観るミステリー小説相棒Ⅴ:第十七話『女王の宮殿』

今回はどことなく有栖川有栖の小説にも似た雰囲気を持つ
濃密なミステリー。
(あらすじは相棒公式サイトで)

屋外での死体捜索のシーンから始まりで、
今日は大掛かりなロケのド派手な展開か!・・・と思わせ、
それを見事に裏切り、外部と遮断された屋敷内での
不可思議な窃盗事件を、渋くグラスのマークで謎を解き
見事に真犯人を見つけ出し解決!
いつも以上に冴えわたる右京の推理・・・って!
・・・それでもまだ放送時間はあるんですけど?

次は一体何が起きるというのだ!


今日の相棒はいつもと違う!
いつもなら番組の開始と同時に事件が起こるのだが、

今日はまったく逆!

最後の最後にこの宮殿で本当の事件が起きる。

この設定は意外性がありとてもよかった。
本当に相棒ってすごいな~。

この最後の犯行の謎解きに行き着く杉下右京(水谷豊)と
女王モナミ(大空真弓)の会話のやり取りは
まるで舞台でも観ているような濃厚さがあった。

事件の裏に隠された女王の悲哀がとてもよく表現され、
彼女の切ない心情が心に残る。

さらに今日はこの人間ドラマを音楽がとてもよく増幅。
全体の映像のトーンやカメラワークともに素晴らしかった。
これがドラマに贅沢感を与え、質を高めることにすごく貢献していたと思う。

個人的には前回のようなラストが好みだけど
今回の作品の素晴らしさに満足したミステリー好きは
とても多いのではないだろうか。

それとハムスターの名前の『アルジャーノン』・・・・
久しぶりに『アルジャーノンに花束を』を読んでみたくなった。

そんな切ない気持ちになるエンディング。
いつも感心させられるこの余韻こそ相棒の真骨頂だ。

【今回の面白シーン】

イタミンの電話応対。
右京のジャケットのポケットのフラップに関するトリビア。

にほんブログ村 トラコミュ 相棒へ相棒
みんなの相棒レビューを読みたい方はどうぞ!
にほんブログ村 トラコミュ テレビドラマへテレビドラマ

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

近くて遠い昔!?『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』(2007年4本目)


キレイでした~!!吹石一恵!!
ソバージュヘアーと80年代メイク似合いすぎ


オレのようにこの時代をリアルタイムに経験した人なら、
広末より、この吹石一恵の80年代メイクに参ったのではないだろうか?

もともと眉が太い女優だけど、この時代のメイクは本当に彼女に似合う!
普段の彼女には何も感じないけど、これには本当にビックリ

もう一人のボディコンギャル役の伊藤裕子も1990年当時は16歳。
当時の雰囲気を知ってる年頃とJJのモデル出身というキャリアから
見事な着こなし。とさかヘアーでいい味出してました~



面白かった~!!

『三丁目の夕日』『フラガール』と昭和30年代をモチーフにした映画が
団塊の世代を中心に大ヒットした最近の日本映画だけど
この映画の舞台になったのは
1986年11月から1991年の10月までのバブル期と呼ばれた時代が
終焉に向うきっかけになった1990年。

そんな大昔ではなく、
「あ~もうこんなになるんだ~」
と懐かしく、ちょっと切なくなる微妙な昔・・・17年前の話。

これは『三丁目の夕日』以上にモロにオレの時代の映画だよ~。

そういえば、映画の中のCGで再現された工事中のレインボーブリッジは
あの『三丁目の夕日』の工事中の東京タワーのパロディだろうか


別にバブルの恩恵をモロに受けたわけじゃないけど
この時期はオレにとっても恋も仕事も青年期のピーク。
間違いなく人生の中ではハイテンションの時期であった。

その後の『失われた10年』と呼ばれる時代から現在に続く時間を含め
この光と影のコントラストの激しい時の移り変わりの波を
まともに喰らった世代としてこの映画を観た。


他の世代の人の目にどう写ったのかわからないけど
とにかく面白くてしかたなかった。
というかツボにハマリまくり

プリンセスプリンセスの『ダイヤモンド』や
ミュージック・ファクトリーの『gonna make you sweat』
ボーイズ・タウン・ギャング『君の瞳に恋してる』
など当時の音楽。

そうそう、あの健康飲料『鉄骨娘』のCMも懐かしかった。
あのCMに出ていたモデル出身の鷲尾いさ子って今どうしてんだろう??


