<佐藤 フロマートカがぎりぎりのところで神と出会うことを強調したのは、彼の出自がルター派であることに関係しています。
チェコのプロテスタントは、1411年から18年にかけて行われたコンスタンツ公会議において異端認定されたフス派の宗教改革の流れにあります。徹底的に弾圧されたため、ほとんどが追いやられて山岳地帯に住んでおり、底辺の農民たちに支持されていました。寛容令が出てから、ルター派とカルヴァン、ツヴィンクリの流れを汲む改革派に分かれましたが、根っこはフス派で、ここからヘルンフート派、モラヴィア兄弟団にもつながっていきます。
高橋 ヘルンフート派は、ノヴァーリスをはじめとするドイツ・ロマン主義に大きな影響を与えましたね。
佐藤 はい。ドイツの敬虔主義の根底には、ヘルンフート派の影響があります。
ルター派は、神が底の方に降りてきてそこから救い出してくれるというモチーフを重視します。神学用語では、キリストが人になり十字架上で死んだことを下降、そこから天に挙げられたことを高挙(こうきょ)といいますが、このレトリックを1920~30年代に使ったのがヒトラーでした。ドイツ民族は第一次世界大戦の敗戦で辛酸をなめ悲惨な状況にいる、だからこそドイツ人は神に選ばれた民族で世界を指導する力がある、という組み立てをしたのです。ルター派教会からはドイツ・キリスト者運動が生まれ、ユダヤ教の聖典である旧約聖書を排除するなど、ヒトラーの主張を神学的に理論化することに協力しました。
高橋 (中略)
佐藤 ドイツ民族やチェコ民族、あるいは日本民族といったように、個人ではなく、ある民族の深淵に救済が来るという形で組み立てると、ナチズムや選民思想のようなものが出てきてしまいます。>
□高橋巖×佐藤優『なぜ私たちは生きているのか シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話』(平凡社新書、2017)の「Ⅰ国家--一人ひとりの時間と空間の共同体」の「ぎりぎりのところで神と出会う」から一部引用
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【参考】
「【佐藤優】キリスト教は「絶対他力」の宗教 ~『なぜ私たちは生きているのか』~」
「【佐藤優】『なぜ私たちは生きているのか シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話』目次」
チェコのプロテスタントは、1411年から18年にかけて行われたコンスタンツ公会議において異端認定されたフス派の宗教改革の流れにあります。徹底的に弾圧されたため、ほとんどが追いやられて山岳地帯に住んでおり、底辺の農民たちに支持されていました。寛容令が出てから、ルター派とカルヴァン、ツヴィンクリの流れを汲む改革派に分かれましたが、根っこはフス派で、ここからヘルンフート派、モラヴィア兄弟団にもつながっていきます。
高橋 ヘルンフート派は、ノヴァーリスをはじめとするドイツ・ロマン主義に大きな影響を与えましたね。
佐藤 はい。ドイツの敬虔主義の根底には、ヘルンフート派の影響があります。
ルター派は、神が底の方に降りてきてそこから救い出してくれるというモチーフを重視します。神学用語では、キリストが人になり十字架上で死んだことを下降、そこから天に挙げられたことを高挙(こうきょ)といいますが、このレトリックを1920~30年代に使ったのがヒトラーでした。ドイツ民族は第一次世界大戦の敗戦で辛酸をなめ悲惨な状況にいる、だからこそドイツ人は神に選ばれた民族で世界を指導する力がある、という組み立てをしたのです。ルター派教会からはドイツ・キリスト者運動が生まれ、ユダヤ教の聖典である旧約聖書を排除するなど、ヒトラーの主張を神学的に理論化することに協力しました。
高橋 (中略)
佐藤 ドイツ民族やチェコ民族、あるいは日本民族といったように、個人ではなく、ある民族の深淵に救済が来るという形で組み立てると、ナチズムや選民思想のようなものが出てきてしまいます。>
□高橋巖×佐藤優『なぜ私たちは生きているのか シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話』(平凡社新書、2017)の「Ⅰ国家--一人ひとりの時間と空間の共同体」の「ぎりぎりのところで神と出会う」から一部引用
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【参考】
「【佐藤優】キリスト教は「絶対他力」の宗教 ~『なぜ私たちは生きているのか』~」
「【佐藤優】『なぜ私たちは生きているのか シュタイナー人智学とキリスト教神学の対話』目次」