ほさか邦夫の日記帳

前志木市長、地方自立政策研究所理事長

                          ~地方議員の新たな役割~

2017-01-01 10:00:01 | Weblog
人口減少への対応は地方の自立から


 あけましておめでとう御座います。本年も宜しくお願い致します。

 地方の自治体にとって人口減少は「まち」の存立にかかわるのだが、当事者である首長・地方議員の危機感は薄い。行政のシステムは何ら変わらないばかりか、国から地方に多くの財源が流れ込んでいるからである。

 国家も出生率の低下とともに、地方から大都市へと人口が流入しているのにもかかわらず放置している。
 人口減少社会の加速に加え国家財政の悪化も見逃すことの出来ない大問題である。高齢者の増大は医療や介護に莫大な財源を要するが目をそむけている。国の仕送りを受ける地方もひたすら高度成長期の高い行政サービスを今も取り続けている。私達の調査では地方事業の70%は選択的事業に使われ、地方自身の福祉的事業はわずか30%に過ぎない。

 国家財政が破綻の危機にありながら、現在の地方自治体は黒字基調にある。交付税の高どまりと地方への国庫補助金が急増したからである。しかし近い将来、地方財政も厳しさが待ち受けているのは明確である。

 地方の再生は我が国の存続にもかかわる。地方だけでなく人口が過度に集中する東京はもとより、大阪や福岡などの大都市も極めて深刻な事態が待ち受けている。特に首都東京は現在でも特老への待機老人は4万3千人と言われている。オリンピックは2020年だが高齢社会のピークは2025年で、まだ入口にすぎない。莫大な高齢者の介護費用はもとより、施設の整備やマンパワーなどの確保からも、さらなる経費が追い打ちをかける。現在でも国庫支出金は東京都がトップで大阪、神奈川と続く。自立度が高いと言われる東京都などに巨額の国費投入が現在でも行われているのだ。今後さらに膨大な財政支援が必要だが、国家財政はパンク寸前である。

 いうまでもなく都市一極集中をくい止めるためには、地方の再生が急務である。第一点は地方自治体自身の「危機意識」の醸成である。火災の現場である地方自治体が何の危機感も無く傍観していたのでは、全てが焼け野原になることだろう。自治体自身が危機感を持ち、自己責任を大原則としてありったけの知恵と工夫を発揮しなくてはならない。

 第二は、地方における雇用機会の拡大である。雇用の機会を拡大すれば人口の流出を防ぐだけでなく、都市からUターン組もある。国の保護行政は農業や林業をことごとく潰した。一定の保護政策は理解できるが、様々な規制や補助金づけで維持できるものではない。これからは発想を変え規制を撤廃し、新たな農業や林業の再生に取組むことが求められる。
 地方への企業誘致にしても情報システムの整備などを進めると環境の悪い大都市にだけに集中する意味がなくなる。アメリカを見ればよく理解出来る。地方の働き場を確保するためにはインターネットの活用と共に観光事業も極めて重要である。

 今は高齢者に支えられた消費力に頼っているが、いずれその資金も枯渇する。生産年齢人口(15歳~60歳)が特に減少する地方にとって観光事業は極めて有望な事業と言える。現在の1千万人を超える程度の観光客を10倍の一億人を目指す。地方も独自の情報インフラの整備を図る。

 日本の道路は完璧に整備され、カーナビさえあればどこにでも行ける。コンビニは全国に配置され、トイレもあり休憩所にもなる。治安は世界の中でトップクラスである。一千億円もあれば様々な受入れのサービスが整う。地方は地方の特色を存分に打ち出す。いまのような「個性なき一律的まちづくり」ではない。各地域に様々な文化が根付いている日本を世界の「ラストリゾート」と位置づけることだ。

 行政体も開放する。役所の民営化である。市町村の業務の75%は民間人で業務を行うことができる。どの市町村にとっても役所は地域最大の消費型大企業である。これを活用しないなど考えられない。

 雇用さえあれば人は誰しも生れ育った所で生活したい。地域の大学よりも大都市に学生が集まるのは就職のことを考えるからで、働く場さえあれば地域を離れることはない。国と地方が発想を転換し、真剣にその気になりさえすれば地方は再生し、大都市一極集中は是正される。

 これらの再生策の「鍵」は地方議会にあると言っても過言ではない。首長は前例のない、しかも多額の財源を必要とする事業は決断出来ないものだ。私も市長時代に様々な改革を実現したが、いつも「謀反人」の恐怖を持ち続けていた。

 今年こそ、地方議員の一人一人が「議会人としての生きがいと責任」を自覚し、地方再生の狼煙を上げる時ではないか。
(以下次号)

穂坂邦夫の著書

2013.1 Xノートを追え!中央集権システムを解体せよ・朝日新聞出版(1,470円)
―いじめをなくし、教員の資質を高めるために―
2005.7  教育委員会廃止論・弘文堂(1,600円)
―国と地方を救う役割分担の明確化―
2008.4  地方自治 自立へのシナリオ(監修)・東洋経済新報社(3,150円)
―健全化への処方箋―<行政・議会・住民の協働による地方再生マニュアル>
2008.5  自治体再生への挑戦・株式会社ぎょうせい(2,500円)
―市町村長を廃止するー<地方を変える、国を変える、徹底した比較・検証・調査>
2008.12  シティマネージャー制度論(監修)・埼玉新聞社(1,500円)