次々でてくる80年代中期~90年代初頭を思い出させる映像に
もうひたすらウケまくり。

お立ち台とVIPルームが特長のディスコ。
ボディコンファッションはもちろんのこと
エルメスのスカーフ、ティファニーの『オープンハート』
男性のアルマーニのダブルスーツや紺ブレにグレーパンツ。
当時は幻のデザートだった『ティラミス』
『ポケベル』やステイタスシンボルだった大きな『自動車電話』(ケータイじゃないよ!)
まるで『ハートカクテル』か『トレンディドラマ』に出てくるような
ロフト付きの部屋
初代ゲームボーイ

それから洗濯機の広告のキャッチコピーに出てくる『ファジィ』って単語。
これも、もう死語だよな~。


当時デビュー直後でまだタレントの卵だった飯島直子、
AVでデビューする前(?)のディスコクイーンだった飯島愛のW飯島が
当時の雰囲気のメイクと衣装で登場したり、
六本木が似合うサッカー選手ラモスが出てきたりと
もう小ネタ満載!
あともう一人、トゥナイトで当時一世を風靡した荒木師匠を
ディスコのシーンに特別出演させたら完璧だったよ。

この映画はそんなバブル時代を背景に、
親子愛をを描いた思い切り笑えるラブコメディ。

なにしろこの映画を作ったのが
『私をスキーに連れてって』(1987年)
『彼女が水着に着替えたら』(1989年)
『波の数だけ抱きしめて』 (1991年)

の三部作を作って当時の若者のライフスタイルに多大な影響を与えた
ホイチョイ・プロダクションとなれば、
もう一度時空の壁を飛び越えてオジサン、オバサンになった
オレたちの心を鷲掴みにしても不思議ではない。

それとこの映画で大きな役割を果たしているのが『ケータイ』
ケータイと広末の取り合わせというと『iモード』

彼女がケータイの機能をいろいろ説明するシーンは
あの当時のドコモのCMを覚えている人なら笑えるシーン。
ホントにiモードも進化したよね~
(これも計算しての演出だと思うけど・・・これもウケルのはオレ世代か)

これだって1999年だからすでに一昔前なんだよな~
だいたい今時『iモード』なんて言葉は日常会話でもう使うことはないし

あ~
もう月日のたつのの早いこと早いこと


『土地は必ず値上がりする』という土地神話に支えられた
泡のように中味のない経済だから『バブル経済』と呼ばれるそうだけど
その時代を生きた人間は決してみんながみんな『泡』ではないと思うんだよね。


オレとしては2時間楽しく切なくタイムスリップでき、
ノスタルジーとコメディの両方をしっかり楽しめた
これぞ娯楽映画という作品だった。

でも感想には世代間格差が出そう。


映画『バブルへGO!!』の公式サイト


※オレの私見としてはバブル期を代表する音楽は、やっぱり『ユーロビート』だと思うのだが....



バブル崩壊という現象は単に景気循環における景気後退という面だけでなく、
土地や株の高値を維持した購買意欲の急激な減退、
そして、政策の錯誤が絡んでいる。

1990年3月に大蔵省銀行局長 土田正顕(まさあき)(1936-2004)から通達された
「土地関連融資の抑制について」(総量規制)による人為的な急ブレーキが、
本来自然に起きるはずの景気後退を不適切に加速させ、
ついには日本の経済の根幹を支えてきた長期信用全体を崩壊させてしまった。
また、日銀による金融引き締めは完全に後手に回った上に、
崩壊のさなかにおいても続けられ、経済状況を極度に悪化させた。
前年に導入された消費税も景気に悪影響を及ぼした遠因と考えられている。

