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問題文命令形の謎シリーズ

2013-04-16 23:36:06 | (続く)シリーズを一括表示
この日記は、
過去の(つづく)シリーズを一括にしたものです。

諸事情により、
投稿当時の添付写真は省略してます。


――――――――


第1部
~次の問題を解け~


ボクがまだ小学生の頃の話だ。
少し驚いた出来事があった。
少し驚いたと言うか、かなりの違和感があったと記憶している。
忘れもしない算数の授業だ。

問題用紙が各自に渡され、ボクは問題を解こうとした。
第1問目に目をやるとすぐにボクはその異変に気が付く。
前日までは丁寧な言葉遣いの文章で問題を解くように指示が書かれていたのだが、問題文が今日を境に急変したのであった。

「次の問題を解け」

上から物を言う命令口調である。
前の日までは
「下の問題を解きましょう」
とかなんとか優しい記述であった。
一夜にして何があったんだろうか・・・

昨日までの問題文は「解きましょう」なのに、
なんで今日のは「解け」なんだ?
ボクは鉛筆を持ったまま戸惑う。

問題用紙の下の方にまで目を配る。
他の問題文も同じく命令口調であった。

第1問目だけが不良になって言葉遣いが荒くなったわけではないようだ・・・。

問題を作る会社が違うのかな?

この問題文の変わりように他の生徒達も同じく戸惑っているはずだ。
ボクは鉛筆を置き、周りを見渡す。
他の生徒達はもくもくと問題を解いているようだ。

カキカキ
カキカキ

鉛筆の筆記音だけが何重にも鳴り響く教室。
その筆記音を掻き消すかのように学校の先生が言った。

『こら、じたー君、何をキョロキョロしてる?』

「いや・・・問題文が・・・」

『問題文?印刷ミス?』

「えっと…、“問題解け”ってなってますけど」
と、ボクは恐る恐る質問した。

『・・・だったら、早く問題解きなさい』

「あっ、はいっ」
ボクは慌てて鉛筆を手に取った。

カキカキ
カキカキ

教室に響く筆記音重奏にボクも参加し、問題を解きはじめた。


第2部
~色付き始めた果実~


キーンコーン
カーンコーン

算数の授業が終わり休み時間になった。
ボクは人差し指と中指の間で鉛筆を器用に回しながら考え事をしていた。

―なぜ、
問題文が命令口調なのか―

この疑問の答えを考えても何も出て来ない。
算数の問題はスラスラ解けたが、
この疑問はなかなか解けずにいた。
算数よりも遥かに難しいらしい。

『おい。じたー。』

声のする方を見たら、男子のクラスメイトがボクに話し掛けてきた。

『なんだよ、あれ?』

「あ?」

『授業中、先生に質問したろ?』

「あー。
問題文が命令口調になってたのが、ちょっと引っ掛かって。」

『・・・は?』

「だから、
今日から問題文が命令形になったの気付かなかった?」

『・・・は?』

「昨日、ボクが学校を休んでる内に問題文がひねくれたんだ」
と、ボクは目をつぶり何回かうなづきながら話した。

『・・・は?』

「うんうん。
そうに違いない。」

『てか、オメェー、昨日学校休んでねぇだろ!』

「あれ?そうだっけ(笑)」

『「わははは(笑)」』

二人で馬鹿笑いをしていると、女子のクラスメイトが話し掛けてきた。

[アタシ、じたー君の気持ち分かるー]

「・・・え?」

[アタシもそう思った!]

「命令の話?」

[うん!]

