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検証 周辺整備費 新国立競技場

2015年07月16日 17時18分27秒 | 新国立競技場
周辺整備費は誰が負担するのか 検証・新国立競技場周辺整備費




 東京都は、新国立競技場を建設する神宮外苑地区を、大規模スポーツ施設を中心としたさまざまな施設を集積させ、「集客の高い、賑わいのあふれるエリア」にして、「活力のあるまち」に再生するとしている。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催をきっかけにした“街づくり”の中核となる戦略の一つだ。五輪開催の“レガシー”(未来への遺産)のシンボルである。


 
(出典 新国立競技場(仮称)整備計画について 東京都)

 神宮外苑地区には、新国立競技場を取り囲むように、東京体育館、明治神宮球場、明治神宮第二球場、明治神宮外苑軟式野球場、秩父宮ラグビー場、テニスコートなどのスポーツ施設や明治公園などが立地している。北側はJRの線路を挟んで新宿御苑、南側は青山通りだ。大都会東京の中心にある、まさにスポーツの“レガシー”(未来への遺産)にふさわしい“東京ヘリテージゾーン”になることが期待されている。
 新国立競技場だけを建設しても、エリアの再開発、“周辺整備”にしっかり取り組まないと“レガシー”(未来への遺産)にはならないことを忘れてはならない。

 新国立競技場を建設するにあたって、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)では、「新国立競技場基本設計条件」を公表して、周辺整備計画を定めている。

 
周辺整備
 周辺整備の設計については、周辺地域との関係があることから、東京都等関係
自治体とも調整しつつ進める。

歩行者デッキの接続
 交通機関、道路(歩道)や公園、他の敷地など既設の基盤交通機能との相互
の連携・調和に配慮し、地区全体にわたり回遊性のあるネットワークを持ち、バリアフリーに配慮するとともに、敷地内を貫通する歩行者空間、人溜まり空間(滞留スペース)となる広場的な歩行者空間の検討を進める。

公園の確保
 都立明治公園の再配置にあたり、現在の特徴と基本的な性格を継承しつつ、
現有規模の確保を図る。なお、広域的な緑のネットワークとの連続性、新国立競技場との一体的空間の整備、分断されていた既存公園の一体性・連続性の確保、立体公園制度の活用、歩行者や人溜まりのための空間と公園の緑との連携・共存に配慮した計画とする。

空地の確保
 オリンピック・パラリンピック競技大会等の大規模大会時には、施設の性格上、
人の流れが集中することから、安全で快適な空間として歩道状空地、広場状空
地を適切な位置に確保するとともに、歩行者デッキ、公園と併せて、機能面での連携に配慮した計画とする。
(日本スポーツ振興センター(JSC) 新国立競技場基本設計条件(案) 2015年11月)

 “周辺整備”には、当然、巨額の経費が伴う。
 “周辺整備費”を巡る経緯を整理してみよう



(出典 新国立競技場(仮称)整備計画について 東京都)

■ 周辺整備費 「372億円」 
  2013年11月8日、文科省は猪瀬直樹都知事に、新国立競技場の総工費を1852億円とすることを明らかにした。新国立競技場の本体工事費1413億円、解体工事67億円、周辺整備費372億円している。
日本スポーツ振興センター(JSC)が公表した「新国立競技場基本設計条件(案)」(2014年11月)でも、新国立競技場の本体工事費1413億円、解体工事67億円、周辺整備費372億円、総工費1852億円と、文科省の積み上げた額がそのまま記載されている。

周辺整備費372億円の内訳は次の通りである。

▽人口地盤等(バリアフリー)             266億円
▽都営大江戸線との接続 (バリアフリー)       11億円
▽サブトラック連絡通路                   30億円
▽立体公園(バリアフリー)                 39億円
▽上下水道幹線移設費                   26億円
計周辺整備費                        372億円 

 キーワードは“バリアフリー”、2020年はパラリンピックも開催されるため必須である。パラリンピック開催をきっかけに、車いすなどでも容易に移動可能な障害者や高齢者に“やさしい”街づくりに大都会東京が大きく踏み出そうというものである。
 新国立競技場の建設用地は、高低差7~8メートルの斜面になっており、この敷地をフラットにして競技場や公園を建設するために“人工地盤”を建設することとした。その経費として266億円が計上されている。
 “立体公園”も同じ理由で、フラットな公園として整備するためのものである。緑を確保するために、樹木の植栽も重要である。
 “環境にやさしい持続可能な”再開発である。


■ 文科省が示した“予算”上限額 “周辺整備費”「237億円」
 2014年1月、文科省は新国立競技場の予算の上限を、日本スポーツ振興センター(JSC)に示した。
これによると、本体工事費1455億円、周辺整備費237億円、総工費1692億円である。

