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多細胞動物の性別とは何か

2023-11-19 10:49:21 | ブログ
 10月に東京大学の大久保範聡先生の「魚の性の不思議」と題する講演を聴講した。

 先生の講演を聴いて、魚類は、生まれたときにオス・メスの性別が決まってしまい、終生変わらないのではなく、環境によって性転換できる種類の魚がいることが分かった。たとえば、生まれたときに性別がなかったカクレクマノミは、いったん皆オスになり、仲間の中で体が大きくなった場合にメスに性転換する。また、ハーレムをつくるキンギョハナダイは、体が小さいうちはメスでいて、ハーレムに入ると体が大きいオスが有利なため、オスに性転換する。カクレクマノミの場合、ハーレムをつくらずランダムに「つがい」をつくるため、小さいうちはオスでいて、大きくなると多くの子孫が残せるメスが有利なのでメスに変わるとのことである。

 魚類は体外受精であるから、オスとメスの生殖器官の違いは、精巣をもつか卵巣をもつかだけであり、精巣と卵巣の構造がよく似ているので、性転換のために短期間で生殖器官をつくり替えるのが比較的容易とのことである。そうであれば、1個体の中に精巣と卵巣の両方をもつハムレットと名づけられた雌雄同体の種がいても不思議ではないわけである。

 性転換する魚のほとんどの種類が性染色体をもっていないので、オスになるかメスになるかは環境次第ということで、生命体がシンプルなことによる自由奔放さを知ると、そもそも性別とは何かを考えさせられる。

 そこで、魚類に限らず、海に生息する多細胞動物の中で、最初にオス・メスの性別をもった動物は何かということに興味をもち、ネット検索してみた。

 海綿動物は、べん毛虫(単細胞生物)が集合したものであり、6億年以上前に、地球上に最初に出現した多細胞動物であった可能性が高いと考えられている。現生の海綿は、無性生殖と有性生殖の双方を行う。また、有性生殖も多様であり、雌雄同体と雌雄異体の両方の種がある。チャット検索として,海綿はシンプルな体の構造をしているが、有性生殖を行う種の場合、精巣と卵巣となる細胞名を質問してみたが、「明確な記述なし」として答えてくれなかった。

 海綿と魚類の生殖方法を比較すると、大雑把にみて、海綿が無性生殖を行う以外は、両者はよく似ている。そうすると、海綿は最初に無性生殖を行っていて、後に有性生殖を行うようになったと推定するのが自然であろう。圧倒的に多くの多細胞動物が有性生殖を行っているという事実からみて、多細胞動物が多くの子孫を残すためには、有性生殖が必須ということになる。

 そうすると、魚類も過去に無性生殖の時代があったとしても不思議ではない。海綿と魚類の生殖方法は、おそらく独立に進化したと考えられるが、両者が大枠で類似するのも自己組織化と称される自然の成り行きなのであろう。