ある大学教授の思い

ある女子大学で情報、統計、ファイナンスなどを教えております。気がついたことなどまとめてみたいと思います。

最大の変化

2009年12月31日 10時17分17秒 | Weblog
自動車産業の激変
  2009年は20世紀の初めにフォードがベルトコンベヤー方式でセダンの大量生産を開始して以来、100年に一度の変革の時を自動車産業界は迎えた年だ。4月にはクライスラー、6月にはGMが相次いで経営破綻し、20世紀の自動車業界と米国の繁栄の象徴だったビッグスリー体制がもろくも崩壊した。

 

  輸出依存の日本の自動車産業も金融危機の影響をもろにかぶり、最強で最優秀と謳われたトヨタまで大幅な赤字に転落して、この影響は日本国を根底から揺るがす事態となって、未だに明かりが見えてこない。この産業の基本を変えた要素は二つあり、一つは機械工学の粋を集めたガソリンエンジンに影が差したこと、もう一つは自動車の産業と需要の主体が先進国から中国やインドなどの新興国に向かって動き出したことである。


  そのシンボルが独フォルクスワーゲンと日本のスズキの資本と業務の提携が年末に成立したことである。これでこのグループの生産量はトヨタを抜いて世界のトップに立った。提携の狙いはずばり、エコカー開発と新興国である。これに続いて、三菱自動車とプジョー、ルノーとダイムラーとの提携も進んでいる。


  新興国も含めて、これから数年の間に、自動車メーカーの世界的な再編が加速していくことは間違いない。エコカー化もハイブリッド車から、完全電池駆動のゼロエミッション車へと進むはずで、10年後には世界の10%はガス排出量ゼロ車となるであろう。ガソリン車から電池車になれば、部品点数が半数以下となるから、これから10年間にわたり自動車部品産業群の淘汰が進むこととなる。素材産業、部品産業にとって将来戦略の描き方が問われる時代だ。
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今年の三大ニュース

2009年12月30日 12時13分45秒 | Weblog
三大ニュース
  様々なメディアで10大ニュースの報告がなされているが、頭には10も残らない。管理人の選んだ日本と世界の三大ニュースを掲載しておきたい。



日本の三大ニュース

1.衆議院選挙で民主党圧勝

2.トヨタ赤字転落、最悪な失業率と有効求人倍率

3.新型インフルエンザ流行



世界の三大ニュース

1.オバマ大統領の就任、核なき世界宣言、ノーベル平和賞受賞

2.GMとクライスラーの経営破綻

3.G20とCOP15での新興国の台頭
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期待の20年へ

2009年12月29日 10時39分09秒 | Weblog
失われた20年
  1989年12月末の38915円という史上最高値をつけた日経平均株価から、ちょうど20年目を迎えた。当時の雰囲気を覚えている人も少なくなっているが、赤坂見附付近の喧騒さを懐かしく思い出す。あのまま成長を続ければ今頃は10万円の大台に乗るかどうかというはずであるが、現実はその10分の1である1万円台を年末までキープするかどうかという情けない状況だ。差額9万円が失われた20年の代償である。

   20年前の個人資産は総額930兆円で、その12%を株式が占めていたが、現在の総額は1450兆円と増加したが、株式資産比率は4%しかない。だから金融機関の口座には全体の20%である300兆円もの資金が冬眠を続けている。投資信託への比率は増加しているが、日本株を運用対象にした商品は人気がない。

 1949年の株式市場再開後40年は成長路線で上がりっぱなしだったが、その後20年間は下げ基調で推移してきた。これからの20年を成長路線へ引き戻すために、鉄鋼、自動車、電機に代わるエースを育てることが重要である。まずはそれらの旧産業を効率のよい生産システムに変えるために、周辺の電力、通信、運輸、金融などのサービス産業の効率をなお一層高めて、産業全体の投入コストを引き下げることだ。