誤った政策によって人為的に資産としての土地の価格を下落させたとする視点から、
政策判断のミスが引き起こした財産権の侵害であると主張する声もある。

(フリー百科事典ウイキペディアから抜粋)
にほんブログ村 映画ブログへ

コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )

観るミステリー小説相棒Ⅴ:第十六話 『イエスタディ』

口の中の傷、取れたコートの袖のボタン、
知らない間にポケットに入っていたナイフとロッカーの鍵・・・・
・・・・・・『俳句作品展のチケット』

人のいい心優しい青年が、なぜ『昨日の記憶』を失ったのか
事件との関わりは?・・・その裏に隠された真実と記憶喪失の原因。


前回は『これぞ相棒!』と思ったけど

今回も『これぞ相棒!』って思える余韻が心に染みる出来映え!

前回が質の高い社会派犯罪ドラマなら
今回はサイコのエッセンスをうまく取り入れたミステリーの秀作だ!
(あらすじは相棒公式サイトで)



一見、『多重人格が原因の犯罪では?』と思わせておいて
いかにも杉下右京らしいロジックな謎解きで真犯人暴きだし

『記憶喪失』や『多重人格』というサイコ的なエッセンスは
人のいい優しい青年が愛する人を守るという人間ドラマの部分で
使われる。

これが良かった・・・個人的には大好きなパターン。

『本格』と『サイコ』『謎解き』と『人間ドラマ』
というエッセンスのバランスがとてもよく取れていた。

キーワードになった『左利き』。

オレは『康江の写真の箸を持つ手』は完全に見逃していたし
経理係の真犯人が『左手で似顔絵を書くシーン』は
トリオ・ザ・捜一と亀山刑事のやり取りに気を奪われ
ここも完全に見落とし

今回の話は生で観られなかったので、録画を観たのだが
この謎解きを検証しながら二度観を楽しんだ。

二度目の観賞では謎解きの検証だけではなく、
音楽や映像、俳優の細かい演技などもよく見えてくる。
『相棒』は二度目でも十分に楽しめる噛むほどに味のでる
スルメのようなドラマである。

今回はいつにも増して音楽が
ドラマのアクセントとして効いていたように思う。
特に留置場の中で、狭間が前日の記憶を取り戻していくシーン
狭間の顔と涙を流す康江の顔が交互に映る映像と
バックに流れる映画サスペリアの音楽は
サイコの匂いがプンプンで雰囲気を盛り上げる。
ここはシビレました。

それ以外にも、取調べ室や署内の廊下での全体にやや青味がかった暗めのトーン、
宇田川の部屋で警棒を振り回す右京の顔、
細かい部分にもサイコ風味がキッチリと散りばめられていた。
これはこのドラマが、ミステリー好きでミステリーの造詣が深いスタッフの手による仕事なんだな~って感じられてうれしくなる部分だ。

最後に残った『俳句作品展のチケットの謎』
これは今回のとどめ。
宮部みゆきや乃南アサの小説のラストシーンを思わせる見事な出来映え。
良いミステリーを一冊読み終えたような満足感が残った。


にほんブログ村 トラコミュ 相棒へ相棒
みんなの相棒レビューを読みたい方はどうぞ!
にほんブログ村 トラコミュ テレビドラマへテレビドラマ






コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

『相棒』が『渡鬼』を抜いた!

