ほさか邦夫の日記帳

前志木市長、地方自立政策研究所理事長

                 ~地方創生の具体策~

2016-03-15 15:44:53 | Weblog
人口減少が加速する市町村の創生策“ふる里が消える”-①「消えるかも知れない北海道夕張市をどうするか」
 

 地方創生が大きな課題となっているが、あたかも国が主役で地方が追随しているように見える。本末転倒の見本である。

 地方の再生・創生策は大きく2つに分かれる。人口の減少が加速する過疎的な市町村(基礎的自治体)と人口減少は少ないが2025年に向って後期高齢者が激増する都市部における市町村である。今回は最悪の事例である「北海道夕張市」を代表事例に取り上げ、再生策を考えたい。

 御承知のように北海道夕張市は10年前の2006年に破綻したが、当時の借入残高が349億、15年度の借入残高は259億(15年度末の見込み)で10年間で90億円を返済している。しかも高い利息を払い続けている。一見すると成功のようだが、私から見ると、当事者には悪いが“大失敗”と言わざるを得ない。最大の理由は膨大な人口の減少である。

 破綻した10年前には13,189人から2016年1月には9,031人となり4,158人大幅に人口が減ってしまった。32%という途方もない減少率である。しかもこの人口減少は出生率の低下によってもたらされたものではなく、地域から人口が流出したことが大きな要因となっている。税収も大幅に減少している。再生失敗の見事なまでの結果である。私は「役所が残って住民が消える危険性がある」と10年前に予告したが不幸なことに見事に的中してしまった。何故だろうか。

 最大の原因は従来の行政運営スタイルを踏襲したまま、巨額の借金を返済しているため、教育などの自主的公的サービスは何も出来ない。住民は居住に必要な必要最小限度のサービスだけに甘んじなければならない。しかもその公共サービスの負担は著しく重い。これでは将来のある若い住民は残るに残れない状態になる。高齢者だけが残り、福祉費の比率が増大する。特に教育サービスが減少すると子供の将来を考える保護者は、ふる里を離れたくない気持ちがあっても、働く場所もある大都市・札幌に移り住むことになる。

 どうすればよいのか。特効薬はあるのか。ある、ある!

 第1は従来の行政運営システムを抜本的に改める。例えば役所を中心とした21世紀型村落協同体への転換である。私は志木市長の時、「現在の役所の仕事は75%が市民化(外部化)できる」との結論を職員に出してもらい、人口の減少が到来する20年後を目標とした「地方自立計画」を立案した。

 夕張市の人件費は約11億円(H27年度予算)で前年より15.2%も増加している。物件費、維持修繕、建設事業費の合計は21億円、人件費を合わせると32億円の再生原資がある。この原資を市民全体の事業費とする。自治体丸ごとの市民化である。

 第2は返済期間の延長と6億円近い借入金利息の減額である。国がいくら返済を急いでも夕張市が消えてしまっては何にもならない。さらに公的資金の利息は高すぎる。現在の利率はマイナス金利であり、国と交渉して現在の妥当な利率に変える。

 第3は子供の将来に対する新たな投資である。教育サービスや保育などは大幅に引き上げる。大都市から環境のよい夕張市への流入を図るなど、積極的な方策が重要である。このままではジリ貧となり、役所が残って市民が消えることが現実化する。

 自治体は「弱者と強者の共生」を哲学とした「非営利独占的サービス事業体」である。議会も市民総会に変え、住民には「市民委員会」を設置して参加をしてもらう。傾いた事業体を再生するためには、従来のシステム・手法を大転換しなければならない。市民が施策決定を含め、市役所の運営や様々な事業にも全て参加するシステムを構築する。市長はシティマネージャーに徹することだ。

 新たな「21世紀型村落協同体」を夕張市に誕生させることが再生と創生に向けての唯一の方策ではないだろうか。自治体は市民がつくったことを忘れてはならない。

(以下次号)

穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版
                                  (1,470円)

―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)