  次になすべき課題は、これかの世代を背負って立つ新興産業の育成である。狙いは環境、国際、金融、資源、食糧、エネルギー、福祉、観光などのキーワードで代表されるものと、それらを結びつけて新たな新産業システム群を構築していくことである。個々の技術を生み出す力は優れているが、横断的にそれらの秘術を結びつけて新たなシステムやビジネスを生み出す力に我々は欠けている。それだけはなく、霞が関に存在する多くの規制を取り払い、市場競争環境を整えることも重要だ。すべて順調に運べば、財政赤字も半減し、20年後の2030年には4万円台の株価も夢ではないと思う。
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無税での財産継承法

2009年12月28日 10時47分18秒 | Weblog
世襲議員の財産引き継ぎ
 自民党の議員の3分の1は世襲議員である。彼等は議席だけを引き継いだわけではなく、当然に何がしかの財産や資産も手にしているはずだ。普通なら、贈与税や相続税の対象となると思うが、実際にはアベ氏やコイズミ氏が、そのような手続きをしたという話を聞かない。何か税金逃れのうまい仕組みがあるみたいだ。

 

  調べてみると、いくつかの方法があり、まずは親父の政治団体をそのまま継承することで、全く非課税ですべてを相続することができる。これよりも手の込んだ方法としては、父親の政治資金管理団体から別の団体を経由して、自分の政治資金管理団体へ寄付する仕組みがある。政治団体間の寄付金は年間5000万円までは贈与税が非課税となるから、3年間に分ければ1.5億円を無税で継承できる。


 ハトヤマ家でも、これぐらいのことは当然に熟知していたが、賢い母親にとっては、そのようなこすからい方法で財産を息子たちに残すことを、あえてせずに、堂々と贈与税や相続税を支払いなさいということのようだ。いま追求されるべきは、合法的かもしれないが、あざとい方法で財産を承継した世襲議員たちの政治家としての倫理であろう。
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書籍が消えた

2009年12月27日 11時31分50秒 | Weblog
グーグル・ブックス
 書籍の全文または部分検索サービスで、米国では2004年、日本では2007年にサービスを開始している。キーワードを入力して関連する書籍の書名や出版社などを検索できる。本文にも接することができるケースもある。グーグルの玄関で「サービス一覧」を選択し、「検索サービス」欄で「ブックス」を選択する。キーワードを入力して「書籍の検索」を選択する。例えば「地球温暖化」など入力してみよう。
  

  米国の著作権協会と出版社協会はスキャンする行為が著作権侵害として、2005年にグーグルを告発した。2008年10月に和解が成立して、対象を「米国著作権局に登録済みの書籍、または米、英、オーストラリア、カナダの4か国で出版された書籍」に限定した。さらにこの和解案に対して修正案の検討が行われている。


  日本でも書籍や雑誌の市場規模は10年前の2.5兆円から2.0兆円弱と20%小さくなってきている。そして電子書籍やネットによる書籍が急激に増加してきた。雑誌記事のバラ売りまで始まり、電車の中刷り広告から気になった記事を携帯電話にダウンロードして、数十円の費用で、その場で内容に接することもできる、
 

  特殊な専門書、趣味の本など部数が少ないとコスト面から書籍化は不可能であるが、デジタルで製本するPOD(プリント・オン・デマンド)なら低コストで50部程度の少数でも採算がとれる。通常の書籍なら最低500部が採算ラインと言われている。普通の書籍をハードのな本と呼ぶと、これはソフトな本といえる。形がないから、整理する必要もない。



  15世紀にグーテンベルクが発明した活版印刷術は人類の知的産物の創造と保存に多大な貢献をしてきたが、デジタル時代には、全く新たな仕組みが生み出されようとしている。未来の書庫や図書館は机の上のパソコンだけという時代になるのであろう。愛書家とか蔵書家という言葉も死語となるであろう。
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技術立国の基本