テレビドラマで怪物番組というと、
あの泉ピン子が主人公の長寿番組
橋田寿賀子原作の『渡る世間は鬼ばかり』

このドラマを観ない人でも名前くらいは耳にしたことはあると思う。

そんな番組の視聴率を『相棒』が抜いたという。

ライブドア・ニュース

上のニュースサイトに書いてあるとおり、
主演の水谷豊と寺脇康文の演技が素晴らしいのはもちろん。
他の共演者やゲスト出演の俳優の好演も素晴らしい。

脚本や構成の素晴らしい。

そんないろいろある相棒の魅力の中で
オレが感心しているのはCMの入れ方。

民放であれば番組の中にCMが入るのは避けられない条件。

それが嫌でテレビドラマを映画より格下に観る人もいるが、
この相棒はそのCMをうまく利用した構成になっている。

まず番組が始まると、導入部のドラマがある、
そこで事件のプロローグのような出来事が起こる
その後にタイトルバックがあらわれテーマ曲が流れ
キャスト紹介がされる。

普通のドラマは、これが終わった時点でCMが入りCM後にドラマが再開され
本格的な流れが始まる。

しかし相棒では、ここのCMがない。

初めてのCMが入るのが、番組開始20分後。
だから、ドラマの導入部分がすごくスムーズ。
一気にストーリーの流れに乗ることができるのである。

自分は最近、他のドラマを観ていないのでわからないのだが、
少なくてもちょっと前のドラマでこういうのはなかった。

このドラマ前半にCMが入らないのはものすごく効果的。
さらにこの最初のCMの入る時間帯は
ちょうど緊迫が一度途切れたあたりなので
ホッと一息入れたくなる絶妙な時間帯。

この最初のCMの時間を利用してトイレに行ったり、
飲み物を用意したりして後半に備えてもう一度
態勢をリセットできる。

そのため敬遠されがちなCMタイムが貴重な時間になるのだ。

最初の20分間CMがない反動として
後半部分はCMが多くなるのだが、
そのマイナス分を引いたとしても
このCM時間の割り振りは
このドラマのとてもいいところの一つだと思う。

どんどんクォリティが上がっている『相棒』
長く続いてほしい番組だ。

にほんブログ村 トラコミュ 相棒へ相棒
みんなの相棒レビューを読みたい方はどうぞ!
にほんブログ村 トラコミュ テレビドラマへテレビドラマ


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

90年代の日本の人気コミックがアジアで映画化:『墨攻』(2007年3本目)

  
昨年、映画館でこの映画の予告編を観たときから、
封切りがとても待ち遠しかった。

なぜなら、今から15年前『ビックコミック』で連載されていた
この映画の元になったコミックの大ファンだったからだ。

オリジナルは1年前に出版された歴史小説家の酒見賢一の小説。
それにインスパイアーされたオリジナルストーリーを加えたのが
このコミック版の『墨攻』だ。

よく日本人が孔子や孟子ほど有名ではない中国の思想家、墨子の思想に着目し、これほどまでに壮大なストーリーを考えたな~と、
まずそこに大きな驚きを感じたものだった。

今回初めて知ったのだけど、このコミックは中国でも
『墨子攻略』という題名で中国語訳されて大人気だったようだ。
それが映画化のきっかけになったのだろうか?


この話の内容には、この中国の戦国時代の思想家『墨子』の思想が
大きく関わってくる。

映画ではそこの説明があまりないので、
できれば観る前にそこを知ってから行くか、
見終わってからでも墨子の思想を知れば、
より映画の面白さというか深さが感じれると思う。

この映画に関連する墨子の思想は二つ。

①『兼愛(けんあい)』・・・「天下の利益」は平等から生まれ、
 「天下の損害」は差別から生まれる。
 だからすべてに人を平等に愛することが大切。

②『非攻(ひこう)』・・・言葉どおり「攻めない」という非戦論。
  墨子は
  「人一人を殺せば死刑なのに、
  なぜ百万人を殺した将軍が勲章をもらうのか!」

  と戦争を否定していたそうだ。
  さらに今回の話につながるのだが
  大国が小国を攻めること反発して、
  攻撃を受けた城に出向き、守備を指導していた。


『墨攻』とはこの二つの墨子の思想を元につくられた歴史小説。

映画では触れてなかったが、革離の時代は
この墨子から三代目が墨家を継いでいて
墨家の思想は変質し、しだいに権力と結びつくようになっていた。

だから趙軍に攻められた梁城が墨家に援助を求めても墨家は応じようとせず
それに革離が反発して単身で梁城にやってくるというのが原作のストーリー。

このあたりも映画では省略されていたが、
やはり時間的な制限のある映画では、
描ききれなかったものと思われる。

たしかにこのコミックの内容をそのままやるのでは、
大河ドラマでも無理だとは思うが。

それでも、この映画は基本部分に墨子の『兼愛』と『非攻』をしっかりと据えており、
壮大さや戦闘シーンの迫力だけを売りにした
ただ大げさなだけの歴史スペクタクル映画にしていないことは評価したい。

