語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>非常時冷却システムを撤去していた勝俣恒久・東京電力会長

2011年06月09日 | 震災・原発事故
 なぜあれほど簡単にメルトダウンしてしまったのか。
 福島原発の設計時には、最後の砦となる冷却システムが存在していた(「蒸気凝縮系機能」)。
 ところが、事故のとき、そのシステムはなかった。
 蒸気凝縮系機能は、緊急時炉心冷却装置(ECCS)の一系統だ。通常の場合、原子炉を止めても、高圧炉心スプレーと低圧炉心スプレーなどの系統で冷却できる。しかし、これらの系統は電源がないと動かない。緊急時炉心冷却装置は、電源がなくても作動する。震災などの非常時にはいちばん大事な役割をはたすはずだった冷却システムだ。
 それが、肝心かなめの大地震の際、無かった。

 03年2月17日に開催された「第10回原子力安全委員会定例会議」で、削除/撤去が検討された。
 当時、蒸気凝縮系機能は問題を抱えていた。01年11月に浜岡原発(中電)で原子炉が停止する「レベル1級」の事故が発生したのだ。蒸気凝縮系で水素爆発が起こり(日本初の水素爆発)、配管が破断したことが原因だった。
 この事故後、中電は配管内に水素が溜まらないよう遮断弁を設置して対応した。しかし、02年から逐次、蒸気凝縮系の配管を撤去し、機能を削除した。遮断弁の保守管理に手間がかかるからだ、というのが中電の説明だ。
 中電に遅れて、東電も蒸気凝縮系機能の削除を申請した。申請者は、当時社長だった勝俣恒久だ。東電経営陣の事務系社長は、安全より収益を優先していたのだ。
 原子炉を止めても“残留熱”=崩壊熱は続くから、原理の中の水は沸騰する。→圧力が上がる。
 「それを外に導いて凝縮させて冷却するという蒸気凝縮系のシステムは必要なのです。もともと必要があるから付けた機能を削除するなんて通常では考えられないことです」。設備を増強して安全を期すなら分かるが、事故の恐れがあるから外すのは本末転倒だ。【小出裕章京大原子炉実験所助教】
 蒸気凝縮系を削除して問題はなかったか。
 東電担当者は答えた。一度も使ったことがなく、水位の制御が極めて難しい。浜岡原発で水素ガスが爆発した事故もあり、撤去した、と。

 日本の原子力行政は、保安院と原子力安全委員会のダブルチェック体制で運営されてきた。が、それはナアナアの“ぬるま湯チェック”にすぎなかった。
 経産省は、東電の主張を丸呑みし、削除は妥当と判断を下した。
 原子力安全委員会はもっと情けない。03年5月8日の安全委臨時会議では、削除を審議したが、さしたる議論はなく、質問はなかった。

 東電が福島第一原発から蒸気凝縮系機能を撤去しようとした03年は小泉政権時代だ。「電力会社と二人三脚で原発を指針してきたのは自民党政権そのものだった」
 撤去を認めた当時の経産大臣は、原発推進派で知られる平沼赳夫(旧・自民党、現・たちあがれ日本)だ。平沼は、勝俣と仲がよい。福島第一原発事故後も、再三、擁護する発言を繰り返している。事故の収束の見とおしがたたないのに、5月31日には「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」を発足させ、会長に就任している。

 以上、上杉隆+本誌取材班「福島原発内部文書入手! 非常時冷却システムを撤去した勝俣会長」(「週刊文春」2011年6月9日号)に拠る。
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