さて、最後の夜のおかずは、魚のトマト煮に獅子唐、玉ねぎなどをからめたカレン式炒めもの。
ここに、ニガウリでもあったら、沖縄風になったかもしれんなあ。
むろん、辛いのは苦手なあおこちゃん向けには、唐辛子と獅子唐抜きを供して、「おいしい」と喜んでもらえた。
ところが、普段はピーマンみたいな味の獅子唐が意外にも辛く、辛いものが好きだと言っていた信一さんも由香さんも、あおこちゃん向けの無難味とミックスして食べる事態に。
訊けば、タイと似通った気候風土なのに、沖縄には辛い料理がないのだそうである。
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食後、夫婦二人による沖縄三味線「三線(さんしん)」演奏が始まった。
信一さんは、三枚の板を糸でつないだものを指で鳴らす打楽器「三板」とボーカル担当のようだ。
まだ習い始めて日は浅いそうだが、由香さんの三線、信一さんの「三板(さんば)」共に堂が入ったものである。
練習用の音譜を見せてもらったが、番頭さんにはまるで暗号みたいで、何が何やら。
まずは、映画にもなった『涙(なだ)そうそう』。
次に、タイトルは忘れたが、我々も子供の頃から耳にしてきたポピュラーな沖縄民謡。
そして、ご存知『花』。
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ところが、演奏を聞き終えた女将のラーが、突然タイ語で『花』を歌い始めた。
そういえば、番頭さんもこの曲、確かカラバオ(タイの国民的ロックバンド)の古いCDで聴いたことがある。
歌詞は分かりやすい恋愛風に変えてあるらしいが、確かにメロディーは嘉納昌吉の『花』で、きっとタイでもそのカバー曲がヒットしたのだろう。
喜んだ由香さんが再び曲を奏で始め、信一さんがそれに日本語で、ラーはタイ語でそれに和す。
その盛り上がりに、謙虚な番頭さんもとうとう、その神秘的(?)な歌唱力のベールを脱ぐ事と相成った。
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気づけば、その演奏の渦中であおこちゃんはすっかり寝入っている。
由香さんが宿の方で添い寝に入ったので、番頭さんは信一さんと二人で星空見物に出かけた。
沖縄とはまたひと味違うだろうオムコイの星空、二人にも見せたかったなあ。
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