「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの随想:新国立競技場の建設計画に異議あり

2015年07月15日 | 時事随想



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 「2020年東京五輪・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の整備費が膨らんだことに批判が集まる中、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は7日、東京都内で有識者会議を開き、総工費2520億円となる整備計画案を了承。JSCは特徴的な2本の巨大アーチのデザインを維持した難工事に伴い、基本設計時より整備費が765億円増えたことを明らかにした。完成後50年間の大規模改修費が1000億円以上になる試算も判明し、JSCの見通しの甘さが浮き彫りとなった。」・・・産経新聞より抜粋

 さまざまな問題を抱えた新国立競技場の建設が、国民の多数の意志に反してスタートしました。今日は、その問題点を考えてみたいと思います。

 そもそも事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)とは、いかなる組織なのでしょう。この組織の予算をチェックしてみれば、おおよそどういった組織か判断できます。

 情報公開されている平成27年度予算の収入が、183,917百万円となっています。収入の内訳は、国からの各種交付金の他、スポーツ振興投票事業収入が109,676百万円となっています。

 格好良く「投票事業」などど呼んでいますが、スポーツ振興くじ(toto)などを取り仕切っている組織です。簡単に言えば、公的な賭博の胴元として、その収益を独占している独立行政法人です。厳しい言い方をしているようですが、それが現実でしょう。

 以前このブログで取り上げた、審議会,協議会,調査会, 専門委員会などの名称がつけられた機関は、行政機関に付属的に設置され、行政庁からの諮問に応じて意見を答申する権限を持ちます。ただし、行政が指名したメンバーが行政の言いなりとなる人材なら、これらの機関は、お墨付きを得る茶番劇を演じているだけです。

 今回行われた有識者会議は、JSCの河野一郎理事長の私的諮問機関です。しかし、そこには関係団体の幹部らがそろっており、実質的には最終的な意思決定機関となっているようです。今回のように安易に事を進めて、将来巨額な負担を国民が強いられる事態が生じたら、決定の役割を果たした有識者会議のメンバーに、損害賠償を請求しても良いほど、怠慢な意思決定でした。

 文部科学省が管轄し、天下り先でもある日本スポーツ振興センター(JSC)は、賭博の胴元として巨額資金が動く、利権の巣窟となっているようです。元首相経験者などの政治家を中心に、影響力を行使して、巨額資金の差配に関与する動きが気になります。

 各種調査で国民の多くが納得していないことが判明している、総工費が巨額に膨れ上がった新国立競技場の着工が、なぜ簡単に了承されたのか疑問です。この箱物の公共事業に関わった人たちは、もらうべきものを、すでにもらってしまっているが故に、今さら方針を変更できないのかと、勘ぐりたくなる所業です。

 管官房長官は、「大会招致のプレゼンで世界に発信したデザインを安易に変更する事は国際的な信用を失墜しかねない。」と述べました。これは、とても問題ある発言です。国民は安易に反対しているのではなく、熟慮して変更すべきだと主張しているのです。このことさえ理解していないこの発言は、多くの国民をないがしろにした発言です。金満体質のオリンピックを本来の姿に戻し、省エネで費用のかからないオリンピックの実施を目指すことが、逆に日本の信用を勝ち取る道であることを、全く理解していません。

 また安部首相は、「計画を見直した場合は、19年のラグビー・ワールドカップに間に合わなくなり、20年五輪にも間に合わない可能性が高いとの報告を受けている」と述べて、実施設計通りに進める考えを示しました。

 たった一つや二つのイベントに、これだけの巨額な器が必要なのか・・・それは否です。この二つのイベントの後、この施設が半世紀に渡り国民に有効に利用され、収益と維持管理の支出に帳尻が合うことが重要です。これ以上、負の遺産を子孫に残すべきではありません。

 このような二人の発言を勘案すると、信じられないほど次元の低い判断をしていることが分かります。日本政府の債務残高が天文学的な額に膨れ上がり、世界的に見ても危険な状況にあるにも関わらず、一つの箱物建設に巨額な費用がかかることが判明した後も、ズルズルと計画を続けることが、逆に日本の信用を失墜させる要因となるでしょう。

 日本を代表する建築家・槇文彦を中心とするグループが、繰り返し問題点を指摘し、対応策を提案しています。けれども、何故かまともに聞く耳を持たない日本スポーツ振興センターの河野一郎理事長及びその取り巻きは、いったい何を考えているのでしょう。

 学生時代、槇文彦の代表作である代官山集合住宅を見に行ったことがありました。また、文化学院が主催した黒川紀章・菊竹清訓・槇文彦・磯崎新など、売れっ子建築家の講演を聴きに出かけたこともありました。その中で健在な二名・槇文彦・磯崎新が、この建築物に対し問題点を指摘しています。

 今回の新国立競技場のコンペにおいて、審査委員長を務めた建築家・安藤忠雄は、これだけ規模の大きい建築物の評価には、不向きな人材だったように思います。今回の最終的な決定が出る有識者会議には、何故か出席していません。

 民意を顧みず、極めて問題ある事業を独断専行しようとした責任者を更迭し、新国立競技場建設を、白紙に戻すことは、今でも可能ですし大切なことです。原発再稼働問題も、巨額新国立競技場建設も、安全保障関連法案さえも、民意を無視して強行する安倍政権は、極めて危険な道を歩んでいるように感じます。こんな時こそ、国民は冷静に状況を判断して、民意を反映させるよう行動すべきでしょう。


(追記)
 
このブログを綴っている時に、新国立競技場について、計画の見直しの検討に入ったというニュースがありました。これだけ強い逆風の中で、政府も民意を無視できない状況となったからです。しかし、これから利権絡みの者たちの妨害による紆余曲折が予想され、主権者である国民は、しっかりと動向を見守っていく必要があるでしょう。

コメント (2)
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