何ひとつ進まない我が国の抜本的改革~国と地方自治の関係を見直す~

2016-01-01 09:01:01 | Weblog
  新年あけましておめでとう御座います。本年も宜しくお願い致します。

扨、本年度の予算案が96.7兆円に決定しましたが皆さんはどんな感想をお持ちでしょうか。私は強い危機感を持っています。

  税収を過去最大の57兆6千億円と見込みながら、財政健全化は今回も先送りされています。ギリシャを超える財政悪化によって我が国の格付けは一段と格下げされているのにもかかわらず、何の危機感も感じることができません。

  新規国債の発行額は34兆4300億円で予算の三分の一強を借入金に頼り、国債の残高(長期借入金)は今年度末より26兆円も増加し、838兆円になり、地方の借入金を加えると1000兆円を遥かに超えることになります。

  仮に、税収の伸びが5.6%増以下に留まると大変です。さらに借金が増加することになります。特に本年度の予算は社会保障費を抑制しながら、防衛費や土地改良予算などの伸びが目立つ、弱者に厳しい予算とも言えるのではないでしょうか。

  一方の地方自治体は一部に庁舎の建設が予定されるなど財政的に見ると三極化傾向が見受けられます。

  類型化すると第一群は高い税収に支えられる大都市、第二群は地方交付税など、国の高い支援によって支えられる過疎地。いずれも借入金の多いのが特長です。第三群は財政力指数(一般的収入÷一般的支出)が比較的高いものの、「1」前後の小都市で、借入金もままならない厳しい財政運営を余儀なくされている自治体です。

  しかし、その三群はそれぞれの財政事情が異なるにも関わらず、共に財源の不足を共同で訴え、地方交付税の増額を要求しています。別格の富裕都市である東京都でさえ、財源の移譲には大反対ですが、他の自治体からの反論は皆無に近いと言えます。

  自立の思いはどこにいったのでしょうか。法令によって、自治体の住民に対する経費と負担が分離されているうえ、国の巧妙な采配による自治体の統治がされているのかも知れません。あるいは自治体の財布が国に握られているため、その宿命を甘んじて受け入れようとしているのかも知れません。

  私は公教育の問題と共に、〝国による地方自治体の統治方式〟の実態や改革など自治体の自立を目指し、本年も精一杯努力をしてまいります。


穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版
                                  (1,470円)
―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)


いじめ〝増加(特に小学校低学年)〟を無視した教員の削減~小・中学校の教育に関心を~①

2015-11-02 18:42:08 | Weblog

○小学生のいじめが増加している〝公立は異質な集団で形成〟

 小学生のいじめが増加している。特に小学校低学年の増加が顕著である。これらを気づくことなく放置すると、やがては高学年・中学校の〝いじめ〟となって現れる。とても危険な兆候である。

 公教育は私学と異なり、多様な資質を持つ子供たちが集団を形成している。生活環境や成熟度も異なる異質な生活集団での経験は、これからの国際社会への対応を考えると貴重なものだが、異質な故に生徒間の反発もあり〝いじめ〟が多発する危険を持つ。

 一方の私学は、それぞれの教育方針を選択した同質の家庭環境をもち、選択試験によって教育水準も均一化された集団を形成している。公立に比較して生きる力を養ううえではある種の懸念はあるものの、同質的な集団であるため〝いじめ〟が少ない特長をもつ。

○教育現場の環境を無視した37,000人の教員削減方針〝教育環境の整備は後退〟

いじめの増加を無視するかのように、公立小中学校の教員を今後9年間で37,000人を削減することを財務省は求めている。生徒数が減少するので現状の教員配置を基準にすると削減は可能で、国の借金増に歯止めをかける狙いもある。所管する文科省でさえ現行制度(小学1年生35人学級、2年生から中学3年生まで40人学級)を是認し、生徒数の減少から5000人程度はやむを得ないと判断している。

いずれもいじめの問題を学校や教員だけにその責任を押しつけている。義務教育における少人数学級が大きなうねりとなった15年前と比較して、今昔の感がある。

 我が国は資源に恵まれないことから〝人材こそが資源〟といったことを私たちは忘れてしまったのだろうか。

○いじめの防止には少人数学級編成が必要である〝教員が、もっと生徒と接したい〟

 私は市長時代に全国で初めて〝小学校低学年における25人程度学級〟を導入した。少人数学級の効果が直ちに〝学力アップ〟に結びつくものではないが〝いじめの防止〟には役に立つと断言できる。何故なら現行の基準である40人学級よりも25人程度の学級定員のほうが教師の眼がいきとどきやすく、いじめに気づくことが出来る。誰も異論はないだろう。