戦争の悲惨さ、権力欲、出世欲、猜疑心、エゴ、
それの対極にある『愛』『平和』『信頼』『友情』がしっかりと描かれ、
登場人物による人間ドラマの部分がとても見応えがある。

敵方の大将の巷淹中も単なる悪役としてではなく
軍人の本質的な部分として描かれているし、
梁城の城主は『権力』の象徴。

一般大衆も、ただの善人という存在ではなく、集団心理からくるリンチなどで、
人間が持っている残虐性を目覚めさせる戦争の恐ろしさと虚しさを
際立たせる存在として扱われている。
主義に反して恋心を持つ革離を含め、
人間の持ついろいろな面と戦争の関わりを深く描いている。

登場人物が多く、いろいろなストーリーが組み合わされているが
墨子の思想というテーマが貫かれているのでまとまりは良かった。

さらにこの映画で描かれる戦争や権力者の姿は
現在の世界に通じる部分が多いようにも感じた。

この思想的背景や人間模様が『正義対悪』という
大味な図式のハリウッドファンタジーと比べると
格段に面白かった。


戦闘シーンは超人的なアクションとかがなく、CGに頼ることもない。
とてもリアリティがあった。
戦いのシーンの他に、陣形や戦術などの部分が見所。

革離役のアンディ・ラウは体型、雰囲気がコミック版の革離に近いイメージだった(アンディの方が美男だが)ので
違和感を感じずに見ることができた。
そのうえコミック版よりも人間臭いところがとてもよかった。

この梁城攻防戦は原作の小説では革離が負け、
コミック版では革離の勝ちと結果が違う。

小説だと、負けてしまうのでこの物語でおしまい。

しかし、コミック版は革離が勝利し、
小説にないコミック版のオリジナルストーリーが続く。

この映画ではどうなるのだろうか?



『墨攻』公式サイト

※中国映画をあまり観ていないせいか、
字幕を読むタイミングが英語と違うので
なれるまでちょっと時間がかかった。

にほんブログ村 映画ブログへ


コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )

観るミステリー小説:相棒Ⅴ第十五話 『裏切り者』

これって本当に正味45分のドラマだったのだろうか

観終わった後は

まるで2時間超の映画を観た後のような充足感だった。


岩下さんが脚本の前作のような、
なんともいえない切なさの余韻を残す相棒も好きなのだが、
今回のような『濃くて厚みのある話』の相棒もまたいい。
(あらすじは相棒公式サイトで)

『捜査費流用』という警察内部の闇と
杉下右京の対決を描いた重く厚みのある社会派ドラマ的な部分と
亀山刑事の先輩刑事の師弟関係がゆえの苦悩と切なさを描いた人間ドラマの部分の
二つの軸が見事に絡みあった良作。


亀山刑事が北村刑事に娘の写真を見せられて
情に訴えられても被害者の心情を大切にし、
「迷ったら原点に戻れ!」
と北村刑事が一番初めに自分に教えてくれた言葉で
教えた本人を説得するシーンは見応えがあった。

証拠の調書を北村刑事と親しいと知ってるのに亀山刑事に預けた右京は、
亀山刑事ならきっとこうすると見越していたのだろう。
いや、亀山刑事が北村刑事にそのまま調書を渡したとしても
亀山刑事に預けた自分が悪いと、彼を責めることはしないように思う。
この押し付けがましくなくて、口にださない信頼関係が『相棒』の真髄かも。


一方、権力と対峙したときもそれに屈せず、より切れ味を増す杉下右京。

最後の調書の諮問と亀山刑事のジャンパーについていた指紋は
本当に同じものだったのだろうか?

