青城澄
原題「釈尊」
人間にはもう人間を再生する力がなくなった。
ゆえに神は人間世界に天使を遣わした。
それは無力な一人の女だった。
だがかのじょは、自分の美しさを信じ、ただまっすぐに自分を生きた。
ただそれだけだったが、その美しさに震撼した馬鹿どもは一斉に狂い、かのじょに総攻撃を加えた。
人間が作ったどんな虚偽の美も財も、あれの前には馬鹿にしか見えなかったからだ。
かのじょはどんな嵐にもびくともせず、最後まで自分の真をつらぬいて死んだ。そのかのじょ自身の姿が、まごうかたなき芸術となった。
かのじょはレオナルドのように高い技術を学ぶことはできなかった。だが、生き方そのもので、ひとつのすばらしい女性像を描いた。
それが、人類の救いだったのである。
ここから新たに、人間は自分を生き始めることができる。
あなたがたは、人間を、神がどんなに愛しているかということを、知らねばならない。
あなたがたの魂がどんなむごい暗闇に落ちようと、高いところから来る者はいる。
それが、あなたがたの未来を保証する、神の救いなのである。