さらに、わが国の教育行政は文科省を頂点とした中央集権型上意下達主義で、報告書類などの作成が多く教員の事務量は極めて多量である。このため教員の多くは、もっと〝生徒と接する時間がほしい〟と訴えている。医者が〝患者を見る時間がほしい〟というのと同じである。この現実はいじめなどに眼が届きにくいことを、如実に物語っている。

○諸外国と比較をする〝我が国の教育環境は劣悪〟

先進国では25人程度の学級編成が基準(特に低学年)である。そのうえ、家庭・社会・学校の役割が明確にされており、放課後のクラブ活動などは地域社会がしっかりとその役割を果たしている。わが国では子どもに対する家庭や社会の役割まで学校や教員に委ねられており、先進国と比較して多様な任務を背負っている。特に欧米では上位官庁による一定の制約や評価はあるものの学校単位の自己責任が確立されているため現場の自由裁量権が認められており、直接的な教育以外の業務は皆無に近い。OECD(経済協力開発機構)の調査でも日本の中学校教員の勤務時間は週53.9時間と参加国(34ヶ国)の中で最も多い。小学校も同様である。

○義務教育の仕組み「実施主体は区・市・町・村」〝住民の力で義務教育を変える〟

公立小中学校の実施主体は、区・市・町・村である。しかし義務教育の方針や教員配置基準は国が定めている。私が25人程度学級(志木市)を導入した時も、文科省はもとより埼玉県も当初は反対であり、いわば志木市は義務教育における謀反人として様々な圧力を受けた。

しかし、住民の賛成と理解があれば志木市が導入したように、少人数学級の実現や教育環境の改善は可能である。特に少人数学級編成は、いじめだけではなく、世界の教育が求めている〝思考力〟の向上にも欠かせないものである。私達はもっと義務教育に関心を持ち、我が国を担う子供たちにとってよりよい教育環境をつくらなければならない。地方自治は住民の声を直接つたえることのできる、民主主義の学校とまで言われているのである。(以下次号)

穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版
                                (1,470円)
―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)




新年の御挨拶

2015-01-01 09:01:01 | Weblog

 あけましておめでとうございます。

昨年中は大変お世話になりました。今年も宜しくお願いします。
2014年は皆様にとってどんな年だったでしょうか。

 昨年暮れの総選挙は解散の大義など、様々な批判もありましたが安倍総理の作戦勝ちに終わりました。アベノミクスが道半ばであり、まだ恩恵を受けていない国民さえ、これからの成果に期待を持っていましたし、期待した民主党政権の迷走を、国民が忘れていないことなどの要因もあったと思います。

 ある雑誌に民主党の野田前総理が「解散には大義がなく私利私欲だ」と批判していました。しかし、野田さんが行った当時の解散に大義があったのかと考えてみますと、勝利した当時の民主党のマニフェストは、「消費税増税」が政策の柱であったでしょうか。仮に政権を担った予算編成で増税を痛感し、自分達の責務だと考えたのであれば、その時点で増税を争点として、解散し、国民に信を問うべきだったのではないでしょうか。国民の眼には、勝手に増税を言い出し、追いつめられ、自壊した姿だけが残ったのではないでしょうか。

 一方の安倍政権もこれから大きな課題が待ち受けています。円安で苦しむ市民や中小企業の方々がアベノミクス効果を本当に実感することができるのかどうか。大胆に金融を緩和した日銀政策の出口をどうするのかなど、経済効果を争点にした選挙であったが故に、大きな責任を背負っています。

 さらに地方の再生も大きな課題です。出生率のアップを始め地方における雇用の増加など様々なアドバルーンをあげていますが、具体的な施策はこれからです。特に私が心配しているのは、施策の多くが「国家の指導」によるもので、いわば火災の現場である地方のやる気が一向に伝わってきません。もっと地方自身が先頭に立って「やる気」を出し、「自己責任」を感じ、それぞれの地域環境に応じた「個性的な人口減少の抑制策」や「雇用の拡大策」などに取組むことの出来るような、システムづくりをしなければ「笛吹けど踊らす」の危険が待ち受けています。農政などの失敗のように、縦横に張りめぐらした地方に対する様々な規制は自治体の国への依存体質を堅固にし、地方の自主性や創造性を失わせています。