ブラフの方がいかにも杉下右京らしいけど

ブラフと見せかけて実は本物というのも、
これはこれで、また右京らしく思えるし・・・

警察上層部でなくても、本当に読めないよな~

これは、ここまで培ってきた杉下右京像があるからこそできる
ラストではないだろうか。


その鋭い切れ味と権力に屈しない性格で上層部に嫌われている右京だが
そんな彼の毒をうまくコントロールして、
いつも落としどころを用意する小野田官房室長は
なかなかの人物だな~といつも感心する。

そんな小野田さんに認められたいうことは
亀山刑事もかなり成長したってことだろうな。


今回は天ぷら屋だったが、
右京と小野田が会うシーンはこのドラマの見所の一つ。
毎回実におもしろい。

【今回面白かったセリフ】

右京が(電話で)角田課長に
「今、おヒマですか?」

これはいつもの逆パターンだ



にほんブログ村 トラコミュ 相棒へ相棒
みんなの相棒レビューを読みたい方はどうぞ!
にほんブログ村 トラコミュ テレビドラマへテレビドラマ

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

見応えのあるサスペンスでした:ディパーテッド(2007年2本目)

   
面白かった。

潜入捜査モノは、いつ正体がばれるかという
ハラハラドキドキの緊張感がたまらない。
この映画は最後の最後まで、
この緊張感が途切れることがなかった。

一番最初の警察学校のシーンと最後の大詰めのシーンで
登場人物の人間関係がリンクするところが壮絶な中にも切なさがある。



ちなみに『THE DEPARTED』の意味は死者。


この映画は「インファナル・アフェア」という
香港映画のハリウッドリメイク版。
オレはそちらは観ていないので比べようがないけど
この映画は十分に面白かった。

アメリカ映画で犯罪組織というと昔からイタリア系『マフィア』が有名。
最近だと中国系の『チャイニーズ・マフィア』も多い。
今回はアイルランド系民族の組織。

アイルランド系アメリカ人はケネディ大統領が就任するまでは
人種的に低い位置にいたことも、警官を職業にする人が多いことも
初めて知りちょっと驚きだった。

香港のオリジナル版がどんなものかわからないが、
このアイルランド移民の子孫という民族、人種絡みの部分が、
この映画の面白い要素だったと思う。



キャストでは犯罪組織のボスを演じたジャック・ニコルソンの存在感がすごい。
あの『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランドを思い出す存在感である。
映画館でのシーンはビックリ!コリンじゃなくても驚く。

主役のディカプリオも期待以上にいい演技。
潜入捜査員の恐怖感、孤独感、苦悩を良く演じていたと思う。
とくに主人公の繊細な部分を演じるところは
ちょっとあのジェームス・ディーンのようでもあった。

マット・ディモンもどこか弱く、しかし上昇志向が強い役を
うまく演じていた。

それとミスター・フレンチ役のレイ・ウィンストンがよかったよ~。
いかにもダウンタウンの悪オヤジの雰囲気がプンプン。

最後になんといっても音楽。

コリンの少年時代のシーンでバックに流れる
ローリング・ストーンズの『GIMME SHELTER』

これってスゴイ!よくぞ選曲したと感心!

アイリッシュなバグパイプのサウンドから一転して
このシーンで流れ出すキースのギターのあのフレーズは実に絶妙!
これで世界と空気がすっかり変る。

これはストーンズフリークだったら、絶対に鳥肌が立つんじゃないかな。

しかし、
これはストーンズ好きだけがスイッチが入る部分だろうな~。
でもスイッチが入った人は、この映画は印象に残ると思う。

オフィシャルサイト

にほんブログ村 映画ブログへ
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )

観るミステリー小説:相棒Ⅴ第十四話『貢ぐ女』

今回の脚本は岩下悠子さん。

この方の脚本は、切ない余韻を残して終わる話が多い。

こシーズンⅤでは、
第三話の『犯人はスズキ』と第八話の『赤いリボンと刑事』

どちらも心に染みるラストシーンだった。

今回は変圧器とランゲ・アンド・ゾーネのシリアルナンバーで
犯人の逃亡先を推理したり、二人の関係を立証する右京と
どこまでも犯人をかばう『貢ぐ女の女心』との戦いの後半部分に見応えがあった。
(あらすじは相棒公式サイトで)

