語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【原発】玄海1号機の危険性 ~高い脆性遷移温度~

2012年11月06日 | 震災・原発事故
 (1)保安院は意見聴取会を5つぐらい作ったが、そのうちに「高経年化意見聴取会」がある。高経年化。老朽化とは言わない。
 その高経年化意見聴取会にはテーマが幾つかあり、その一つが九州電力の玄海1号機。脆性遷移温度が問題なのだ。金属は中性子があたっていくと、どんどん材質が悪くなる。バリンと割れる温度、それが玄海1号機は98℃で起こる。当初はマイナス16℃だった。怖い。この情報が3・11の前に保安院に行ったが、保安院はまったくそれを知らなかった。こんなことで日本の原発をちゃんと管理できるはずはない。
 玄海1号機は1975年に運転を開始した。2005年に30年間の運転を経て、そこで10年間の運転延長を認められた。だから保安院もいろいろ調べたが、延長後の10年間がどうなっているかは分からない仕組みになっている。九電は何も説明する必要はないし、保安院も訊かない。だから、まったく知らなかった。
 玄海1号機の脆性遷移温度は、前回の測定では56℃だった。42℃も上がっていた。しかも理由がよく分からない。
 脆性破壊は非常に怖い。タイタニック号が沈没したのも、これが原因だった。タイタニック号の鋼は材料が悪く、27℃が脆性遷移温度だった。だから、それより低い冷たい海で冷えている状態で氷山にぶつかったため、その力で割れてしまった。
 原子炉の場合も、300℃で運転中に急にポンプが壊れたり配管が破れて水がなくなった場合、メルトダウンを避けるため冷水を入れる。ここで脆性遷移温度が高い時、冷水を入れたため圧力容器が割れてしまう。必ず割れるとは言えないが、状況によって割れる。だから、非常に危険だ。

 (2)保安院は、一応計算して安全だ、と言い張るが、その計算方法は絶対ではない。
 3・11では予測していなかった事態が起こったが、保安院は計算方法をシビアにするとかの変更を全くしていない。
 今までよしとしてきた考え方に問題がある。脆性遷移温度の予測式が「間違っている」と指摘しても、保安院は「将来の研究課題」にしてしまう。前回の測定から42℃も高くなるようなものは、もう予測から外れているわけだが、そんな状態でも将来の研究課題にしてしまう。
 玄海1号機、関西電力の高浜1号機、美浜1号機と2号機は非常に危険度が高い。ハッキリするまで止めるべきだ。

 (3)原発に係る問題は3つ。
  (a)地震・津波・・・・そもそも日本に原発を建てられるのか。
  (b)設計が悪い原発・・・・<例>マークⅠ型。
  (c)古い原発・・・・高経年化意見聴取会のテーマの一つだった。

 (4)古い原発とは、1970年代の原発。材料にも作り方にも問題がある。一応検査してOKが出ているが、全部を検査しきれていない。代表部位だけ選んで検査している。
 老朽化で今一番問題にしているのは、照射脆化というか、金属が脆くなっている問題だ。
 <例>配管は削られていく(「減肉」)。危ない箇所はある程度見当がつくので厳重に管理しているが、美浜3号機では見落としがあって、配管が破裂して作業員が何人か亡くなった(2000年に入ってから)。
 減肉はすごく怖い。減肉すると一応取り替える。美浜3号機の場合、全体の配管の半分以上を取り替えている。そういう状態は、すごく怖い。最初は炭素鋼で作っていたものが減肉したとき、ステンレスか何かに取り替えている。すると、またステンレスと炭素鋼を溶接して作ることになる。1個取り替えると2ヵ所溶接箇所ができる。溶接部位は、ひび割れが起こりやすい。そもそも、半分以上取り替えるような状況で、まだ運転するのか?

 以上、井野博満(東京大学名誉教授)「1970年代に作られた原発はすべて廃炉にすべき」(「SIGHT」2012年秋号)に拠る。

 【参考】
【原発】意見聴取会における結論誘導の手口~保安院~
【原発】再稼働の安全は誰が判断するのか ~専門家の偏向~
【震災】原発>ストレステストを再稼働に結びつけるな ~その理由~
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