ゆっくりかえろう

散歩と料理

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チョイ悪オヤジ養成講座7

2016-01-02 | フィクション

 立ちのみだと侮ってはいけない。

 こうい所はリピーターの舌を満足させる為に日々努力している。

ここでは見栄をはったり 知ったかぶりをする客は嫌われる。掛け値なしの味で勝負している。

不味ければ人は遠のき 美味しくても安くなければ人は来ない。

その代わり愛想は良くない。

「さあ河岸を変えますよ」

「えっ もう行くんですか」

専務は名残惜しそうだ。でもここはチョイ悪オヤジの初級コース これからが本番だ。

 それに一カ所でウダウダしないで さっと引き上げるのも綺麗なオヤジのやり方だ。

俺は今の所から二~三分のところに専務をお連れした。小松は連絡があるというので 車に戻って貰った。

今度はガード下の飲み屋で 客同士仲が良くなる庶民的な所だ。 

店内はとても狭く客同士がもみ合う場面も多い。

多くの客は店外に置いた粗末なテーブルと椅子の所で酒を楽しむ。

 「まいど!いらっしゃい」このまいどは本物だ 俺はリピーターだから。

「中の席が開いてますけど?」

道行く人を眺めながらお酒を飲むのもいいのだが 専務が慣れないだろうから 中に入れて貰う。

狭いカウンターの中は 店員が4人も入って忙しく働いている。

私は焼酎お湯割り 専務はハイボール。

当ては肉豆腐と専務はカシラの串焼き。

串焼きが時間がかかるので 一緒に 肉豆腐をシェアする。

大阪出身と聞いて気さくな人だから シェアも嫌がらない。

「これも美味しいですね 何でこんなに美味しいんですか」

「これは馬のもつ煮込みなんです ちなみに吉田さんが注文されたカシラは豚の顔のお肉です」 

やっと専務ではなく吉田さんと言えた。肉豆腐をシェアしてから親しみが湧いて来たようだ。

 専務が隣の席の年金生活者のお父さんと話し込んでいる。どうやら集団就職の生い立ちから ずっと長い苦労話をしているようだ。専務は涙もろいのか ずっと話に没頭している。 

良い人だ すごい人物だ。驕らず威張らず 人を見下さない。お連れして良かった。



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