ゆっくりかえろう

散歩と料理

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匂い13

2015-12-13 | フィクション

 本社に着いて常務室まで上がる。

常務の前では簡単な報告を済ませ 報告書も相方に任せて 俺は屋上でコンビニ寿司を食べた。

 朝からなにも食べていないので 空腹に心地よい。

 暫くすると今日の相方が上がって来た。

 「花岡さん あの化け物の名前はなんでしたっけ?教えて下さい」

 「分からないんで報告書が進まないんです」

 小松は頭をかいた。

 「猫又」 

 「どういう字を書くんですか」

 「分からなかったら妖怪辞典ででも 調べるんだな」

 俺は不機嫌だ。

 

 

「ところでお前 小松じゃないだろう? 誰なの?」

出し抜けの質問にコイツはへどもどしている。

 「お前からは死人の匂いがするもの」

「朝 駅で会ったのもお前だろ?」

目の前の奴は困った顔をしている。

「実は私 小松氏の分身です。本体の小松氏は今日も営業に出てまして なんせ忙しい人なんで」

本体の小松は 俺と組むのは嫌なんだろうな。

「私は元々魂が無いんで 耐用時間が限られるんです」

「耐用時間が過ぎればどうなるのかな?」

「消えて無くなります」

簡易的な式紙みたいなのかな。

「すまんね 残り少ない命なのに 報告書を押し付けて」

俺のすまなそうな顔を見て 彼は笑った。

 コンビニ寿司はさびぬきなのに なぜか鼻にツンときた。

 



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