ブラスによるミルグラムの評伝は、じつに面白い。邦訳で5,200円+税という高めの価格なのだが、一読する価値があると思う。
第5、第6章に「アイヒマン実験」のようすが記されているが、そのうちに実験に「ノー」と対処した者の分析がある。
ブラスが伝えるところの、被験者(X)が権威者の手中に陥らないために役立つ要因は二つ。
第一に、電気ショックを与える相手(学習役となった別の被験者=Y)に共感する能力である。XはYの立場に立って苦痛を感じたのだ。
第二に、Xが発した疑問や反対に対して実験者が答えなかった、という点だ(とブラスはいうが、より正確には、この点をXが問題視したということだ)。実験者は、被験者Xの質問を無視し、ぶっきらぼうに実験を続けろ、というだけで、Xを安心させることも自分を正当化することもしなかった。その結果、Xは実験者に見切りをつけたのである。
これを言い換えれば、仕事の対象者への共感、指示事項に承伏できない場合には従わないこと、ということになる。
後者は、デカルトの「判断をさし控える」方法に通じるように思われる。
【参考】トーマス・ブラス(野島久雄/藍澤美紀訳)『服従実験とは何だったのか -スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産-』(誠信書房、2008)
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第5、第6章に「アイヒマン実験」のようすが記されているが、そのうちに実験に「ノー」と対処した者の分析がある。
ブラスが伝えるところの、被験者(X)が権威者の手中に陥らないために役立つ要因は二つ。
第一に、電気ショックを与える相手(学習役となった別の被験者=Y)に共感する能力である。XはYの立場に立って苦痛を感じたのだ。
第二に、Xが発した疑問や反対に対して実験者が答えなかった、という点だ(とブラスはいうが、より正確には、この点をXが問題視したということだ)。実験者は、被験者Xの質問を無視し、ぶっきらぼうに実験を続けろ、というだけで、Xを安心させることも自分を正当化することもしなかった。その結果、Xは実験者に見切りをつけたのである。
これを言い換えれば、仕事の対象者への共感、指示事項に承伏できない場合には従わないこと、ということになる。
後者は、デカルトの「判断をさし控える」方法に通じるように思われる。
【参考】トーマス・ブラス(野島久雄/藍澤美紀訳)『服従実験とは何だったのか -スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産-』(誠信書房、2008)
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