今ひとつ感情的にメリハリがきいていない私は、あまり他人に「さすが!」と感動する機会がない。以前、熱闘広辞苑の「かなわないなぁ」でもそれについてはちょっと触れたが、他人を評価する目はドライでシビアである。
だからといって「他人には厳しく自分には甘い」とか「自分にも他人にも厳しい」というわかりやすいタイプでもない。
自分他人関係なく見たくもない細かいアラが目に入ってしまうタイプで、だから他人に接する時などバツの悪さを感じて、はっきりした態度がとれない優柔不断なタイプ?である。
そんな私が感動するものといったら、もうあーだこーだ文句の有無を言わせない次元の違う天才とか自分の世界を比類なく完璧に確立した人とかそういうものしかない。それか自分の完璧を求めるあまり優柔不断といった性質とは反対の性質を持つ人へややブラックな気持ちも含んだ賛美である。
後者の方でかなりブラック度の強い「さすが!」な人を紹介するとしよう。
同じ職場の女性の先輩で仮にMさんとする。
このMさんはとても頭の切れる仕事のできる方である一方、舌を巻くほど割り切り方のす早い人でもある。で、気持ちの中はそんなでなくても、ここぞという時の感情表現の巧みさは、見習いたいと思っても見習いきれるものではない。芸術作品といってもいいほどだ。
もう8、9年前の話だが、老人ホームの職場でMさんと私と男性Oさんと3人で夜勤をしていた。Oさんは水瓶座のAB型。それが関係がするかどうかはおいといて、いつも人がドキッとするような変なことをする人それがOさんだった。飲み会に行くとわざと高層階の階段の手すりにつかまって足をぶらぶら投げ出し、手を離したら大怪我しそうな動作をしたりとか。
そのOさんが夜勤時にえっらそうな口調でとくとくと話しをし出した。
話の内容はというと、昔の人類は大人しい性質の人種と争いが好きな性質の人種の2種類がいたそうな。だが争いの好きな人種が大人しい人種を「殺して食べてしまい」、今いる自分たちの先祖は争いの好きな人喰い人種なんだそうだ。だから今の人達はみんな好戦的で凶暴といった話しだった。
私はその話を聞いて、耳を塞ぎたいほど不快に感じた。
しかしMさんは表情豊かに尊敬の眼差しをOさんに向け、情感たっぷりに
「まあ、そうなの」
「すごいわね~」
「もっと聞きたいわぁ」(複数回)
「まあ」
などと熱心に相槌をおくっていた。
Oさんが何かの用事でいなくなった隙に私が
「よくMさんはああいう話を聞いていられますねえ」
と言った。
Mさん「なあに?なんのこと?」
私「。。。。(Oさんの話をかいつまんで話す)」
Mさん「あらそうなの。よく聞いていなかったから」
私はMさんのような人を凄いと思う。私にはマネのできない芸当ができるからだ。
Mさんにはそれからも様々な逸話があるが、この時の衝撃が一番印象が強い。
私はMさん嫌いではない。
※この記事は熱闘広辞苑の参加記事です。熱闘広辞苑とは、同じお題で各ブロガーが記事を書くという企画です。今回のお題は「さすが!」でした。
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※画像はティーパッグのハーブティいろいろ。職場の休憩に飲んだりしている。BIGELOW社のGreen Tea with Lemonは特にお気に入り。
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