 私も市長時代に市独自の25人程度学級の導入や収入役の特別職設置の自由化を訴えましたが、全て「全国一律」の原則にしばられると共に、国にたてつく「謀反人」のプレッシャーに悩まされ続けました。

 このように安倍政権における当面の課題は数多くありますが、少なくとも「国と地方のあり方」については地方自治に関わる私達にも解決しなければならない責任を感じています。

 国が動かなければ都道府県と政令指定都市、市町村が真摯に話し合い「地方間における役割分担(全ての事務・事業)の明確化」も大改革の突破口になるかも知れません。

 本年も人口の増加をはじめ、雇用の拡大など地方再生に直結する地方の自立に向かって、様々な提案をしてまいります。
本年も昨年同様、御指導を下さいますようお願い申し上げます。




穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版
                                  (1,470円)
―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)


衆議院の解散と地方の創生―自治体消滅から再生へ―

2014-12-01 09:30:01 | Weblog
―自治体消滅から再生へ―

衆議院の解散と地方の創生


衆議院が解散されました。消費税2%値上げの先送りとアベノミクスの是非を問う選挙だと安倍内閣は強調していますが、今度の解散は国民の理解を得られる大義があるでしょうか。

消費税の先送りは各党・各会派が全て賛成をしていますし、デフレからの脱却はもとよりアベノミクスの是非についても、いまだ道半ばです。日本経済の振興と密接に関連する地方の再生や女性の社会進出などもこれからの課題です。第3の矢と言われる抜本的な規制改革は手つかずであり、具体的な施策化には程遠い状態です。国民の中には、日銀の大胆な施策の是非を問う選挙なのかと揶揄する人もいます。自民党が期待する若手政治家の小泉進次郎さんも「なんのための解散か分からない」と明確に言い切っています。

このような状態の中で選挙が行われるわけですが、一強多弱の状況は幾分変わるかもしれませんが、大勢は現状と変わらない構図になるでしょう。しかし、残念なことに地方の再生問題を真正面から取り上げている政党は今回も皆無です。

私はかねてから、地方の再生は当事者である地方自身が真剣に取組まなければ国のリーダーシップだけで解決されるわけがないと、あらゆる機会をとらえて訴えています。「自治体消滅の危機」がどんなに強く言われても主権者である地域住民の多くは無関心です。首長や議会も危機意識を持っているのは極めて一部に過ぎません。このような状況の中で、現場から遠い国のリーダーが、いくら火事だと騒いでも、火事現場の地方が無関心であれば火を消し止めることなど出来るはずがありません。本来であれば自分のまちに大火が起きれば当事者である地方自身が真っ先に消火活動に取組むのが当然ではありませんか。

このような不可思議な現象が何故地方の現場に起きてしまっているのでしょうか。もう一度再考することが重要なキーワードであり、再生へのスタートになると確信しています。この奇妙な現象を返り見ることもなく、国家が独断と錯覚をしたまま、アメとムチで地方を誘導し、再生しようとしても成功するはずがありません。

この不可思議な現象の原因は、地方を身動きのとれない状態にし、主体性を持たせなかった中央集権という長い間のシステムにあります。多くの方々もその原因を知りながら真正面から問題提起をしないことが不可解でなりません。
(以下次号)

穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版
                         (1,470円)

―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
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現行制度の温存で地方の創生は成功するのか-25年後の自治体消滅を前にして-

2014-10-01 00:01:01 | Weblog
現行制度の温存で地方の創生は成功するのか

-25年後の自治体消滅を前にして-



臨時国会が「地方の創生」をメインテーマに開会しました。人口の減少と高齢社会の加速による地方の衰退を国のリーダーシップでくいとめようとするものです。

しかし日本が直面する大問題の解決には越えなければならない様々な課題が山積しています。

第1は、何故地方に十分な財源をあてながら、漫然と時を過ごしてきた地方の運営姿勢やその実態をしっかりと見つめ直し、原因がどこにあるのかを検証すべきではないでしょうか。