最後の景子の「ありがとう」に
亀山刑事もトリオ・ザ・捜一も唖然としてしまう。
おそらく視聴者の中にも、
同じように唖然とした人が多いのではないだろうか。

でも岩下さんは、あえてこの余韻を狙ったのかなとも思える。

タイトルにすでに『貢ぐ女』となっているように
あえて確信犯的に、この『唖然』で終わらせることによって
より『貢ぐという行為をしてしまう女性』の不条理さを描いたように感じた。

ストーリーよりプロットが光るドラマだった。


ドラマの中で、たまきさんは
杉下右京は男女に機微に疎いといってたけど
事件の陰に男の存在を感じたり、
犯人がスペインではなく他の国へ逃亡すると推理したりと
なかなかどうして、かなり鋭いのではないだろうか。

【今回、面白かったセリフ】

交番の巡査「特命係は秘密兵器のようなものですね」

角田課長 「亀も走れば事件に当たる」

杉下右京 「和服にも似合いますか?」


にほんブログ村 トラコミュ 相棒へ相棒
みんなの相棒レビューを読みたい方はどうぞ!
にほんブログ村 トラコミュ テレビドラマへテレビドラマ

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

めぐみ―引き裂かれた家族の30年(2007年1本目)

   
この映画には俳優は一人も出てこない。
すべて実写のドキュメンタリー、ノンフィクションである。

1977年11月15日、
新潟に住む当時13歳の横田めぐみさんが
下校途中に北朝鮮の工作員によって拉致された。

この映画はその横田めぐみさんのご両親、ご兄弟を中心に
その他の拉致被害者の家族のこの30年間の
活動の実際のニュースフイルムを編集し、
そこに新たにインタビューを入れた映画だ。

まずこの映画がアメリカ人によって作られたことに驚いた。

公式サイトに
監督のインタビューが載っており

「どうして日本人がこの物語を撮らなかったのでしょう?
何年も前からわかっていることなのに?」

という質問に

クリス・シェルダン監督は

「日本人が作るのは難しいでしょう。
日本では人間ドラマではなく、
政治の話として見られることが多いからです。
日本人がこの物語を撮りたくなかったということではなく、
どう進めていいのかわからなかったのです。
彼らには政治を飛び越えて見ることができない。
非常にデリケートな政治問題ですから。」

と答えている。

なんとなく『硫黄島からの手紙』を思い出す。
あれも日本人が撮れば、デリケートな天皇の話や皇軍思想を抜きに
『愛する人を守る戦い』に作ってしまったかもしれない。

淡々と事実だけを伝える手法だと、
かえって外の目から見た方がいいのかもしれないな~。

まぁ撮る監督の資質によることも大きいのだろうけど。



今から30年前の1977年(昭和52年)・・・
ピンクレディやキャンデーズの歌とか、
沢田研二の「勝手にしやがれ」がヒットした年。

たしかに昔は昔だけど、自分の記憶でも、
もはや日本に、そんなに暗闇が存在する時代ではなかったと思うのだが
日本各地でこんな『神隠し』のような出来事が多発していたと思うと
今更ながら恐ろしさを感じる。

映像は、テレビのニュースで観たことのあるシーンも多いのだけど
行方不明が、まだ北朝鮮の拉致と判明する以前の映像も多く
改めて知る事柄も多かったし、
拉致本人の素顔や拉致家族の内側もよく掘り下げていた。

