シェルティー ラン吉

拙者シェルティーラン吉でござる ラン吉のランは「団らん」のラン 一度しかない今日もろもろをラン吉ママがしたためまする

ポチの思い出ものがたり 21

2012-08-17 12:43:52 | ポチの思い出ものがたり

「ポチ、どうしたの」

「・・・・」

近づいてみれば、お母さんは、ひざの上にポチをだいています

「どうしたの、ポチ、なんでこんなところで寝ているの」

「・・・・」

「かあちゃん、どうしたんだよ」

「・・・・」

S少年はポチの頭にさわってみました

ポチはじっとしたまま、うごきません

「ポチ、どうした?かあちゃん、ポチへんだよ」

お母さんはようやく話しました

「ポチ、死んだ」

 

あまりに突然のできごとです

S少年は、かえす言葉もなく、ただ茫然とするばかり

 

どうしてなんだ・・・

今朝までいつもと同じように、あんなに元気にしてたのに・・・

いったい何があったんだ・・・

あのポチが、こんなにあっさりと死んでしまうなんて

ありえない・・・ ありえない・・・

 

S少年は、2代目ポチの突然の死が、どうしてもなっとくいきません

「どうしちゃったんだよ~、ポチはなんで死んじゃったんだよ~」

S少年のお母さんは、じっとポチを抱いたまま、なにも言いません

「なんか言ってよ、だまってたんじゃ、わからないよ~」

「・・・・」

「だってさ、今朝だって、あんなに元気だったじゃん!」

「・・・・」

「急に死ぬなんて、おかしいじゃん!」

「・・・・ ほんとう、おかしいわね・・・」

「そうだよ、おかしいよ!」

「そう、おかしいね、ほんと、おかしいわ~、おかしいっ、おかしいっ、あははは~」

お母さんは、涙をながしながら、おおきな口をあけて笑い出しました

 

その時、ちょうど、S少年の姉たちが学校から帰ってきました

「ただいま~、なにか楽しそうね!」

「なに笑ってるの?なにがそんなにおかしいの?」

なにも知らない姉たちは、うれしそうにはしゃいでいます

「あら、めずらしい!ポチが部屋にあがってる」

「ほんと、ほんと!抱っこなんかされてる」

「ポチも部屋であそんでもいいの?あたしにも抱っこさせてよ~」

「ポチ、ほら、こっちにおいで~

「かあちゃん、ポチを抱っこさせてよ~~」

お母さんは、じっとポチを抱いたままです

顔は、泣いているのか笑っているのかわかりません

「あれっ、かあちゃん泣いてるの」

「どうかしたの?なにかへんよ」

姉たちもなにか異変をかんじたようです

「ポチ、静かね・・・」

「ぐあいでも悪いのかしら・・・」

「ポチ、みんな帰ってきたのよ、お出迎えしてくれないの?」

「ポチ、動かないみたい・・・」

「ポチ、どうしたの?」

姉たちは、お母さんに抱かれたままのポチをなでました

いつもなら尻尾をふりながら、にこにこと見あげてくるはずです

 ところが、ポチは頭をなでられても、ピクリとも動きません

目をすこし見開いていましたが、ひとみに光はありません

「ポチ~、ポチ~!どうしちゃったの~?」

「ああ~~っ、ポチが、ポチが~~」

子どもたちの目にも、ポチの死はあきらかでした

子どもたちは動かなくなったポチにすがって、ただ泣くだけでした

 

夕方になってお父さんが仕事から帰ってきました

ポチはきれいなタオルにくるまれて、部屋の中にいました

お父さんは無言でみつめていましたが、やがてポツリと言いました

「かわいいやつだったのに、急なことだな、かわいそうに」

子どもたちは、その言葉を聞いて、また大泣きを始めるのでした

 

すると、お母さんは、まるで独り言のように話し始めました

「ポチはね、かわいそうじゃなかったのよ

ポチの最期はね、母ちゃんがこの腕のなかでちゃんと看取ってやった

ひとりで孤独に逝ってしまったわけじゃないんだよ

実はね、ポチね、自分から家の中にあがってきてね

最初はぐあいが悪いってわからなかったから、外に出したんだよ

そしたら、またあがってくるじゃないの

みれば、足元がよろよろとして、なにか苦しそうでね

でも、体のどこを見ても怪我はなさそうだし、水をやっても飲まないし

どうしようと思っているうちに、みるみる弱っていってしまって

もう抱いてやることしか、母ちゃんにはできなかったのよ

でも、母ちゃんはしっかりとポチを抱いていたからね

ポチはちっともこわがらずに、安心した顔で眠っていったよ」

 

「でも、急に病気になることなんてあるの?」

「少しずつ、おじいさんの犬になっていくなら分かるけど・・・」

「今朝だって、元気にご飯を食べてたじゃないか・・・」

 

ポチの突然の死をどう受けとめ、子どもたちになんて説明すればよかったか

お父さんにもお母さんにも、正直なところ、よくわかりませんでした

「ヒトだって、急病ってことはあるでしょう・・・」

「持病が急にわるくなることもある・・・」

でも、かかりつけの動物病院もなく、犬の病気については何もしりません

ポチの死んだ本当の理由は、だれにもわかりませんでした

 

子どもたちは、ただ涙でまくらをぬらしながら寝入っていくだけでした

 

 つづく

 


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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
切ないです (ミキママ)
2012-08-19 20:22:51
確かに昔は今と違って、わんこ達の病気に無頓着でした。でも、医療の押し付けではなくて、ポチが大好きな飼い主のお母さんに抱っこされて旅立って行ったのは、切ないけど幸せだったかも知れません。
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ミキママさんへ (ラン吉ママ)
2012-08-20 12:02:48
コメントありがとうございます。
そうですね、ミキママさんのおっしゃるとおりと思います。
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