語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】脱原発に必須の天然ガスを安く調達する事業 ~中部電と大ガス~

2012年08月28日 | 震災・原発事故
 (1)4月、中部電力と大阪ガスは、LNG基地を運営するフリーサポート社との交渉権を取得。
 しかし、交渉期限は異例に短い7月に設定された。一時は、交渉期限を延長しないと無理だ、という判断も検討されたが、二度と同様のチャンスは訪れない恐れがあった。契約交渉と経営幹部との調整を同時に進める中、“サプライズ"ともいえる契約を実現した。
 契約内容は、フリーポートが建設するLNG液化加工基地で、2017年から計440万トンのLNG生産能力を中部電と大ガスが半分ずつ確保する、というもの。両社は、米国で市場に流通する天然ガスを液化し、日本に搬入できる。
 
 (2)何がサプライズなのか。
  (a)天然ガス価格が、現状では圧倒的に安い米国から調達する。
   ①これまでは、天然ガス価格は原油価格に連動するのが一般的だった。ところが、米国では近年、従来の天然ガスとは別の地層から産出されるシェールガスが大量生産され、ガス価格が大幅に低下。米国だけ、全く違う値動きをするシェールガス革命が起こっている。
   ②日本は、原油価格連動で購入している上に、福島第一原発事故以来、調達に走り回った結果、売り主に足元を見られて、LNG価格の高値掴みを余儀なくされた。日本の輸入価格は、米国の天然ガスの6倍にも達し、「ジャパンプレミアム」と呼ばれるほどだ。
   ③この構造を打ち破るべき動きが(1)だ。米国の天然ガスを輸入すると、液化加工や輸送費を含めても通常の輸入価格より4割安くなる。
   ④こうした動きは、特に電力業界では珍しい。
    そもそも電力業界には1円でも安く調達しようとする気合いがない。中部電は異端だ。【資源エネルギー庁】

  (b)燃料調達のプロである照射を頼らずに、新たな契約を実現した。
   ①国内ではガス権益のみならずLNGも商社を通して購入するケースが大半を占める。
   ②だが、商社は価格下落のエンジンにはならない。【橘川武郎・一橋大学教授】今回は、商社がいたら成功しなかっただろう。【関係者】

  (c)天然ガスの「生産者」としての権利を手にした。
   ①これまでの調達契約は、生産基地から一定量のLNGを購入し、日本に運ぶだけ、というのが一般的だった。
   ②今回の契約では、米国内の好きな場所で天然ガスを購入後、生産量を調整し、転売などトレーディングの材料として活用することもできる。今後は、上流ガス田との関係構築やパイプライン輸送を直接手がけることもできる。
    未知の領域が自分たちでできるようになり、日本にとっての調達のあり方が抜本的に変わる。【佐藤裕紀・中部電力燃料部長】

  (d)電力会社とガス会社が共同で動いた。条件がそろえば、短期間で実現可能なことを両者は証明した。
    市場を変えていくんだという意気込みのある人と巡り会えた。【佐藤部長】

 両者があけた風穴が業界全体に広がれば、今後日本のエネルギー価格は適正に低下していくかもしれない。 

 以上、森川潤(本誌)「脱原発に必須の天然ガス調達で中部電と大ガスがあけた風穴」(「週刊ダイヤモンド」2012年9月1日号)に拠る。
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