意匠性や光反射性、光拡散性を付与する等の観点から、「耐候性膜
」に任意に添加できるとされる着色剤として白色顔料又は黒色顔料を選択することは、当業者であれば
容易になし得ることである。

4 コメント
4-1 相違点2-1’
本判決は、甲1発明2のルミフロンを硬化して用いることについては、ルミフロンを硬化させて使用す
ると各性質の向上が期待できることが動機付けを基礎付けるものと判断したものと整理できます。

4-2 相違点2-2’
本判決は、刊行物1において、防汚層、紫外線遮蔽層、又は耐候性層の1層あるいはそれ以上を任意に
設けることができる旨の記載がされている一方で、これらの任意の1層を設けるに際して特段の条件が
あることは記載されていないことを以て、「甲1発明2において、紫外線遮蔽層、防汚層を省略し(こ
れに伴って必然的にプライマー層も省略される)、「裏面保護層」について、「膜厚800Åの酸化ア
ルミニウムの蒸着膜・膜厚200μmの環状ポリオレフィン系樹脂シ-トからなる積層体」に直接接着
して「耐候性層」のみを設けること」について示唆があると判断したものと整理できます。

4-3 相違点2-3’
本判決は、「意匠性や光反射性、光拡散性を付与する等の観点」を着色剤として白色顔料又は黒色顔料
を選択することの動機付けを基礎付けるものとして判断したものと整理できます。

以上

 

 

 


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