2009年12月26日 09時19分45秒 | Weblog
科学政策
 科学予算削減の仕分けには、国立大学学長からノーベル賞受賞者までこぞって反対の声を上げて、未だに収まってはいない。まるでカネを掛ければ研究成果が上がり、ノーベル賞がもらえるみたいな感じがする。受賞者たちが一番良く知っていることだが、自分たちはカネを掛けたから受賞したなどと思っている先生はニュートリノのコシバ先生ぐらいであろう。

 

  モノ作りでこれまで生きてきた日本にとって、科学技術の必要性を否定するものはいない。その科学の基本に対する教育が基本のところで崩れてきていることを、予算削減よりもまずは憂うべきである。例えば現代の高校生で物理を履修する学生は30%しかいないのである。これは中小学校での理科教育のその一因があることを伺わせる。


  OECDの学力調査でも、この10年間での数学や理科などのレベルの低下が示されている。数学では10年前はトップクラスであったが、現在は10位になっている。小中校での教育の質の低下は、モノづくり大国日本の将来に影を落とすものだ。

*http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/3940.html
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この政権の寿命

2009年12月25日 10時48分03秒 | Weblog
政権100日間
  来年度予算の骨格が固まった。前政権時代の残滓を留める予算案の一部だけに業務仕分けで手が入っただけで、とても満足のできるものとは言えない。世論を形成する新聞やテレビとか、自民党からも「マニフェストにとらわれるな」とか「柔軟な姿勢が必要」などと大合唱して、小泉元首相と同じように公約など破るのは当然と報道してきたはずだが、いざ形が見えてきたら、一転して「公約破り」とか「約束違反」と騒いでいる。これほどまでに支離滅裂な大新聞やテレビでの報道も珍しい。

  

  内閣支持率が70%から50%に下がったのは米国のオバマ政権と同じ様相である。首相秘書の起訴でさらに下がるかもしれない。政権の救いは、民主党と自民党の支持率には選挙以来、ほとんど変化はないことだ。これまでなら、政権支持率が下がれば、当然に野党の支持率が上向かなければならない。そうならないところに、自民党の深い病根が潜んでいる。



  戦後、深く自民党政権と結び付いてきた新聞テレビのメディアには、記者クラブの既得権益を侵そうとする民主党政権に対する反感が見え隠れしている。前述のキャンペーン以外にも、閣内不統一、幹事長と首相の権力関係、連立内閣の虚弱性、首相の献金問題、幹事長の資金関係など国民の喜びそうな話題を満載している。あまり報道されていないが、幹事長と首相は都立小石川高校で先輩と後輩の関係にある。外からは対立しているように見えるが、同窓生は何かと共通要素を共有していることを忘れてはいけない。
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デフレ抑止

2009年12月24日 10時50分04秒 | Weblog
物価上昇率はゼロ%以上
  日銀は金融政策決定会合で、消費者物価指数上昇率を「ゼロ%以下のマイナスの値を許容していない」との見解を公表した。デフレ克服まで金融緩和を維持する姿勢で、超低金利が継続すると市場が判断して、中長金利も押し下げる時間軸効果も狙った。

   総裁は「日本経済がデフレから脱却して、物価安定の下での持続的成長経路に復帰するのが極めて重要な課題」と明言している。しかし、デフレと言うのは物価が持続的に低下することではなくて、経済が委縮して銀行信用が収縮することだ。資金供給が滞り信用収縮が起こることを最小限度の防ぐために、流動性を維持することは当然だが、これでデフレがなくなる保証はない。

   海外から安価な商品が大量に輸入されると、国内企業も対抗上、値下げをしなければならない。だから物価下落を止めるには、輸入制限や関税引き上げをすれば最も効果的だ。しかし、貿易の自由を日本が潰すことはできない。そこで物価を安定させるためには、競争力のある成長分野を育成することで、実物経済を上向かせることだ。これまでに培ってきた日本独自の製品、ハイテク技術分野、環境関連商品などをさらに成長軌道に乗せるための、規制緩和や補助育成を指向するべきである。物価の安定には近道はありえない。
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富士山での遭難

