(1)チェルノブイリ4号機で起きた核暴走、メルトダウン事故は、史上最悪の原発事故となった。低出力での試験中に核暴走をお越し、さらに数秒後に二度目の大爆発を起こした。それにより炉心の放射能の数%から数十%が建屋を突き破って爆発的に外部に放出された。その後10日間にわたり炉内で火災が続き、残っていた大量の放射能が黒煙とともに舞い上がった。放射能の大気への放出量は、ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90の3核種のみで、ヨウ素131等量【注】で540万テラベクレルと評価されている。
事故で放出された放射能は欧州全土を覆い尽くし、現地の人々の食生活を初めとする生活全般に大きな打撃を与えた。さらに、食品の放射能汚染により、日本人を含む全世界の人々の不安をかき立てた。
(2)チェルノブイリ事故はソ連製の欠陥原子炉とソ連における原子力安全文化の欠如がもたらしたもので、自国ではほとんど起こり得ない・・・・と、欧米や日本の原子力関係者は、口を揃えて力説した。
しかし、現実に歴史上チェルノブイリ事故に次ぐ巨大事故が、日本の福島で起こってしまった。
(3)福島原発事故は、世界の原発に大きな影響を及ぼしている。
殊にドイツでは、2002年の原子力法で定めた脱原発スケジュールを大幅に加速する決定が下された。
スイスでも、原発新増設モラトリアム決定が脱原発決定へと進化した。
イタリアでは、原発再稼働の企てが国民投票によって阻止された。
他の原発保有国では、2012年4月現在、まだ劇的な変化はまだ起きていないが、福島原発事故の影響がこの程度にとどまるとは考えにくい。なぜなら、この事故を「特殊な国の、特殊な原子炉で起きた、特殊な事故」という対岸の火事のような事件として片づけることができないからだ。
(4)福島原発事故は、、
(a)チェルノブイリ級の超苛酷事故は、世界で何度も起こり得るノーマル・アクシデントであることが立証された。そして、実際に事故が起こった場合には破滅的な打撃を社会に与えるということを身近に実証した。
(b)しかも、それが先進国でも起こり得ることが立証された。
(c)さらに、世界標準炉である軽水炉が超苛酷事故に陥った、ということは、世界のどこでも超苛酷事故が起こり得ることを意味する。世界の指導者や市民は、それについて無関心を続けることはできない。
(d)原発が、ある意味で核兵器に比肩する危険物であるという認識は、じわじわと世界に浸透していくであろう。
(e)ゆえに、福島原発事故が世界の原子力開発利用に大きな打撃を与えることは必定だ。その打撃はボディブローのように、時間の経過とともに効いてくる可能性が高い。
【注】放射性核種の「毒性」が同じ1Bqでも異なることを考慮した量。<例>セシウム137の1Bqはヨウ素131の40bqに相当する。プルトニウム239の1Bqはヨウ素131の10,000Bqに相当する。
以上、注を含めて吉岡斉『脱原子力国家への道』(岩波書店、2012)の第3章「福島原発事故の原因と教訓」に拠る。
【参考】
「【原発】『脱原子力国家への道』」
「【原発】日本政府はなぜ脱原発に舵を切れないか ~日米原子力同盟~」
「【原発】福島原発事故による被害の概要」
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事故で放出された放射能は欧州全土を覆い尽くし、現地の人々の食生活を初めとする生活全般に大きな打撃を与えた。さらに、食品の放射能汚染により、日本人を含む全世界の人々の不安をかき立てた。
(2)チェルノブイリ事故はソ連製の欠陥原子炉とソ連における原子力安全文化の欠如がもたらしたもので、自国ではほとんど起こり得ない・・・・と、欧米や日本の原子力関係者は、口を揃えて力説した。
しかし、現実に歴史上チェルノブイリ事故に次ぐ巨大事故が、日本の福島で起こってしまった。
(3)福島原発事故は、世界の原発に大きな影響を及ぼしている。
殊にドイツでは、2002年の原子力法で定めた脱原発スケジュールを大幅に加速する決定が下された。
スイスでも、原発新増設モラトリアム決定が脱原発決定へと進化した。
イタリアでは、原発再稼働の企てが国民投票によって阻止された。
他の原発保有国では、2012年4月現在、まだ劇的な変化はまだ起きていないが、福島原発事故の影響がこの程度にとどまるとは考えにくい。なぜなら、この事故を「特殊な国の、特殊な原子炉で起きた、特殊な事故」という対岸の火事のような事件として片づけることができないからだ。
(4)福島原発事故は、、
(a)チェルノブイリ級の超苛酷事故は、世界で何度も起こり得るノーマル・アクシデントであることが立証された。そして、実際に事故が起こった場合には破滅的な打撃を社会に与えるということを身近に実証した。
(b)しかも、それが先進国でも起こり得ることが立証された。
(c)さらに、世界標準炉である軽水炉が超苛酷事故に陥った、ということは、世界のどこでも超苛酷事故が起こり得ることを意味する。世界の指導者や市民は、それについて無関心を続けることはできない。
(d)原発が、ある意味で核兵器に比肩する危険物であるという認識は、じわじわと世界に浸透していくであろう。
(e)ゆえに、福島原発事故が世界の原子力開発利用に大きな打撃を与えることは必定だ。その打撃はボディブローのように、時間の経過とともに効いてくる可能性が高い。
【注】放射性核種の「毒性」が同じ1Bqでも異なることを考慮した量。<例>セシウム137の1Bqはヨウ素131の40bqに相当する。プルトニウム239の1Bqはヨウ素131の10,000Bqに相当する。
以上、注を含めて吉岡斉『脱原子力国家への道』(岩波書店、2012)の第3章「福島原発事故の原因と教訓」に拠る。
【参考】
「【原発】『脱原子力国家への道』」
「【原発】日本政府はなぜ脱原発に舵を切れないか ~日米原子力同盟~」
「【原発】福島原発事故による被害の概要」
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