語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】「放射能ガラクタ」を民家の庭に不法投棄 ~除染の闇~

2013年12月07日 | 震災・原発事故
 (1)除染事業には、今年度までに1兆3,000億円もの予算が組まれている。
 政府が、地元業者優先の政策を打ち出したおかげで、福島県内で除染事業を請け負う建設業者は、震災後、「除染特需」となった。
 福島県建設業協会とその傘下の7支部は、計488万円を「国民政治協会」(自民党の政治資金団体)へ献金した(2012年)。

 (2)最終的な除染費用は、5兆円超とも言われる。
 安倍晋三・首相は、11月11日、原発事故対策について「国がしっかり前に出る」と約束した。しかし、巨費をばらまいても事態は好転していない。
 除染作業への信頼は地元で揺らいでいる。
 今年1月4日、朝日新聞は「手抜き除染」をスクープした【注】。除染で取り除いた土や木の枝葉、洗浄で使った水を、作業員が周囲の川などに捨てている事実が報道され、その場面の写真も掲載されて、大問題になった。
 石原伸晃・環境相は「手抜き」発覚当初、登庁すらせず、対応が遅れた。再発防止について、国会で、こう答弁した。「(除染)のガイドラインに則らないようなことをやった場合、指名から外れるとか、(中略)厳正に対処するという形で臨ませていただきたい」
 しかし、環境省は厳正に対処していない。不正は今もはびこっている。

 (3)事件が起きた福島県田村市東部の小さな集落は、フクイチから20kmの距離に位置する。田村市には、避難指示解除準備区域(放射線量20mSv/年以下)に指定されている場所もある。住民は立ち入り可能だが、道行く人は少ない。市内には今、あちこちに黒い大きな「フレコンバッグ」(除染された土や枯葉を詰める袋)が大量に置かれている。くだんの集落のほとんどの人は仮設住宅に避難し、帰ってこない。車で15分ほど行けば帰還困難区域(放射線量50mSv/年)で、安心して住める環境ではない。
 その集落内の一戸建ての民家の庭に、家主に無断で、除染業者が放射能に汚染されたガラクタを埋めた。
 農薬や肥料が入っていた袋、ビニールハウスのビニールや金属製の支柱、針金、ケーブル、瀬戸物やガラスのかけら、木材など雑多なガラクタが、かなりの量、置かれていた。線量計をあてると、他の場所より明らかに高い数値を示した。特に、雨樋の下付近にたくさん積まれた木材の数値が高かった。
 除染作業には一定の作業期間が定められている。基準より短期間で終われば、請負業者の利益が大きくなる。ゴミなら運び出すトラックを調達しなければならないし、費用も時間もかかる。トラックは汚染される。そこで、現場背錦紗が「庭に穴を掘れ。そこに埋める」とパワーショベルのオペレーターに指示したのだ。縦3m、横2m、深さ6mほどの穴を掘り、ガラクタを投げ込み、上から土をかぶせ、作業員が足で踏み固めてきれいな砂で覆った。
 木材などは、時間がたつと腐食して微生物によって分解され、放射性物質は土中の岩石成分に吸着される。埋めた周囲に井戸や地下水脈があると、それらの地イブが流れ出す危険があある。【山田国広・京都精華大学教授】
 ちなみに、除染は、国の予算で、田村市が主体となって実施している。
 事件の現場は、内部告発に基づいて掘り起こした。田村市職員も立会した。県警の警察官もやってきた。「刑事事件を前提に、現状保存して、捜査します」

 【注】
手抜き除染、作業員証言 「詰め切れぬ葉は捨てて」指示
「手抜き除染」横行 回収した土、川に投棄
これで除染か、作業員証言
洗浄水垂れ流し、漂う無力感
画一的な手法、再考する時
手抜き除染、夏から苦情殺到 環境省、対応おざなり」 

□今西憲之(ジャーナリスト)+本誌取材班「「放射能ガラクタ」を民家の庭に不法投棄」(「週刊朝日」2013年12月13日号)
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