2009年12月23日 10時30分02秒 | Weblog
カルネアデスの方舟(はこぶね)
  「海で遭難してしまい、一枚の舟板に二人がつかまる。二人の重みで舟板が沈むので、一人がもう一人を突き放して溺死させ、自分だけが舟板に取りついて助かる。これは罪にはならない」と言うことを古代ギリシアの哲学者カルネアデスが主張した。自分自身が死の危機に直面しているとき、相手を蹴り落としても罪にはならないことだ。これをカルネアデスの板、またはカルネアデスの箱舟という。

  「いろんなことを考える中で、自分一人では助けられないので、2人を置いて下山するという判断をした」と苦しい胸の内を無事に下山した遭難者は語っている。富士山の6合目は標高2700メートルで、最大級の寒波という悪天候の中でテントを吹き飛ばされたという。5合目まで下がれば安全地帯であるから、その判断が悔やまれるであろう。

  このニュースを聞いて、すぐに連想したのが上記したカルネアデスのことである。誰も証言するものがいないから真相は不明であるが、46歳の生還した元F1ドライバー氏は、これから生涯にわたって自分のとった行動に苦しめられることになる。極限状態での人の判断に、外野席からとやかく言うことはできないことも事実である。
*松本清張著「カルネアデスの舟板」文春文庫 傑作短編コレクション(中)740円
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衰退国からの脱却

2009年12月22日 14時13分13秒 | Weblog
坂の下のドブ
  司馬遼太郎先生の小説「坂の上の雲」で描かれている世界は、若い人たちが青雲の気に燃えて新しい国家を建設していこうという立身出世物語である。失われた20年の直接の被害者である25歳から45歳の人たちは、これを見てどのように思うのか興味のあるところだ。ある調査によれば、その大半の方には、この物語はあまり興味がないそうである。何故ならば、あまりにも現代との世相のずれが大きく、自分たちの姿に重ねることはできないと、受け入れを拒否する意見が多い。

  隣の中国や韓国と比べて、この国は坂道をころげ降りているような衰退のプロセスに入ってきているように感じている人が多い。財政赤字、少子高齢化、産業競争力の劣化、失業率の増大、格差の拡大、年金不安、政治の混乱、官僚機構の拡大など持続する社会の発展を阻害する要因が目立ちすぎる。


  このまま世界の歴史の中に埋没して新興衰退国となっていくのか、新興国に対抗して、さらなる成長を遂げていくのかの岐路に立たされている。カギを握るのは前述した失われた時の被害者たちである。彼らの中から、新たなる資本主義の豊かな精神に期待するところが大きい。

  それは資本主義の根幹であるカネもうけを捨てることではなく、地球にやさしい企業、人類の持続的発展に寄与するビジネス、公共的な価値の向上に貢献する仕事などを通して、自己の存在価値を高めていく方向にある。これが成功すれば、坂の下のドブに転がり落ちることを防ぎ、再び雲の上を目指すことが可能となるであろう。
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環境ビジネス創造

2009年12月21日 10時02分30秒 | Weblog
合意に留意する
  予想された事態ではあったが、COP15は「コペンハーゲン協定」に「留意する」とし、ようやく決着した。決裂という最悪の事態は回避された。エコの国際会議は国のエゴのぶつかり合いの場となった。ポスト京都議定書について、法的拘束力がある新たな議定書の採択どころか、政治的な拘束力がある政治合意すらできなかった。

   国際連合や国際標準の採択は全会一致が原則だから、190カ国が参加する国際的な枠組みを作成することは難しい。最後は世界の排出量の半分弱を占める温室効果ガス排出大国の米国と中国の両国の指導で何とか合意案をまとめた。しかしもともと京都議定書を離脱した米国と、同議定書では温室効果ガスの削減義務を負わない中国であるから、その合意案は推して知るべしだ。

