<最優秀賞>
高橋 照美
冬の木に万の蕾の息ひそむ
枯木立みな観音の御手となり
手に取れば息通ひ合ふ初便り
やはらかに光をまろく寒雀
年用意済ませひと息ついてをり
<優秀賞>
大渕 のりを
亡びてはならぬ山河や初日の出
ほどほどの長生き良かれ福寿草
初夢や句座に亡き友母もをり
身の内の狼しづかに眠りけり
大寒の百済観音笑み深む
<優秀賞・敢闘賞>
山内 健治
校長は誤字も達筆年賀状
イニシャルのYと言ふ人古日記
冬銀河賢治の好きなレストラン
飼い主とよく似たチワワ冬ぬくし
引き算で済ます齢や去年今年
<優秀賞>
栗原 良江
ひとつだけ浮かべてひとり冬至風呂
代替り省き初めたる年用意
月しずか星のしずかな聖夜かな
メモ一行身に覚えなし古暦
厨事済ませて夜の賀状書き
<優秀賞>
横山 瑞枝
煤掃きの済めば戻り来夫と猫
熱燗の肴となりし上司かな
幕上げて女悲しき近松忌
枇杷の花凡なる幸の忘れがち
難越へし日をしみじみと年の暮