(7)なぜ遺伝子組み換え(GM)食品を推進するのか。
米国で商品化されて20年、生物特許という新たな分野が確立され、種子が特許となった。
GMの種子は大きく分けると2種類ある。
(a)食べた虫が死ぬ農薬のような物質を細胞内に作る種子。
(b)除草剤でも枯れない耐性を持つ種子。
トウモロコシ、大豆、ナタネなどに応用されている、良い種子を皆で分かち合う、というのではなく、特許を持つ種子を囲い込み、農産物の市場を支配する戦略だ。
(8)GMで農薬がいらなくなる・・・・わけではない。
その逆だ。世界最大の種子会社となったモンサントが創った種子は、強力な除草剤「ラウンドアップ」と併用される。ラウンドアップを散布すると、GM植物だけが残る、という使い方だ。農薬と種子の両方を売るビジネスが世界で展開されている。今や種子市場において、次の上位3社で、GM種子は世界の53%を支配している。
モンサント(27%)
デュポン
シンジェンタ
(9)農薬メーカーが遺伝子組み換えの種子を作っているのだ。
生物特許は米国の食料戦略に組み込まれている。巨大化した種子産業は、豊富な資金で他国の種子会社を買収する。種子が寡占化されると、GM種子しか手に入らなくなる。
すでにインドの綿花で起きている。
種子で食料を支配し、食料で世界を支配する戦略だ。
(10)日本は大丈夫か。
心配だ。作付けが始まるかもしれない。日本で認可されたGM作物は、環境影響評価や食の安全評価も済ませている。住民や自治体が作付けに反対して止めているのが現状だ。
日本は米国に次ぐ世界第二の消費国だ。TPPで新たなルール作りが始まれば、始めたい業者に追い風になる。政府は、農業特区で株式会社による農業を認める構えだ。種子メーカーは日本に子会社を設け、作付けを始めることもできる。種子会社が米国に買収されることも起こる。
(11)世界の動きはどうだろうか。
GMの種子は、北米・南米が中心で、インドなどアジアの途上国に広がっている。欧州は、慎重な国が大勢だが、スペインや東欧で始まっている。
世界規模でせめぎ合いが起きていて、政府の姿勢が弱い日本は狙われている。
(12)日本は世界第二の消費国なのだ。
消費者は、意識しないままGM作物の小麦・大豆・ナタネなどを食べている。これらを加工した異性化糖や食用油・醤油など多くの食品に表示がない。
EUでは、原料に使われるGM食品は、すべて表示義務がある。日本は検出できる製品に限り、表示が認められている。豆腐に表示されても、醤油やサラダ油は表示できない。製品から検出できないからだ。
EUのような強い姿勢を示せないのは、米国に屈しているからだ。
(13)安全性はどうか。
種子会社は「危険性はない」と主張するが、カーン大学(フランス)が行った実験は衝撃を与えた。
従来は、3ヵ月までラットの変化を見るものだったが、同大学は長期にわたる実験を行った。4ヵ月を過ぎたラットに腫瘍ができることを確認した。GMの餌を摂るラットは、オスもメスも短命という結果も出ている。
カナダの調査では、妊婦の90%以上の血液に殺虫性タンパクが検出された。
(14)消費者にとってGM食品を「使っていません」という表示は大事な情報だ。
しかし、米国では「GM食品が悪いとの印象を消費者に与える」として、表示を非関税障壁と主張してきた。
TPPでは、現行制度を変えるとは書かれていない、と政府は言っている。
しかし、問題は日米二国間協議という抜け道だ。円滑な貿易を妨げる要因をなくしていくことが日米で合意され、「成果ある結論を出す」と約束した。貿易の技術的障害とか衛生植物検疫ルールとか、一般にはわかりにくい言葉が協定書に並んでいる。難解な言葉の裏に多国籍企業の意図が隠れている。
典型は、企業が政府を訴えることができるISDS条項だ。訴訟に持ち込むことだってできる。圧力をかけらえれると、自発的に米国の要求をのむ、というのがこれまでの日本の対応だった。
TPPで農産物が安くなる、とも言われているが、関税が少し下がっても末端価格はそれほど安くなるまい。
TPPで安くなるのは、私たちの命だ。
□安田節子(食政策センター・ビジョン21代表)/構成:山田厚史(ジャーナリスト、デモクラTV代表)「“食の安全”は不安だらけ! ~デモクラTV共同企画 TPPの闇を斬る 第5回~」(「週刊金曜日」2016年6月3日号)
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【参考】
「【TPP】の闇:食品添加物 ~不安だらけな“食の安全”~」