そしてよけいな解説などを加えずに映像構成と音楽で
映画に流れとリズムを与えるシンプルな手法がより
家族の心情を深く観る人の心に届けていたと思う。

この映画を観て感じるのは
『子を思う親の愛』と『兄弟愛』だ。

拉致された本人はもちろんだけど
この家族たちの30年間の苦労は本当にすごい。

家族は拉致した北朝鮮に対しての憎しみはあっても
拉致被害者のために費やす自分の人生を惜しまない姿により心が痛む。

「人間は家族のためにここまでできるんだな~」
というのが一番の感想。

拉致被害者のご両親たちは、みな高齢だ。
すでに他界した方もいらっしゃるが
なんとか生きているうちの再会の望みがかなってほしい。

そしてもう一つ深く心に残ったは
「日本も60年前、朝鮮半島の人に対し同じ事をしていた」
という支援集会参加者の言葉。

この映画はドキュメンタリーということもあり
上映館は少ないようだけど、
オレが観たシネコンはけっこう客が入っていたし
時々すすり泣く声が多く聴かれた。

この映画は拉致事件に対して目新しいことが出ているものではないが
この家族に起きた出来事、この家族の真の気持ちを
多くの人に観てもらいたいと思う。

洋画だから、海外でも上映される機会も多いだろう。
本当に外国の人にも多く観てもらいたい。

久しく忘れられていた
『ドキュメンタリー映画』と
という言葉を思い出させてくれた映画。

映画というメディアの力に期待したい作品であった。

『めぐみ』公式サイト

めぐみ-引き裂かれた家族の30年 - goo 映画

にほんブログ村 トラコミュ 映画鑑賞へ映画鑑賞
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )

観るミステリー小説:相棒Ⅴ第十三話『Wの悲喜劇』

美和子の新作料理が
課長の口に合ったのはうれしいサプライズだった。


今回は『フィーチャリング、美和子スペシャル&角田課長』でしたな~

(あらすじは相棒公式サイトで)

いつもは「ヒマか?」しかセリフのない課長が、
創作料理『美和子スペシャル』の味の虜になったため大活躍。

最初はコメディタッチで事件に絡んでいたけど
ラストでは料理同様にいい味をだしていた。



今回は夫婦間の問題を扱った話。

この年末年始に

現実社会でも新聞やニュースを賑わしている

『夫殺し』

  や

『妻殺し』

夫婦間に限らず、親族間の事件で一番知りたいのは

「どうしてこんなことになったのか?」

「なぜ、殺さなければならなかったの?」

という動機の部分ではないだろうか?

この話も犯人やトリックはすぐにわかったが

『動機』の解明こそが今回のテーマだった。

旦那の浮気では簡単すぎるなとは思ったけど・・・

寝室に落ちていたメガネからの推理

さらに検証のため被害者の夫への調理依頼。

・・・そして真の動機解明へ。

今回は何より被害者の全体像と顔が
後半になるまで出てこないというのは
すごいミステリーだった。

さらに昔と現在の容姿のギャップの判明。

そして死因の『餓死』だ。
被害者が一番苦しむ死に方を
選ぶところに夫の憎しみを感じる。

愛するが故の残酷さなのだろうか?

この死因はコミック調でありながら
夫婦間、肉親間の事件の特徴を
ものすごく鋭く表現していたと思うよ。



今回はシンプルな話ながら
愛憎表裏一体の夫婦の関係を描いた
味のある話だったと思う。

夫婦は離婚で清算できる関係ならまだいいのだが、
相手の命を絶つことでしか関係を清算できない状況というのは
『愛』にしても『憎』にしても不幸としかいいようがない。

ハッピィエンドでもなく、

教訓話を残す終わり方でもなく

観る人の心に

今回は『切なさ』という余韻に残して終わる。

相棒って本当に『余韻』が楽しめるドラマだな~


今回のドラマは亀山刑事の住むマンションの隣人の部屋のみを
主な舞台として殺人のトリックと犯罪の動機が暴かれた。

この狭い空間で俳優同士が

演技のバトルというか、

セッションというか、

それぞれのポテンシャルを出し合いながら
ドラマを作り上げていく『相棒』の手法は
やはりオレの好みだな~。

これは映画というよりも
舞台に近い感覚のようににオレは感じる。



ゲスト:野村宏伸
脚本:輿水泰弘
監督:近藤俊明

80年代後半~90年代トレンディドラマの顔だった野村宏伸。
40代になってこれからどんな役者になっていくか楽しみ。
できれば映画に進出してほしい役者である。


にほんブログ村 トラコミュ 相棒へ相棒
みんなの相棒レビューを読みたい方はどうぞ!
にほんブログ村 トラコミュ テレビドラマへテレビドラマ

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ 次ページ »
 
 
<