語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】中毒が後を絶たない ~肉の生食~

2016年08月14日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)2016年のゴールデンウィークの最中、「肉フェス2016年春」の2会場(①東京お台場、②福岡市舞鶴公園、主催は同じ会社)で、鶏肉が原因と推定される食中毒が発生した。
 ①では、患者数49人。東京都は、原因食品を「ハーブチキンささみ寿司」と断定している。
 ②では、108人が腹痛や下痢などの症状を訴えた。原因食品は「ハーブチキンささみ寿司」か「鶏むね肉たたき寿司」で、加熱不足が原因と推定される。
 ①でも②でも、複数の従業員や客からカンピロバクターが検出された。

 (2)日本の食中毒の原因物質で、突出しているのが①ノロウイルスと②カンピロバクターだ。
 ①の感染ルートはさまざまだが、②の場合は食肉が多い。最近は、鶏肉を刺身やタタキのように、生や生焼けで提供する店が増えている。これは、食肉の生食ブームの影響が大きい。食は、いつのまにか「やわらかいものがおいしい」という風潮になってしまった。食肉のやわらかさを突き詰めると「生食」に至る。
 家庭では鶏肉を生では食べない消費者も、外食だと平気で食べてしまう人がいる。だが、家庭でも外食でも、食中毒の危険性は同じだ。
 牛肉や豚肉は法律で生食が規制・禁止されているが、鶏肉には規制がない。
 2015年、豚肉の生食を禁止した際、「鶏肉の生食も禁止すべきではないか」という意見はあった。しかし、②の食中毒はここ10年以上死者がなく、重症化した例もほとんどないこと、さらに食を規制しすぎることへの批判も強く、見送られた、という経緯がある。

 (3)鶏肉の生や生焼けを食べるのは自己責任ということだが、食肉の生食が好きな消費者が、その危険性を十分理解しているかどうか、非常に疑問だ。
 2016年6月、豚のレバーを生で提供したとして、神奈川県横須賀市の居酒屋経営者が、食品衛生法違反の容疑で逮捕された。水曜日限定の裏メニューとして提供されていたもので、店も客も、法律で禁止されている食品だと認識していたことになる。

 (4)フグのように生死に関わることがない、と思っているかもしれないが、食中毒を軽視しない方がいい。食中毒で亡くなるのは高齢者や小さい子どもがほとんどだが、青年層・壮年層が重篤にならないわけではない。
 2011年の焼き肉チェーン店の集団食中毒事件では、5人の死者を出している。ユッケに付着していたと推定される腸管出血性大腸菌O157が原因だったが、14歳の男子中学生と43歳の女性が亡くなった。

 (5)7、8月の暑い時期も食中毒は発生する。この時期、夏祭りや海辺のバーベキューなど、人が集まる機会も多い。それだけに集団食中毒も発生しやすい。食品安全委員会も、バーベキューやピクニックでの食中毒に注意するよう警告している。
 2014年7月26日、静岡市の花火大会で、患者数510人の集団食中毒事件があった。原因食品は、「冷やしキュウリ(浅漬け)」、原因物質は腸管出血性大腸菌O157だった。
 夏休みは、子どもと一緒に屋外で飲食する機会が多い。食肉の生焼けや浅漬けは、子どもには食べさせないことだ。

□垣屋達哉「後を絶たない食肉の食中毒 これからの季節、本当に注意して」(「週刊金曜日」2016年8月5日号)
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