    先進国の2020年までの削減目標の義務付けや、昨年の洞爺湖サミットで合意した、50年までに世界全体の排出量を半減させるといった長期目標の記載すらない。エコよりも合意優先で、具体的な課題を軒並み先送りしている。

    日本にとっては「2020年25%」という高い目標に対して、法的拘束力がなくなったことで気が楽になるが、世界の排出量4%であるから、もともと達成しても、世界的にはあまり影響はない。だから会議でも日本の期待に反して、あまり注目されてはいなかった。

   それよりも環境技術先進国の日本にとっては、環境に対する個々の技術を総合化して世界的なビジネスチャンスを創造していく機会が到来したと考える。このチャンスをうまく生かせれば、GDPで数パーセントの成長率を稼ぐことも可能であろう。
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政治的利用

2009年12月20日 10時33分05秒 | Weblog
宮内庁改革
  外国要人と日本国象徴との会見に伴ういざこざに、外野席から元首相が「国益でない、政治利用だ、強い怒りを感じる」などと、ことさらに騒ぎを大きくすることほど国益に反することはない。この騒ぎのきっかけを演出した宮内庁長官こそ、自己の利益に象徴を使った最大の政治的利用者であると思う。宮内庁は内閣の管理下に置かれているから、長官も首相の指示に従うことは当然のことだ。どうしても首相の指示に従うことに反対するなら辞職すべきである。指示に従っておきながら、実は反対だったでは、話が逆である。

  宮内庁は職員総数1000人の大所帯で、侍従長、長官など天下りの特別職が50名ほど所属している。年間予算は180億円で、内訳は皇室費70億円、宮内庁費110億円と公表されている。天下り元は厚労省、警察庁、外務省など多岐にわたっている。職員の不祥事も多く、使途不明金、万引き、ひき逃げ、わいせつ罪など報じられている。皇室のことを大切に思うのなら、まずは閉鎖的な組織を改革していくべきである。皇室費よりも宮内庁費用のほうが多いのも何か庶民感覚とは異なる。

*http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/

環境会議COP15の舞台裏

2009年12月19日 10時10分21秒 | Weblog
環境会議の成果は
  先進国首脳のうち早々とコペンハーゲンに乗り込み、精力的に舞台裏で国際合意の構築に努力していたのはドイツの首相である。彼女は1994年にコール政権下で環境大臣に就任して以来、ライフワークとして温暖化問題に取り組み、1997年の京都会議COP3にも出席していた。



   彼女の目的は明確で、2050年までの気温上昇を2度以内にとどめるためには、2020年までに排出量を25%削減することというが、この会議での合意は難しい。ドイツを環境先進国にして、いつの間にか、太陽電池などクリーンエネルギー普及では日本を抜いて世界のトップにした。
  

ハトヤマ首相の国連演説があるから、日本の代表も活躍しているのかと思っていたら、インターネットでの情報を見る限り、相変わらず国際会議での日本の影は薄い。言葉の問題もあるが、それだけではなく、いつものことながら国内での調整で消耗してしまうからである。



  2週間にも及ぶ会議での結論は、おそらく京都議定書をそのまま継続するということであろう。世界貿易交渉の農産物と同じように、環境も先進国と新興国との間での利害関係をまとめ上げることは、タフな交渉人であるドイツ首相にとっても容易ではない。

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普天間問題

2009年12月18日 09時56分16秒 | Weblog
沖縄基地問題について
   敗戦から65年、冷戦終結から20年たったが、国内の米軍基地面積は東京23区の2倍弱、そのうち7割は沖縄にあることも、そのまま変わってはいない。ベルリンの壁が崩壊してから20年であるが、その間、ドイツ国内の米軍基地が3割閉鎖している。対外的な有事に備えることと国内の治安維持は国が国として成り立つために必要最低限の条件である。これに対して内閣が責任を果たさなければならないことは言うまでもない。