第2は、どんなに国がリーダーシップを取ろうとしても、地方の運営は地方の人達が行っています。運営当事者の自主性と自己責任がなければ自立心も自律性も生まれるものではありません。何故地方から、自己責任が生まれてこないのかも、検証しなければなりません。

第3は、地方議員の不祥事も常識から極めて遠いものであり、人間としての資質が欠落しています。このような人達を何故住民が選んだのかの検証も必要です。単に地域住民が悪いと言ってしまうほど単純ではありません。住民と自治体・地方議会が乖離する大きな原因があるはずです。

第4は、再生・創生という大仕事をするには国の役割と地方の役割を明確にしなければなりません。お互いの役割を明確にするためには、お互いの権限を明らかにしなければなりません。何もかも全て手つかずです。

第5は、創生本部は各省庁の出向組で編成されています。省庁の壁をこえてと言いますが、緊急を要した東日本大震災の復興で、出向組で構成された本部は、その機能を十分に発揮されていないことが証明しています。しかも創生本部の主力は総務省です。総務省は地方の再生を市町村合併からわずか10数年でコンパクトシティに変えています。市町村合併の検証もされないまま、地方は二度に渡ってその方向性を国に変えられようとしています。スローガンはあるものの明確な内容を持たない創生本部の方針も心配です。

-以下次号―


穂坂邦夫の著書

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                                  (1,470円)
―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)


25年後に自治体の多くが消える“コンパクトシティが最善の方法か-②”

2014-08-01 09:30:16 | Weblog
25年後に自治体の多くが消える

コンパクトシティが最善の方法か-②



 人口減少の自治体に対する国家の方針は「コンパクトシティ(集約型都市構造)」をめざしています。一定の人口密度を維持することによって医療・福祉などの生活サービスの提供が維持される集約型の都市構造をつくり出す政策です。言葉を変えると拡散型の居住地から市街地の一定エリアに生活地域を集中させ、必要な都市機能も集約させることになります。

 具体的には都市再生措置法を改正(2014年5月成立)して公共交通を中心として、都市機能誘導区域(福祉・医療・商業等の都市機能の立地促進を図る地域)と居住誘導区域(居住を誘導し、人口密度を維持するエリア)を設置するのです。国は集約化を進めるために社会資本整備総合交付金や容積率の特例、都市機能立地支援事業などで支援する仕組みです。さらに商業施設や医療・福祉施設、集合住宅の集積には民間活力を導入して、地域の活性を図ることも目指しています。

 しかし、このようなメニューを見せられると、かつての市町村合併を思い出してしまいます。合併さえすれば全ての地方にとって「バラ色」の未来が待っていると国は様々なメニューを提供しました。結果はどうだったでしょうか。ある大手のマスコミが合併後10年を経過した時点で住民意識調査をした結果、約80%を超える住民が「合併しない方が良かった」あるいは「何も変わらなかった」と答えています。あれからわずか15年です。人口減少は予測されていたのにもかかわらず、国の方針はまた大きく変わってきたのです。

 さらに全国各地で地方の一極集中化が進むと、時には思いがけない現象も生まれる危険性があります。例えば人口密集地の大都市は出生率が低下する傾向から人口減少が加速することも考えられます。集中エリアは都会化し、エリアを外れた地域は荒れ放題になるでしょう。のどかな故郷は消えていくことになります。様々な施策は先見性と共に多様な角度から「住民の視点」に立って立案されなければなりません。コンパクトシティ構造も、もう一度丁寧な説明のもとに住民の賛否を受ける必要があるでしょう。くるくる変わる国の方針に危惧感を持っています。

 確かに人口減少は加速します。しかし従来の高度成長期の行政構造や役所の運営システム、様々な補助制度などを変えることなく全国を一律的に「コンパクトシティ」づくりに押しこむことは、大きな疑問を感じざるを得ないのです。住民の様々な意志を一律化し、合理性だけが求められる地域の再生について私達は真正面から議論することが求められています。市町村合併のような「全国一律型地域構造システム」では我が国の市町村を再生できるはずがないからです。

-以下次号―

穂坂邦夫の著書

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                                  (1,470円)
―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
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25年後に自治体の多くが消える“対応策を考える-①”

2014-07-01 18:48:04 | Weblog
25年後に自治体の多くが消える

“対応策を考える-①”

