(1)東京電力は、除染費用の支払いを拒否している。
環境省は改めて支払いを求め、井上信治・環境副大臣のもとに出頭させた。しかし、石崎芳行・東電副社長は、「支払えない」と回答。
かくて、東電は、環境省から請求されている除染費用404億円のうち、300億円以上をいまだに「知らぬ顔の半兵衛」している【注】。
(2)これは、「債務不履行」だ。債務を履行しない、ということは、東電はすでに破綻していることを示すのではないか。
除染費用は東電が負担する、と定められている【放射性物質汚染対処特別措置法】。形式としては、国がいったん肩代わりした上で、東電に請求する流れとなっている。
東電の言い分が、国がいったん肩代わりした分が本当に除染費用なのか否かをチェックしなければならないから待ってくれ、というものならまだ理解できる。
ところが、石崎副社長は、「事務作業に時間を要しているうえ、経営状況が思わしくない」と支払い拒否理由を述べている。
そのくせ、企業としては破綻したくない、という。虫がよすぎる言い分だ。
(3)いま、国・地方自治体が予定している除染費用は3兆円。
これはすべて東電負担だ。が、東電が直ちに支払えば、東電は破綻する。
渡欧伝の今年3月末連結決算で、
(a)資産・・・・14兆9,891億円
(b)負債・・・・13兆8,513億円
(c)資産超過額・・・・1兆1,378億円
いま3兆円を負担すれば、即時、債務超過になる。
(4)除染費用は、今後徐々に発生していく。その間に電気料金値上げによって対処していくから破綻しない。・・・・これが東電のロジックだ。
しかし、除染費用は3兆円にとどまらない。
除染に伴う廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設に、1兆円。
さらに、生活再建に向けたインフラ整備まで考えると、幾らかかるか、予想はつかなくなる。
(5)除染費用に東電が悩んでいるのは明らかだ。東電は、放射性物質汚染対処特別措置法を改正して全額国費で対応してくれ、と自民党に要請している。
これまで東電にたかってきた自民党は、法改正に前向きだ。
これまでに計画された除染費用2兆円は東電負担とするが、「追加除染」や中間貯蔵施設は東電負担から国費投入に変更する、という。【10月31日に自民党東日本大震災復興加速本部がまとめた方針】
(6)(5)の自民党方針が通れば、東電負担は2兆円で済む。それを電気料金値上げでカバーするから破綻しない。・・・・という東電のロジックは、依然としてマユツバだ。
東電がこうしたロジックを振りまわすのは、「競争がない独占企業」であることを宣言しているのと同じだ。
普通の企業なら、料金値上げしたらライバルが現れて売上減・収益減になる。しかし、東電の場合は料金値上げがそのまま売上増・収益増につながる。・・・・こういう前提が、東電にはあるのだ。
(7)(6)の理屈を自民党政権が許せば、自民党政権のいわゆる電力自由化はマヤカシでしかない、ということを認めることになる。
今国会で電気事業法改正案が成立するだろう。同法による電力改革で、大手電力会社による地域独占体制を見直し、新規事業者の参入を促して、競争を通じて電気料金の値下げを目論む・・・・はずだ。
これが、東電を温存させるための「絵に描いた餅」になりそうだ。
東電を守るか。東電を速やかかに改組して、新規参入、電気料金値下げに導くか。どちらを選ぶか、重要な選択をする秋だ。
【注】11月15日、東電は、残っている負債のうち87億円の支払いに応じることを明らかにした。残る未払い分は250億円。【2013年11月16日付け朝日新聞】
□ドクターZ「電力自由化のまやかし ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2013年11月23日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【原発】電力自由化はまず関電から ~ドクターZは知っている~」
環境省は改めて支払いを求め、井上信治・環境副大臣のもとに出頭させた。しかし、石崎芳行・東電副社長は、「支払えない」と回答。
かくて、東電は、環境省から請求されている除染費用404億円のうち、300億円以上をいまだに「知らぬ顔の半兵衛」している【注】。
(2)これは、「債務不履行」だ。債務を履行しない、ということは、東電はすでに破綻していることを示すのではないか。
除染費用は東電が負担する、と定められている【放射性物質汚染対処特別措置法】。形式としては、国がいったん肩代わりした上で、東電に請求する流れとなっている。
東電の言い分が、国がいったん肩代わりした分が本当に除染費用なのか否かをチェックしなければならないから待ってくれ、というものならまだ理解できる。
ところが、石崎副社長は、「事務作業に時間を要しているうえ、経営状況が思わしくない」と支払い拒否理由を述べている。
そのくせ、企業としては破綻したくない、という。虫がよすぎる言い分だ。
(3)いま、国・地方自治体が予定している除染費用は3兆円。
これはすべて東電負担だ。が、東電が直ちに支払えば、東電は破綻する。
渡欧伝の今年3月末連結決算で、
(a)資産・・・・14兆9,891億円
(b)負債・・・・13兆8,513億円
(c)資産超過額・・・・1兆1,378億円
いま3兆円を負担すれば、即時、債務超過になる。
(4)除染費用は、今後徐々に発生していく。その間に電気料金値上げによって対処していくから破綻しない。・・・・これが東電のロジックだ。
しかし、除染費用は3兆円にとどまらない。
除染に伴う廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設に、1兆円。
さらに、生活再建に向けたインフラ整備まで考えると、幾らかかるか、予想はつかなくなる。
(5)除染費用に東電が悩んでいるのは明らかだ。東電は、放射性物質汚染対処特別措置法を改正して全額国費で対応してくれ、と自民党に要請している。
これまで東電にたかってきた自民党は、法改正に前向きだ。
これまでに計画された除染費用2兆円は東電負担とするが、「追加除染」や中間貯蔵施設は東電負担から国費投入に変更する、という。【10月31日に自民党東日本大震災復興加速本部がまとめた方針】
(6)(5)の自民党方針が通れば、東電負担は2兆円で済む。それを電気料金値上げでカバーするから破綻しない。・・・・という東電のロジックは、依然としてマユツバだ。
東電がこうしたロジックを振りまわすのは、「競争がない独占企業」であることを宣言しているのと同じだ。
普通の企業なら、料金値上げしたらライバルが現れて売上減・収益減になる。しかし、東電の場合は料金値上げがそのまま売上増・収益増につながる。・・・・こういう前提が、東電にはあるのだ。
(7)(6)の理屈を自民党政権が許せば、自民党政権のいわゆる電力自由化はマヤカシでしかない、ということを認めることになる。
今国会で電気事業法改正案が成立するだろう。同法による電力改革で、大手電力会社による地域独占体制を見直し、新規事業者の参入を促して、競争を通じて電気料金の値下げを目論む・・・・はずだ。
これが、東電を温存させるための「絵に描いた餅」になりそうだ。
東電を守るか。東電を速やかかに改組して、新規参入、電気料金値下げに導くか。どちらを選ぶか、重要な選択をする秋だ。
【注】11月15日、東電は、残っている負債のうち87億円の支払いに応じることを明らかにした。残る未払い分は250億円。【2013年11月16日付け朝日新聞】
□ドクターZ「電力自由化のまやかし ~ドクターZは知っている~」(「週刊現代」2013年11月23日号)
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【参考】
「【原発】電力自由化はまず関電から ~ドクターZは知っている~」