BSE&食と感染症 つぶやきブログ

食品安全委員会などの傍聴&企業・学者・メディア他、の観察と危機管理を考えるブログ by Mariko

【もう絶句】行政による「科学」のねじまげ始まる。米国牛輸入問題:意見交換会に参加

2005年05月21日 08時58分35秒 | アメリカ牛は安全か?
「食品に関するリスクコミュニケーション(米国産牛肉等のリスク管理措置に関する意見交換会)」の開催(5月20日)
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050427press_6.html
参加してきました。急ぎにつき雑文で申し訳ありませんが、いくつかトピックをご報告します。

■「厳密な国内飼料規制後に生まれた若牛限定の20ヶ月齢以下のリスク評価」を「飼料管理状況不明な米国牛」に曲解適用する方々

食品安全委員会が、20ヶ月以下は検査をしなくとも、リスクが変わらないといっているから、米国牛も20ヶ月以下はよいのだ」という「科学の曲解」、ねじまげを、早速、以下の方々が回答されてました。

農林水産省 島村宜伸 大臣
厚生労働省 西博義 副大臣
農水省 消費・安全局長 中川坦氏

ほかにも誰か答えていたと思いますが、少々頭に血が上って忘れました。

食安委の西郷リスクコミュニケーション事務官に、「結論部分だけ」を抜粋して、読み上げさせる念の入れ方です。

つまり、多くの食安委の専門委員が心配されていたことが現実になったのです。「この答申における大前提」を、さっそく行政が無視したということです。行政は、答申の「結論部分」だけ抜粋、振り回して、「おわりに」の部分はすっかり無視。国民をヴァカにするのも程がありますね。日本語読めないと思ってるんですかね?

==プリオン専門調査会の答申案「おわりに」より、答申の大前提==

本評価報告は、我が国における過去の集積データ及び評価を行うに足る関連データに基づき、基本的には背景に予想されるBSE の汚染度、と畜場における検査でのBSE 陽性牛の排除、安全なと畜解体法とSRM の除去などの効率について評価し、2005 年3 月の時点での若齢牛のリスク等を総合的に評価したものである。このような様々な背景リスクから切り離して年齢のみによる評価を行ったものではない。従って、今後諸外国におけるBSE感染リスクの評価を行う際には、総合的な評価を行うための多様なデータの存在が必須になるものと考える。
http://www.fsc.go.jp/bse_hyouka_kekka_170509.pdf

===============
(注)「結論」と「おわりに」の各委員の位置付けの経緯については、議事録を参照
http://www.fsc.go.jp/senmon/prion/p-dai22/170328_dai22kai_prion_gijiroku.pdf

この「科学」の曲解、ねじまげ、過ちを指摘しようと思って挙手しましたが、言わせてもらえませんでした。間違いも指摘できない「意見交換会」なんて、最高ですね。こんな風に「科学をねじまげられる」んではたまりませんね。あまりにもひどかったので、その後のご発言、こういっていたように私の耳には聞こえました。

「みなさまの食の暗然を守る」

実際米国牛は、飼料管理がどれだけきっちりなされているのかと、現行でどれだけBSEに汚染されているかを一番に確認すべきなのですが。若牛だろうとなんだろうと、怪しい飼料を食べている感染牛かも知れない牛を日本に入れるというのはヒトと家畜の防疫上、冗談じゃないです。


■SRM除去問題
国はSRM除去が完全にできないことをはっきり述べました。「検査、SRM、飼料」全部、「完全」なんて無理です。」と厚生労働省の外口崇氏がいわれました。誰かさんが主張してた「ゼロリスク信仰」なんかそもそもありっこないわけで。あとは「どうやってできる限りリスクを下げていくかということが大事」なわけだし、それを外口氏も述べていました。努力していないところの食品なんか食べられないということです。

参考:
農水省:「BSEに感染した牛は、骨を取り除いても食肉処理の過程で肉が汚染される可能性がある」
http://blog.goo.ne.jp/infectionkei2/e/0a2e4459558beb8d921eb79753e6c8fa

