横浜スローライフ -- My slow life in Yokohama

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FOSS4G PDX話 その1 「LeafletとOpenLayers」

2014年09月12日 01時29分29秒 | OSGeo/FOSS4G
 いきなりツールの話になるが、しかしながらツールの話ではない。

 Leafletは2008年にOSMコミュニティーのコアメンバーがVCから出資を受けて設立したCloudMadeという会社の社員が作った。当時、Webで地図と言えば2006年に登場したOpenLayersが定番であったが、当時22歳の若者だった開発者(Vladimir Agafonkin、現在はMapBoxに在籍)にとって、OpenLayersは多機能過ぎて動作が遅く、メモリを消費するものとしか映らなかった。Leafletと名前をつけてオープンソースとなったのは3年後の2011年。私が初めてLeafletの存在を知ったのは、その年にバルセロナで開催されたFOSS4Gだ。当初は機能が足りない、動作がまだ安定しないなど、主としてOpenLayersのユーザーからは批判的なコメントもあったが、今やLeafletを採用しないサイトの方が珍しくなるくらいにまで普及を遂げた。

 対するOpenLayersのコミュニティは、Leafletに対抗するために「OL3」プロジェクトを2012年夏に立ち上げ、その最初のリリースが今回のFOSS4G PDXの直前に実現した。ちなみに、オークニーはこのプロジェクトに5000米ドルを寄付している。これは、オークニーが”OpenLayers陣営”にいるからというのではなくて、オークニーの事業が、このFOSS4Gツールによって支えられ、成長してきたことへの少しものお礼と思ってのことだ。

 OpenLayersとLeafletは、開発が始まった時点では3年の差がある。その3年は「パソコンのブラウザで地図を取り扱う」のが最先端だった時代からiPhoneなどの「スマートデバイスで地図を取り扱う」時代への大きな変わり目に位置している。数の上で圧倒的な存在であるスマートデバイスでスムーズな動作をしないツールが生き残れるわけがない。この点で、OpenLayers(Version2)が歴史的使命を終えるのは自明のことと言える。

 そうした技術革新の他に、利用者にも違いがある。

 しつこく書くが、「地理空間情報分野はカラフルなロングテール」である。OpenLayersが光り輝いたのは、Webブラウザでありながら、デスクトップGISツール並みの様々な操作を提供し、しかもOGCのスタンダードなど、様々な形式の地理空間データにアクセスできる汎用性を、従来のGIS利用者が高く評価したからである。「GIS」の利用者は専門家層であり、多機能、複雑さを求める傾向があるが、「OSM」ではそこまでは求めない。むしろ、シンプルさ、動作の軽さのほうが大事だ。利用者の裾野が広いOSMからスタートしたLeafletは、シンプルさを維持しつつも、GISの中でもマスのニーズをうまく取り入れていくことで、GIS利用者の中にも瞬く間に浸透していった。

Leafletの開発者、Vladimir Agafonkin

 今回、Leafletの開発者、Vladimir Agafonkinの講演を聴き、彼がシンプルさとクリエイティブさの二つが大事だと強調したことに、私はとても共感を覚えた。人は成長して学ぶにつれて、シンプルさとクリエイティブさを失うと彼は言う。その通りである。「あれもこれも必要」「無いよりは有った方がいい」「とにかくやるんだ」と意気込むあまりに、「そもそもそれは誰をハッピーにするの?」という人間の根源的な欲求を忘れてしまわないだろうか。僕らは、日々の仕事を通じて、シンプルさとクリエイティブさを維持して、顧客をハッピーにしているだろうか。


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