 

 13年前に普天間基地の移設を2014年までに完了することを米国と合意して、4年前に移転先も決定した。この約束を反故にしたのだから、これまでとは勝手が違うと米国が戸惑うのも当然である。その米国だって政権が交替してから、対外的な合意を覆す事をしてきている。例えば前政権時代に約束した東欧圏のMDシステム中止などがある。政権交代と言うのはそういうことを言うので、前政権と同じなら、交代の意味はない。


  それにしても、強大な仮想敵国のあった冷戦時代とは全く地政学的な構図は変化している東アジア地域で、前政権は基地の移転というよりも廃止という問題の取り上げ方をすべきであった。中国は米国にとって、日本よりも経済的に重要な国となってきているし、ロシアも米国にとって良好なパートナーに変身している。残りは北朝鮮のならず者であるが、こことも最近、米朝の2国間対話を開始している。



  基地問題では新聞もテレビも日米関係が崩壊するなどと、大袈裟に伝えられているし、自民党はここぞとばかり、これまでの失政を棚に上げて攻撃している。朝のワイドショーでミノとかいう高名な司会者まで、ワシントン支局の記者に対して「米国の国民はどのように思っているか」と質問したことには仰天した。日本のこと、沖縄の基地のことなど米国のメデイアが報道することは殆どない。支局の人も答えに窮して「今のところ何もない」と言っていた。



  米軍基地は巨大な産業であり、毎年5000億円もの予算が日本から拠出されている。米国と日本の軍事産業にとっても、「いざ有事に備える」ということを宣伝することで巨大なビジネスを生み出すことができる。普天間移設も巨額な利権がらみであることは容易に想定できる。だから、これまでに基地を縮小することなどは自民党政権にとっては禁句だった。

  確かに平和と安全を維持するためには、コストを支払わなければならないが、それがどれくらいが適当であるか答えはない。仕分け人なら「一体どれくらいカネを掛けたら満足できるのでしょうか」と質問したくなるであろう。
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科学者たちの楽園

2009年12月17日 11時40分29秒 | Weblog
理化学研究所
  1917年に財界人の渋沢栄一氏が駒込に設立した物理化学の研究所で、現在は埼玉県和光市が中心となっている。東京帝国大学の大河内教授が貴族議員のときに、発明発見を事業化することを目的として、この機関を大きく発展させた。原子物理学の仁科博士がここにサイクロトロンを建設して原子爆弾の研究もしていた。戦後、大河内先生と同郷の田中角栄氏がここに肩入れをしていたことも知られている。現在の所長はノーベル化学賞受賞者の野依(のより)先生である。この研究所の研究組織はかなり複雑で外部からはうかがい知ることはできないが、研究員や技術員に対して、労働基準法に反する違法な時間外労働を行わせていたことが報ぜられている。


   問題のスパコン開発で強面の理事長が「予算削減で日本の未来に責任をとれるのか」とか「民生用に応用できる先端技術が生まれる」とか偉そうに言っていたが、この人は化学の専門家で、スパコンが何ものかを知らないようだ。スパコンとは民生用のCPUを万のオーダーで接続して並列処理させるもので、後は効率よく作業させるためのソフトの問題なのだ。ソニーのゲーム機PS3のCPU「セル」は高性能で、これを並列に沢山つなげば立派なスパコンができる。しかもこの民生CPUもムーアの法則で毎年進歩続けている。

   先にスパコンなど300億円もあれば、世界一を作れるという技術者が世界にいると書いたら、質問が来ていたが、これに明快に答えてくれたブログが登場している。権威者に弱い日本の世論を象徴しているのが、何かと言えば登場するノーベル賞受賞者であるが、殆どの受賞者は極めて専門性の高い特殊な分野での業績しかない事を想起すべきである。ノーベル賞だけが科学をリードしているわけではない。
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