なお、もう一点食肉処理場の現場からの重要な指摘がありました。農水・厚労省は「米国はSRMを厳正に処理している」という報告書を先日出したようですが、
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050519press_9.html
http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050506press_2.html
その問題指摘はこちら。
「厚労・農水省 米・加のBSE対策調査結果を発表 安全性評価の資料にはなり得ない」
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/05052001.htm

話戻って、リスコミで指摘されていたのは
背割り後に脊髄を吸引し、その後高圧洗浄をするとあるが、それだと汚染が広がるのでは?という意見です。

こういうことでしょうか? 参考までに以下の写真を。
内視鏡洗浄に関する「目に見える汚れ」「目に見えない汚れ」について
http://www.d1.dion.ne.jp/~jamec/photo1.html
http://www.d1.dion.ne.jp/~jamec/

さらにもう1つ。現場の方がご指摘くださったのですが、肉類の脳神経組織の混入・汚染チェックは、アズマックスという企業が、96セット(90頭分)8万円で簡易キットを販売しているそうです。これはその場でチェックできて、2時間後に判定ができ、やり方さえちゃんと確認すれば普通の消費者でもその場でできるとのことです。
http://www.azmax.co.jp/idx02_product/kensa/index_01.htm
http://www.azmax.co.jp/idx02_product/kensa/field_04_index.htm
枝肉に使用するのでしょうが、消費者団体や生協、その他流通でもどんどん活用いただきたいですね。バラ売りしてほしいなぁ。

危険部位除去はとても大事。食安委は全頭検査見直し評価をするなら、SRMの除去率のリスク評価も当然すべきでしょう。上記キットもありますしね。


■肉質での月齢判断について
目でみて、赤い、とか骨化が進んでいる、とかで月齢を判断する方法が述べられていましたが、その件について、「品質管理」「安全管理」に携われていた方のお怒りの指摘がありました。「そもそも根底のサンプルの集め方からして間違っている。統計以前の問題だ!こんなサンプルの集め方をうのみにしてそのまま信用するとは」ところどころ絶句。そう。絶句しちゃいますよねー。いやまじで。

この件で、月齢判定に関する検討会の座長をされていた沖谷教授のお言葉
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-05-21/02_02_0.html
>『米国式格付けと月齢とを結びつける問題点をめぐって、高橋議員は「米国ではさまざまな交配種があり、肉質も違うのにアメリカが示したサンプルのデータが、どの牛の種類でも成り立つのか」と質問。牛の月齢判別に関する検討会座長の沖谷明紘日本獣医畜産大学教授は、年間約三千五百万頭という「全部の母集団を完全に反映しているとはいえない。それは不可能だ」と答えました。』

議事録をお楽しみに。。

■どうする食品安全委員会?
食安委の品川森一先生も6ヶ月前から辞意を表明されていたことが判明しました。

米産牛肉の輸入審議難航も 食品安全委から内部批判
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050518-00000233-kyodo-bus_all

3年半前、プリオニクステストの感度について疑問が噴出したときに、私はその企業に電話して根掘り葉掘り伺ったのですが、そのとき親切に回答くださった方が「品川先生を知らないんですか?あなたモグリですよ何いってるの。品川先生はその世界の検査における第一人者のすごい方なんですよ!」といわれたことを記憶しています。その後品川先生にもお電話でBSEの一連の検査に関する疑問を消費者として伺って、とてもわかりやすく丁寧にご解説くださったことを思い出します。

食安委の傍聴中、品川先生や山内先生が、より検出度の高いWB検査法だけの結果でもBSEと認められている、と何度も否定しているのに、輸入再開に都合のいい「21ヵ月、23ヶ月はBSEではないのではないか」という話をを何度もしつこく投げつけた委員がいて、「ああ、本当にうんざりされてるだろうな」と思ったなぁ。そういえば。私は、食の安全に関して予防原則さえ考えていない人間が委員会に存在すること自体に疑問を持ちました。