「【TPP】の闇 ~格差を拡大した米韓FTA~」
米国で商品化されて20年、生物特許という新たな分野が確立され、種子が特許となった。
GMの種子は大きく分けると2種類ある。
(a)食べた虫が死ぬ農薬のような物質を細胞内に作る種子。
(b)除草剤でも枯れない耐性を持つ種子。
トウモロコシ、大豆、ナタネなどに応用されている、良い種子を皆で分かち合う、というのではなく、特許を持つ種子を囲い込み、農産物の市場を支配する戦略だ。
(8)GMで農薬がいらなくなる・・・・わけではない。
その逆だ。世界最大の種子会社となったモンサントが創った種子は、強力な除草剤「ラウンドアップ」と併用される。ラウンドアップを散布すると、GM植物だけが残る、という使い方だ。農薬と種子の両方を売るビジネスが世界で展開されている。今や種子市場において、次の上位3社で、GM種子は世界の53%を支配している。
モンサント(27%)
デュポン
シンジェンタ
(9)農薬メーカーが遺伝子組み換えの種子を作っているのだ。
生物特許は米国の食料戦略に組み込まれている。巨大化した種子産業は、豊富な資金で他国の種子会社を買収する。種子が寡占化されると、GM種子しか手に入らなくなる。
すでにインドの綿花で起きている。
種子で食料を支配し、食料で世界を支配する戦略だ。
(10)日本は大丈夫か。
心配だ。作付けが始まるかもしれない。日本で認可されたGM作物は、環境影響評価や食の安全評価も済ませている。住民や自治体が作付けに反対して止めているのが現状だ。
日本は米国に次ぐ世界第二の消費国だ。TPPで新たなルール作りが始まれば、始めたい業者に追い風になる。政府は、農業特区で株式会社による農業を認める構えだ。種子メーカーは日本に子会社を設け、作付けを始めることもできる。種子会社が米国に買収されることも起こる。
(11)世界の動きはどうだろうか。
GMの種子は、北米・南米が中心で、インドなどアジアの途上国に広がっている。欧州は、慎重な国が大勢だが、スペインや東欧で始まっている。
世界規模でせめぎ合いが起きていて、政府の姿勢が弱い日本は狙われている。
(12)日本は世界第二の消費国なのだ。
消費者は、意識しないままGM作物の小麦・大豆・ナタネなどを食べている。これらを加工した異性化糖や食用油・醤油など多くの食品に表示がない。
EUでは、原料に使われるGM食品は、すべて表示義務がある。日本は検出できる製品に限り、表示が認められている。豆腐に表示されても、醤油やサラダ油は表示できない。製品から検出できないからだ。
EUのような強い姿勢を示せないのは、米国に屈しているからだ。
(13)安全性はどうか。
種子会社は「危険性はない」と主張するが、カーン大学(フランス)が行った実験は衝撃を与えた。
従来は、3ヵ月までラットの変化を見るものだったが、同大学は長期にわたる実験を行った。4ヵ月を過ぎたラットに腫瘍ができることを確認した。GMの餌を摂るラットは、オスもメスも短命という結果も出ている。
カナダの調査では、妊婦の90%以上の血液に殺虫性タンパクが検出された。
(14)消費者にとってGM食品を「使っていません」という表示は大事な情報だ。
しかし、米国では「GM食品が悪いとの印象を消費者に与える」として、表示を非関税障壁と主張してきた。
TPPでは、現行制度を変えるとは書かれていない、と政府は言っている。
しかし、問題は日米二国間協議という抜け道だ。円滑な貿易を妨げる要因をなくしていくことが日米で合意され、「成果ある結論を出す」と約束した。貿易の技術的障害とか衛生植物検疫ルールとか、一般にはわかりにくい言葉が協定書に並んでいる。難解な言葉の裏に多国籍企業の意図が隠れている。
典型は、企業が政府を訴えることができるISDS条項だ。訴訟に持ち込むことだってできる。圧力をかけらえれると、自発的に米国の要求をのむ、というのがこれまでの日本の対応だった。
TPPで農産物が安くなる、とも言われているが、関税が少し下がっても末端価格はそれほど安くなるまい。
TPPで安くなるのは、私たちの命だ。
□安田節子(食政策センター・ビジョン21代表)/構成:山田厚史(ジャーナリスト、デモクラTV代表)「“食の安全”は不安だらけ! ~デモクラTV共同企画 TPPの闇を斬る 第5回~」(「週刊金曜日」2016年6月3日号)
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【参考】
「【TPP】の闇:食品添加物 ~不安だらけな“食の安全”~」
「【TPP】の闇 ~格差を拡大した米韓FTA~」