語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【社会保障】介護職の離職率を減らす試み

2011年10月04日 | 医療・保健・福祉・介護
 ここ数年、景気低迷による雇用情勢の悪化により、介護職から他の業界に転出する者が減り、離職率は減少傾向にあった。
 しかし、介護労働安定センター「各年版労働実態調査結果」によれば、訪問介護及び介護職の離職率が高くなった(21年度17.0%、22年度17.8%)。ちなみに、全産業平均離職率は、21年度16.4%、22年度14.5%だ。
 不況下、介護職の有効求人倍率1.0超、離職率上昇・・・・ということは、依然として介護職の雇用環境が悪いということになる。
 要因は、周知のとおり、業務量に比べて賃金が良くないことだ。「命」を扱い、夜勤のような変則業務でありながら、年収は平均300万円以下だ。労働対価として合わない、と感じている者が多いだろう。しかも、賃金上昇は、国や自治体の財政状況からして見こみ薄だ。

 そこで、賃金面とは別の視点で介護職の魅力を現場で浸透させる試みを行っているのが、「豊島区福祉事業所の会」だ。
 区内の介護保険、障害者福祉など福祉関係の有志がネットワークを広げ、「楽しい」「やりがい」のある環境にしていくことで、少しでも労働環境をよくしていこうとする。賃金水準は低くても、「働きやすい」「仲間がいて楽しい」「やりがいのある仕事ができる」といった条件が整えば、定着率が高まる、と介護事業所の経営者らは考える。
 福祉関係の仕事では、各事業所間のやりとりが頻繁だ。<例>訪問介護事業所、介護施設、福祉用具事業所、訪問看護ステーション、配色弁当屋など。
 他社とのネットワークが強化されれば、スムースに仕事が運ぶ。その一助となるべく「豊島区福祉事業所の会」が活動するのだ。
 具体的には、バーベキュー大会などのイベントだ。毎回50人近くが集まる。

 区役所の主管課が主催する事業所間の会もあるが、事務連絡の提供の場という側面が強く、親しい人間関係を築くに至らない。
 事業所自ら主催し、会を運営し、各イベントや研修テーマを自ら企画したほうが、働く人のニーズに応えられる。時にはサークル気分を味わえる場を提供できる。そして、仕事上の悩みを互いに語りある機会ともなる。同業者でなければ理解してもらえない悩みがあるのだ。
 事業所内人間関係の構築モデルは、産業界全体でも言われる。しかし、福祉業界では、事業所外のネットワークづくりも重要な視点なのだ。こうした問題意識が、福祉関連業界の経営者に求められている。

 以上、結城康博「介護職の離職率を減らす試み ~医療・介護はカネ次第!NO.153~」(「サンデー毎日」2011年10月9日増大号)に拠る。
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。