語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】増税するのはなぜ消費税なのか ~説明不足~

2011年12月03日 | 社会
 (1)消費税は、所得の少ない人にも課税する。また、所得の少ない人ほど負担の重い逆進的な税だ。税の一番大切な原則、「負担能力に応じた負担」に反する。
 (2)消費税は、中小・零細企業の経営を圧迫する。小規模事業者に厳しい税だ。その負担を消費者に転嫁できたかどうかにかかわりなく、付加価値があればそれに課税する。付加価値の主な構成要素は、人件費、金融費用、家賃・地代、収益だ。日本の中小企業は、およそ7割が赤字企業だから、付加価値から人件費と金融費用等を支払えば、後は何も残らない。その場合、法人税は非課税だが、消費税は課税される。だから消費税は、滞納が最も多い税となっている。消費税は、小規模事業者を潰す税だ。
 (3)実質消費を抑え、景気を悪化させる税だ。

 以上要するに、消費税は人々の暮らしに厳しい、大きな欠陥をもつ税だ。
 にもかかわらず、なぜ増税といえば消費税なのか。
 この問いに対して、消費税増税論者はきちんと答えていない。

 増税に賛成という意見はあっても、増やす税が消費税でなければならない理由を明確に説明した意見はない。
 政府の税制調査会・専門家委員会の「議論の中間的な整理」(200年6月22日)によれば、説明らしきものを出している。いわく、
 (a)勤労世代など特定の者への負担が集中せず、広く社会の構成員が負担を分かち合うことができるため、世代間の公平の確保に資する。
 (b)税収が景気動向に比較的左右されにくく安定的だ。
 (c)経済活動に与える歪みが小さく、経済成長を図る上で効率的だ。

 しかし、納得できるものではない。
 (a)←所得税は所得のある人すべてを対象とした税であって、勤労世代など特定の者への負担が集中した税ではない。年金世代も所得税を負担している。所得税と消費税の違いは、所得のある人が負担するのが所得税、所得のない人も負担するのが消費税だ。加えて、所得の多い人ほど多くを負担するのが所得税、所得の多寡に無関係に一律に負担するのが消費税だ。
 (b)←費税収は安定的、所得税収は景気の動向に左右される・・・・のは事実だ。しかし、所得税収の変動には対処可能だ。景気がよい時に膨らんだ税収の一定割合をプールしておき、景気が悪くなって税収が落ち込んだ時に使えばよい。
 (c)←そんなことはあるまい・・・・と言うにとどめておく。「中間的な整理」では論証も実証もされていない。よって、反論しようにもできない。

 増税するのはなぜ消費税増税なのか、という問いに説得的に答えてくれる者はいない。
 TPP参加問題でもそうだが、消費税増税について、国民に対する説明が足りない。

 以上、山家悠紀夫「野田内閣・増税案の何が問題か」(「世界」2011年12月号)に拠る。

 【参考】「【震災】法人税率引き下げより賃金引き上げ ~野田政権のヘンな減税~
     「【震災】本末転倒の「社会保障と税の一体改革」 ~野田政権のアバウトな頭脳~
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ナカムラ)
2011-12-03 19:10:11
今日、山本さんのところでお会いした中村です。
本日はありがとうございました。
さっそく、お邪魔させていただきました。
本当に幅広いジャンルで、しかもとても詳しく書かれていてびっくりです。
いろいろと勉強させていただきたいと思っております。
返信する
風紋 (歓迎)
2011-12-07 00:40:11
 ちょっとバタバタが続いてレスが遅れました。
 ようこそお越しくださいました。
 こちらも、貴サイトにお邪魔させていただきました。
返信する

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