ボクと同じ疑問を持つ人がいて嬉しかった。

ボクは笑顔になり、頬(ほほ)が少し赤くなった。
まるで赤く色付き始めたサンふじのように。


第3部
~思い出は蜜のような~


ボクはその女子のクラスメイトに質問した。

「命令してるのはなんでだと思う?」

その女子は両腕を組みながら

[う~ん。
なんでだろうね(笑)]
と、笑顔で言った。

その笑顔を見てると
ボクはなんだか平常心ではいられなくなった。
ボクの心はなんでこんなにも熱くなるのか、
小学生のボクには分からなかった。

「な、なんだよ~。
わかんないのかよ~。」

[ごめんね(笑)]

「べ、別に意味わかんなく謝るなよな。
じゃあ
問題文って、昨日はどうだった?」

[う~ん。
昨日は学校休んでたから分かんない(笑)]

「ウソーっ!?」

[クスクス(笑)]

「あれ?
休んでたっけ!?」

[ホントは休んでないよ(笑)]

『てか、オメェーら仲良いな!』
と、さっきの男子のクラスメイトが話に割り込んできた。

『もしかして、オメェーら付き合ってるんじゃねぇのか!?』

「ん、ん、
んなわけないだろ!」

ボクはなぜか顔が真っ赤になった。
まるで完熟した真っ赤なサンふじのように。

[・・・・。]

女子が無言になっている。

『ふんっ。
女子が何も言わないって事は・・・』

「バッキャロー!
変な事言うな!
授業始まるし、トイレ行くぞ!」

ボクは男子のクラスメイトを教室から強引に連れ出した。
教室のドアを閉める時、ボクは女子を見る。
その女子は手を振りながら笑顔で見送っている。

ボクの心の中で温かい何かが広がって行く。
まるでサンふじの甘い蜜の様に、
心がとろけるような甘く心地好い何かが、
ボクの心の芯から広がって行ったんだ。


第4部
~タイム・スリップ~


それから数年後、
ボクは少年から大人になっていた。

問題文の謎すら解決出来ずにボクは大人になっていたのだ。

現実に、ボクの目の前に開示されているのは、
どうやって美味しいりんごを作り出せるかだ。

いつの間にか、
ボクは就農し
りんご栽培をするようになっている。

今日もいつもの様に、
りんご栽培に精悍(せいかん)に励んでいる。

りんご畑での作業中、遠くの方で声が聞こえてきた。

「全国こども電話相談室・リアル」
ラジオからの声だった。

今回の質問者は、
小学生の男子。

問題文が命令形で気に入らないと言う質問内容。

「命令されると、僕は逆に解いてやるもんか!」
と、思っている様子だ。

ボクの記憶が溢れ出てくる。
まるで
りんごを噛んだ時の様に。
まるで
溢れ出る果汁の様に。

算数の小テストで命令形になった問題文のこと。
その問題文が気になり集中出来なかったこと。
小テストが終わり、クラスメイト達と雑談したこと。
昔の記憶を呼び起こすのに長い時間は必要ではなかった。

ボクはりんごの作業を止め、
ラジオの前に座り込んだ。

幼き日のボクが感じた違和感を
このラジオ番組が解決してくれるかもしれない。
ボクはラジオのボリュームを上げ、固唾(かたず)を飲み込む。

どこの誰かは分からないが、
この男子小学生が幼き日のボクと同じ事を考えている。

ボクの胸は高まる。
もう少しで積年の謎が解明される。
わくわくが止まらない。
小学生のボクにタイム・スリップしたかの様だ。

ラジオを聴いていて偶然答えが分かるなんてラッキーだと思った。

男子小学生の素朴な疑問にラジオ番組に出演する先生は真面目に答えていく。

問題文がなぜ命令形であるのか。

さぁ!
その答えとは!
なに!?


第5部
~解答~


「今まで一生懸命勉強してきた事を最大限に発揮し、次の問題を何卒解いて下さる様お願い申し上げる次第でございまする。」
と、やったらめったら丁寧に問題文が書いてあったら、
読むのに時間が掛かる。

無駄な時間の浪費を避ける為に
あえて短い文で、
「次の問題を解け」
と要点だけを伝える形式になっている。

答えはそんな感じだった。

ボクは立ち上がり、
りんごの作業を続けた。

長い間、
夢を見ていたかの様だ。

(問題文命令形の謎シリーズ 全5部 終わり)

――――――――


参照記事:解答

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