 人口減少が続くと25年後(2040年)には523の自治体が消えるかも知れないと有識者で構成する「日本創生会議」から悲鳴に近い将来像が発表されました。

 この見通しが正しいかどうかの議論もありますが、私もかねてから〝役所が残って住民が消える〟という危険信号を送り続けてきました。急激な人口減少と高齢化が進んでいるにもかかわらず多くの自治体が高度成長期に根づいた政策を転換しないまま、従来の発想を継続し、何の対策も打ち出していない現状を目のあたりにしてきたからです。

 国は50年後に一億人を確保するという目標をかかげましたが内容を見ると、具体案に乏しく、単なるアドバルーンにすぎないといっても過言ではありません。存立が危険視される自治体は自分達の手で新たに産業をおこし、住民の流出をくい止め、若者の定着を促進する大胆な施策を1日も早く打ち出さなければなりません。人口の微増が続くと思われる地域もあります。しかし決して対岸の火事ではありません。大量で急激な高齢化が地域を襲うからです。これらの自治体にも極めて厳しい現実が待っています。

 これからは町全体を21世紀型村落共同体へと転換し、役所の大胆な民営化を図ることが大きな柱になるのではないでしょうか。第一は地域の様々な個性を活かし、インターネットを活用した新たな産業の育成や自由と民主主義を基盤にした協力社会の構築です。自治体の仕組みを抜本的に転換することです。

 第二は従来の行政システムを抜本的に変えた、役所の民営化です。ようするに住民との協働による役所の運営です。市長在任時に50年後の我がまちを考え、職員とつくり上げたのが「志木市地方自立計画」です。高齢化が進み、若者は隣接する首都東京に流出します。これらを打開するための計画です。市職員の検証によると役所の仕事の75%は住民が担うことができることが分かりました。さらに様々な法令を改廃すれば業務の90%が住民に開放できます。自治体内の最大の企業である役所を活用して、行政コストを低減し、住民の雇用を確保するとともに、住民サービスを住民自身が選択し、節減した行政経費を地域振興の財源にする大胆な発想の導入です。人口10万人のアメリカ・ジョージア州サンデースプリング市がたった8人(警察と消防を除く)で運営している現実を見れば一目瞭然です。 

  
-以下次号―


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―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)


急報!~(財)日本自治創造学会の研究大会が開催されます~

2014-05-01 19:11:19 | Weblog
急報!~(財)日本自治創造学会の研究大会が開催されます~



第6回・日本自治創造学会の研究大会が来たる5月22日(木)~23日(金)に「変わる地域社会、変わる自治体・地方議会~自治、自立、分権~」をテーマに明治大学アカデミーホールで開催されます。皆様の御協力で申込みは既に530名を超え、会員をはじめ多くの方々に心から感謝をしています。

2日間、日本の第一人者による11本の講演やシンポジュームが行われますが、私も「~変わる地方議会~地方議員の必須条件」を主題として

1.変わる地方議会
 (1)社会環境の激変と住民意識の変化「高齢社会の加速・人口の減少・消費力の低下・シャッター通りと買い物難民の増加や専門家に対する疑問と不安」
(2)オンブズマンからの脱却とエリートの自覚
(3)住民が求める議会・議員の役割「前例を変える・自治体を変える」
2.地方議員7つの必須条件
 (1)長期戦略力と短期戦略力「両立させる2つの力」
(2)プレゼンス力と提案力「個性を活かす」
(3)職員コミュニケーション力「職員の立場を理解する」
(4)会派マネジメント力「議員の特長と十分な意見交換」
(5)議会交渉力「損して得を取る」
(6)政治環境洞察力「必ず変わる中央政治」
(7)選挙常勝力「ビジョンと心と行動力」

について講演を致します。

 高齢社会が超加速する中で、労働人口の急激な減少や世界最大の財政の悪化など様々な課題をかかえる我が国の状況は、安易な将来を約束されているわけではありません。国はもとより地方にとってもその運営に大改革を求められることが直近に迫っています。