▽明治公園        33億円  (立体公園)[バリアフリー]
▽周辺人工地盤    143億円
▽ブリッジ外苑西     22億円 (歩行者用デッキ[立体歩道])[バリアフリー]
▽ブリッジ新宿道     19億円 (歩行者用デッキ [立体歩道])[バリアフリー]
▽インフラ移設      15億円  (上下水道幹線移設)
▽サブトラ連絡通路    4億円  
▽明治公園撤去      1億円  (立体公園)
周辺整備合計      237億円
「文科省から新国立競技場の予算に関する正式な回答」 2014年1月30日

 人工地盤の約120億円、サブトラック通路が約26億円、上下水道幹線移設費が約11億円、減額されていたり、一方で、歩行者用デッキ約30億円増えていたりして、総額で約135億円削減されている。
 変更の理由は不明であるが、以後は、“周辺整備費”は「237億円」とされるようになった。


■ 縮小設計案 景観配慮、5メートル低く 1625億円を維持
 2014年5月28日、日本スポーツ振興センター(JSC)の将来構想有識者会議(委員長=佐藤禎一元文部事務次官)が開かれ、最大8万人収容の新競技場の「基本設計案」が承認された。周辺に配慮して高さは当初案より5メートル低い70メートルとし立体型の通路を見直し延べ床面積を25%程度縮小するとした。19年9月開幕のラグビー・ワールドカップ日本大会に向け、2019年3月の完成を目指すとしている。
基本設計案によると、敷地面積は当初計画通り約11万3千平方メートル、延べ床面積は約21万1千平方メートルで、外観は、ザハ・ハディド氏の流線形の案を元にデザインされ、地上6階地下2階。総工費は「1625億円」(2013年7月の単価、消費税5%で試算)とした。
競技場本体に約「1388億円」、公園や連絡通路などに約「237億円」と記されている。
内訳は、文科省が示した“予算上限”と同じだろう。


■ 新国立競技場、施工者に大成建設と竹中工務店
 2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場について、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は31日、工事施工予定者に大成建設と竹中工務店東京本店を選んだと発表した。
 大成建設は延べ面積約21万平方メートルの競技場など本体部、竹中工務店は開閉式遮音装置を設ける屋根を担当する。
 JSCは工区を、「新国立競技場等新営工事(スタンド工区)」と「同(屋根工区)」に分割した。スタンド工区は、競技場のスタンド、フィールド、人工地盤、外構などの工事を担当する。屋根工区は競技場のキールアーチや屋根、開閉式遮音装置、スカイブリッジなどの工事を手掛ける。いずれの工区でも、実施設計段階で施工者の立場から施工方法などの技術協力を行う。

 ここでは「スタンド工区」には、“人工地盤”は“外溝”が含まれている。
 文科省が示した“予算上限”の“人工地盤”「143億円」は「スタンド工区」の予算に含まれているのである。
 しかし、明治公園(立体公園)整備費や歩行者デッキ建設費、上下水道移設費等の「94億円」は含まれていない懸念が強い。
 “人工地盤”以外の“周辺整備費”はどこへいったのか?font>


スタンド工区と屋根工区の工事内容(資料:日本スポーツ振興センター)

■ 新国立競技場建設費 2520億円承認
 2015年7月7日、日本スポーツ振興センター(JSC)は「有識者会議」で、新国立競技場の改築費は、当初よりも「900億円」多い「2520億円」になることが決まった。スタンド工区が1570億円、屋根工区が950億としている。膨大な建設費に批判が集まるなか、5年後に向けた計画が進められることになった。
“人工地盤”と“外溝”の建設費は、スタンド工区の1570億円に含まれているだろうが、明治公園(立体公園)整備費や歩行者デッキ建設費、上下水道移設費等の「94億円」はどこへいったのか、曖昧のままである。



(出典 新国立競技場(仮称)整備計画について 東京都)

■ 破綻した「2520億円」 周辺整備費72億円は計上せず
 日本スポーツ振興センター(JSC)が敷地外にある2つの歩行者デッキ(立体歩道)など、計72億円の整備費を総工費に含まず発表していたことが明らかになった。これまでは歩行者デッキなどの整備費を含んで試算していたが今回は、未記載のまま発表し、改めてずさんな見積もりが浮き彫りになった。
JSCは2014年5月に示した基本設計で、駅からのアクセスが多いと想定する歩行者用デッキ(立体歩道)1号、2号の整備費を37億円とし、水道などのインフラ設備の移設費の35億円と合わせ、計72億円と試算し、「総工費1625億円」には、この72億円が含まれていという。
 新国立競技場の総工費を巡っては、当初の「1300億円」から約二倍に膨れ上がり、世論から厳しい批判を浴びている中で、総工費を意図的に圧縮するために、当初は総工費に含まれていた“周辺整備費”を意図的に曖昧にしたという疑問が生まれる。周辺整備費”は、神宮外苑を、スポーツの“聖地”として、五輪開催の“レガシー”(未来への遺産)とするために必須である。
バリアフリーの立体公園や立体歩道、そして緑化整備やインフラ整備はどこへいったのか? そして誰が負担するのか





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2015年7月16日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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