語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【電力】会社が再生エネ買い取りに消極的な本当の理由

2014年12月10日 | 社会
 電力各社が進めてきた再生エネルギー買い取りが問題化している。
 再稼働するからか。
 行き当たりばったり政策の失敗か。
 わけても鳴り物入りで進めてきた太陽光発電事業が、頓挫している。電力会社が買い取り契約を「中断」するケースが急増しているのだ。

 太陽光発電買い取り制度の始まりは、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」に基づく仕組みだ。地球温暖化対策における代替エネルギーの育成を目的とし、2003年に施行された。細々とした制度で、一般家庭の屋根に太陽光パネルを取り付け、電力会社がその発電力の一部を買い取ってきた。

 その法律を、2012年7月1日、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」として大幅に衣替えした。政府が太陽光発電の育成を打ち出し、原則として電力会社の全量買い取りを義務化した。
 新制度に基づいて太陽光発電事業者が経産大臣の認可を受け、電力会社に「特定契約」(電力の買い取り)を申請する。特段の事情がないかぎり、電力会社は契約を拒否できない。加えて、買い取り価格は申請時から10~20年間固定される。
 かくして、いち早く事業参入を決めたソフトバンクを始め、一挙に太陽光発電事業の参入が増えたのだ。

 制度発足の2012年当初の太陽光発電の買い取り価格は、10kW/時以上発電する業者で税抜き40円/kWを20年間固定、それ以下の規模の業者だと42円/kWを10年間固定と決まった。
 価格については、専門家から高すぎるという意見が出たが、孫正義・ソフトバンク社長が政府に主張した「最低でも税抜き40円」で押し切った格好だ。

 しかし、やはり太陽光発電はあまりに高コストというほかはない。
 経産省発表の電力コストによれば、廃炉費用まで入れた原子力発電で1kW/時当たり8.9円、事故対策などを含めると十数円にはねあがるが、それでも太陽光発電よりかなり安い。

 太陽光発電の買い取り価格は毎年経産省が見直すことになっている。さすがに年々値下げされてきた。今年は、税抜き32~37円となっている。
 割高なコスト分は電気料金に加算される。火力発電の石油燃料高騰もあり、結局、割をくうのは一般の庶民だ。

 買えば買うほど赤字となるのが、今の太陽光発電の買い取り制度だ。
 割高なコスト分は電気料金に加算されるとはいえ、電力会社も電気料金を上げ続けるわけにはいかない。
 ここに来て、陽光発電の買い取りに待ったをかけたわけだ。

 太陽光発電の買い取り制度について、政府は表向き、再生エネルギー事業の普及という錦の旗を掲げてきた。だが、肝心の事業が行き詰まるのは、目に見えていた。
 なぜ政府は無茶な制度を進めてきたのか。
 とどのつまり、やるだけやったけれどダメだったから原発の再稼働しかない・・・・というアリバイ作りか。
 あるいは新規参入業者の声に押し切られ、高コストで見切り発車してしまったのか。
 電気料金の値上げや事業が頓挫している業者を尻目に、我先に太陽光発電事業を展開したソフトバンクなどは濡れ手で粟の構図になっている。  

□森功「電力会社が再生エネ買い取りに消極的な本当の理由 ~ジャーナリストの目 第229回~」(「週刊現代」2014年11月29日号)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【食】来年4月から始まる健... | トップ | 【議会】が農薬使用の指導強... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

社会」カテゴリの最新記事