世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

のぞき穴

2017-07-19 04:17:16 | 黄昏美術館


エルンスト・フックス


偽物の画家だが、興味深い作品である。

のぞき穴から他人を見ている目が秀逸だ。うらやましい、と言っている。ああなりたい、あれが欲しい、と言っている。

わがままなのだとは思いはしない。馬鹿なことだとも思いはしない。貴族的な風貌の中に押し込められた、実に幼い魂が、自分というものから影のように逃げて、自分がなりたいと思う他人に、吸い付くような視線を向けるのだ。

それも、絶妙な場所から。誰にもわからないようなところから、ずっと見つめ続けているのである。

馬鹿はいつもこんな目で他人を見ているのだ。動いているが、まるで魂のないような目つきである。

こういうものが馬鹿なことをし続け、人から欲しいものを奪うことに何の呵責も感じなくなると、もはや妖怪のようなものになる。

もうだれも愛せない。愛さない。おそろしい馬鹿になるのである。





この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 全くの嘘 | トップ | 薔薇の降る道 »
最新の画像もっと見る

黄昏美術館」カテゴリの最新記事