ある大学教授の思い

ある女子大学で情報、統計、ファイナンスなどを教えております。気がついたことなどまとめてみたいと思います。

ユーロ危機

2012年01月17日 13時59分37秒 | Weblog
ユーロ危機の解決法

ユーロ危機の本質
   計画経済の社会主義の幻想が砕かれ、自由主義の米国型資本主義も行き詰まり、通貨統一の理想で市場経済に多少の計画性も持ち込んだユーロ体制も危機に瀕した。日本型の官僚資本主義とも呼ばれる試みもバブルで崩壊した。あとは北欧型の高度福祉国家、中国の独裁型市場経済国家はどうなるのであろうか。どうやら国の運営に関する経済財政政策には最適な解は存在しないと言うのが正しいように思える。
  

   以上のような話は素人が議論して答えを出せるような簡単な問題ではないので、また別の機会に考えた。当面、世界経済に最も影響する課題はユーロ危機だ。マスコミ報道では、ギリシャやイタリアのラテン型民族が先のことを考えずに、通貨がユーロになった事で、自国経済の破綻などは考えずに放慢財政運営をした結果だとなっている。直接的な危機はそうかもしれないが、国の制度や仕組みなどをそのままで通貨だけを統一したからといってすべてがうまくいかないと思うのは自然だろう。

   日本でも明治維新では、はじめて通貨が統一されて円となった。それ以前の江戸時代には各藩で通貨はバラバラで、金銀などがその基準となっていた。明治維新では通貨を統一したが、人の移動の自由、廃藩置県による中央集権などで、それほど問題は起きなかった。同じ民族だが、明治政府を作った薩長の官僚たちの手腕は見事だった。これから類推すると、ユーロ危機の本質は通貨だけ同じにしたことだ。労働力や財貨の移動をもっと自由にしないと、通貨統一はうまく機能しない。

   当面するギリシャやイタリアの財政危機を何とかしのいで、その後は、少なくともユーロ圏では、できるだけ各国を縛る規制を取り払い、財や労働市場などの経済構造を柔軟にして、ユーロ地域の経済変動を吸収できるような方向に持っていかなければならない。この理論は1999年にノーベル経済学賞を受賞したマンデルの最適通貨圏の理論だ。

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