 自治体の将来は最も住民に近く、常に住民に接することの出来る多数を擁する地方議員の手の中にあるといっても過言ではありません。一人一人の力は弱いものですが、時代の変化は「連合・連携」を要請されることになるでしょう。全国の地方議員がひとつになって、様々な制度改革に挑戦することが求められることでしょう。このような研修の機会を通じて「変化に強い議員」を目指してはいかがでしょうか。そして、住民の期待にしっかりと応えることがこの時代に生きる地方議員の役割ではないでしょうか。

穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版
                                  (1,470円)

―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)


首長・議員・職員の仕事を成功させる~具体的な方策・議員編①

2014-02-01 09:01:08 | Weblog
首長・議員・職員の仕事を成功させる

~具体的な方策・議員編① 何故、住民は議会の権限を理解できないのか~


 地方議員は国会議員と異なり首長と同等、いやそれ以上の権限を有しているのにもかかわらず、首長の陰に隠れ、その存在価値を住民に理解されていません。この為、住民は行政視察のムダや政務調査費の不正使用を追及していましたが、現在では議員報酬や定数の削減を主張して、陳情や請願を繰り返しています。とても残念なことですが、その原因をつくっているのは議員自身であることは言うまでもありません。

 第一点は議員自身の認識不足です。なぜでしょう。原因のひとつは、我が国の地方自治が永い間強い中央集権制のもとに、地方議会(議員)の権能を法律で著しく阻害してきたからです。代表的なものが現在は廃止された「機関委任事務」で、国の指揮監督を受けて事務・事業を処理するもので議会の権限が及ばないことでした。分かり易く言えば、議決も承認も形式的で、例え議会が反対や不承認であっても何ら効力を発揮されない仕組みの事務・事業が数多くあったのです。首長は執行権が付与されているため、事業運営のリーダーとして住民にとって分かりやすい存在でした。しかし議会は多くの事務・事業に関与出来ない状態が続いたため、住民は永い間の実体験から議会は無用な存在であるといまでも錯覚しています。

 一方の議会も機関委任事務が多かった為、権能の狭小が常態化していくうちに議員自身の意識が変形し、議会活動の中心が住民の意志を行政に伝え、実現することになってきました。首長に対するオール与党化が進んだ歴史のはじまりであり、住民が議会の限界を感じると共に、権能を理解出来なかったのも当然の結果と言えるでしょう。

 第二点は、このような環境によって議員は持っている権能を発揮せず、自治会長やオンブズマンと同じような活動に傾斜していきました。ややもすると、「住民の御用聞」となり首長も間接的な住民の声として尊重すると共に、身の保全もあり、出来るだけ議員の意志を行政に反映する努力をします。両者はウィンウィンの関係として、現在も継続されています。しかし、議員個々の要求はバラバラです。本来、政策は一定の理念・方向性に裏打ちされたものでなければ総花式になり、ポピュリズムになりかねません。にもかかわらず、議会との良好な関係を、首長の高い政治手腕として評価されることさえありましたからおかしなものです。支援を受ける業界・団体や地盤利益を第一に掲げる国会議員をつくりあげたのもこの影響です。

 議員の消極的な姿勢は「議会役職獲得競争」に奔走する姿勢にもつながりました。法律上の議会は「首長と対等」と位置づけられ、その上、首長と地方議会を代表する議長は黒塗りの公用車が付与されたこともあって、議長選挙は極めて激しいものになりました。私も市議会議長や県議会議長時代を振り返る時、忸怩たる思いの中で今でも議会・議長は二元代表制における単なる「飾りもの」ではなかったかと反省しています。機関委任事務が廃止された現在でも永い間の歴史と慣習がなかなか払拭できないことが議会の権能を十分に発揮出来ない大きな要因となっています。

 第三は議会が議員の多数で構成されるため、議会としての統一した意志を発揮できない弱点を持っています。良きにつけ、悪しきにつけ、首長の単一の意志に向かって議会が対峙する関係を構築することは極めて困難です。そのうえ本来の議会意志は是々非々が原則にもかかわらず、事務・事業には何ら関係のない中央政党の影響や首長選挙を引きずった与野党の組分けなどによって、賛否が常に分かれる現実があります。この悪影響が首長と対等の権限を発揮する自治法上の議会の役割とはまるで異なった意識を住民はもとより、議員自身が持つことになったのです。

~以下次回・議員編②に続く~


穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版
                                  (1,470円)
―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)