そのことで、日本食糧新聞の小野寺節教授インタビュー記事に、面白い件があったのでご紹介まで。

「スイスでOIEのメンバーと議論していたときに、向こうは21ヵ月齢、23ヶ月齢はBSEではないと言い張るので、「では、その肉を持ってきて焼肉パーティーでも開こうか」と言ったら、「それは困る」と言っていました。(笑)」
http://www.nissyoku.co.jp/bse/

山内一也先生も遺憾の意

全頭検査緩和で利用された/食品安全委の山内専門委員
http://www.shikoku-np.co.jp/news/news.aspx?id=20050520000194
衆議院農林水産委員会は20日、牛海綿状脳症(BSE)対策の見直しについて審議。参考人として出席した内閣府食品安全委員会プリオン専門調査会委員の山内一也東大名誉教授は「(行政に)ある意味で利用された」と述べ、同調査会が全頭検査緩和にお墨付きを与える形になったことに遺憾の意を表明した。 山内委員は、全頭検査の緩和によってリスクは増えるが、増え方が極めて小さいという科学的な評価をしただけだとし、全頭検査の有効性を強調した。岡本充功議員(民主)の質問に答えた。 同委員会では、米国産牛肉の肉質や骨格形成で生後20カ月以下と判定する方法についても、与野党双方から「6秒程度の目視で確認できるのか」「サンプルが片寄っており無理がある」などと批判的な意見が出た。

東京のリスコミの場におられたら、山内先生はどういわれていたことやら。

4 コメント

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Unknown (けいすけ)
2005-05-22 15:23:27
TBありがとうございました。国民全体の安全に関わる重要事なのに、どうしてマスコミがJR事故ほど突っ込んだ取材をしないのか不思議です。
まさにもう絶句ですね ()
2005-05-22 16:02:01
HIVの反省がまったく見えませんね。まさしく毅然とした態度が必要な問題になぜアメリカだとこうなのでしょう。

これは後にJRやHIVなんてもんじゃないほどの大問題になると思います。なにせアメリカ産牛肉はもうほとんどの日本国民が食べてますし、これからはお店は意識せずに食べることになるわけで。

国民の生命と財産を守るのが仕事のはずのこの人たちは何を考えているのでしょう。
Unknown (Unknown)
2005-05-24 13:21:20
確かに国は最低と思います。 もともとは日本でのBSEの時に今の幹事長と厚生労働大臣がおかしなことをして、その責任を食品安全委員会にうまくなしつけるからおかしな話になったのですよね。 ただ、アメリカ産よりもっと怖いのは、中国、メキシコ、南米の牛肉ではないですか? 最近統計を見ると沢山入ってきてるみたいですけど、これらは食品安全委員会でリスクを調べる必要なないのですかね? 検査もいい加減に感じませんか? 中国に先日行きましたけど、SRMなんて言葉たぶん誰も知らないという国と感じました。 それらの国の牛肉は山内先生はどのように考えておられるのでしょうか? 日本のピッシングも法律としてやめた方がいいのに、国はのんきに構えているのは不思議です。 生協さんあたりもそんなリスクのある国産をよく100%安全といって販売できると思います。 皆さんは牛肉は食べないのですよね? 菜食主義者? 農薬は? いろいろ考えると食べるものがなくなりそうですね。 
Unknownさんへ (Mariko)
2005-05-24 18:43:44
リスコミに参加していると、必ずそうおっしゃる方がいますね。米国牛の危険性の告発などが出てくると、「じゃあ国産はどうなんだ?国産だって食べられないじゃないか。タバコのほうが危険だ」

ちなみにアメリカ産も怪しいですが、その他の国だって飼料が怪しくSRMも除去されてなければ同じく怪しいですし、それも調査してくれるように食品安全委員会にはお願いしてますよ。調べてくれないけど。ピッシングについてはまともな委員はみな止めるようにいってますがリスク管理部門で対応できてないんですね。



よく、問題を起こしてしかられると、○○ちゃんもやっているじゃないか、っていう子がいますが、それを思い出してしまいました。問題は比較の対象ではなく、それぞれを対処していかなくちゃいけないんじゃないですかね。