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位相幾何学のオブジェに親しむ

2015-05-03 07:54:26 | ブログ
 稿末に挙げる参考文献を読んでいると、その中に興味深い「ポアンカレの指数定理」というのがあった。

 この定理の意味するものは、いかにも難解で、その定理の証明を読んでも理解したとは言い難い。しかし、ぐっとレベルを落として下位概念でその考え方を語れるのではないか、と思った。

 正多面体は、正四面体、正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体の5種類しかないという。しかし、正のつかない多面体となると、いくらでもその面の数を増やせるに違いない。

 多面体に関するオイラー数というものがある。多面体の頂点の数をv、辺の数をe、面の数をfとすると、v-e+fがオイラー数である。

 多面体のオイラー数を計算してみると、2という値を得る。そうすると、n面体のオイラー数も2である。nを無限大にもっていくと球面になるから、球面のオイラー数も2であるということになる。球面のv,e,fがともに無限大になるが、無限大の項が打ち消し合って、定数の2だけが残るということか。

 球面から球面の中への連続変換に対して、2つの不動点が存在することが知られている。

 例えば、地球表面を球面と考える。地球は自転しているので、各緯度について水平方向に自転の速度ベクトルをもつ。自転軸上にある北極点と南極点は、この速度ベクトルが0となるので、定理で言う零点に相当するのであろう。地球の自転は、静止地球の球面から自転地球の球面への任意の連続変換と考えてよいから、北極点と南極点は、2つの零点あるいは不動点と考えてよい。

 そうすると、球面のオイラー数2は、無限大の項が消去されて最後に残った頂点に相当するものであり、それは徐々に2個の不動点に「近づいていく」ということか。

 この考え方が、トーラスの曲面にも当てはまるか否か検討してみる。

 平面上で三角形、四角形、五角形、・・・などの多角形の頂点と線の部分だけを三次元の多面体で表現する立体をつくることができる。このような三角形立体、四角形立体などのオイラー数を計算してみると、0という値を得る。そうすると、このようなn角形立体のオイラー数は0と考えてよいだろう。nを無限大にもっていくとトーラスの曲面になるから、トーラスのオイラー数が0であるということになる。

 そこで、トーラスに不動点が存在するのか否かということになる。

 トーラスを水平に置いて、垂直方向の中心軸のまわりにこのトーラスを回転させると、確かにトーラス表面で回転の速度ベクトルが0になるような点は存在しない。

 また、トーラス表面上でトーラスの穴をくぐるような円を描けるが、任意の円を基準にしてトーラス表面をトーラスの円環方向に移動させるような連続変換に対して、不動点が存在しないようにできる。

 そうすると、トーラスのオイラー数0は、トーラスの不動点の数0に一致すると言える。言い換えると、球面は収束的であるのに対して、トーラスは発散的だろうか。

 平面上で三角形、四角形、・・・などの閉曲線とその閉曲線で囲まれる面にオイラー数の概念を適用してみる。一般にn角形の頂点の数と辺の数とは等しいから、打ち消され、オイラー数として面の数1だけが残る。nを無限大にもっていくと円板になるから、円板のオイラー数が1であるということになる。

 円板の中心Oを回転の中心として円板を回転させると、円板から円板の中への連続変換が得られ、中心Oが不動点となる。すなわち、円板の不動点の数は1であり、これはオイラー数に一致することになる。

 そうすると、円板のオイラー数は、n角形の定数である面の数1に相当し、それは上記の連続変換についての不動点の数に他ならないということになる。

 また、平面上で点Oを通らないような円と同相の任意の閉曲線を連続変形して点Oに収束させることができる。つまり、閉曲線の面がその中心Oに向かって収束すると、結局、不動点という零点に到達することになる。

 ここで、円と閉曲線が同相とは、両者が向きをもつ閉曲線であって、点Oのまわりをまわる回数(巻数と言う。単純閉曲線ならば+1か-1)が同じということであり、この条件が満足されれば連続変換できる。

 点Oを通らないような任意の単純閉曲線を、まずこれに内接する円に写像し、この円の半径を連続的に縮めるような変形を行う(半径rの変数を連続的に縮小するような変形を行う)と、これらの円族がその中心Oに向かって収束するような連続変形ができるので、分かりやすい。

このような連続変換は、円板から円板の中への連続変換の一つとみてよいだろう。

 位相と位相空間という抽象的な用語を用いれば、n=4,5,6,...とするn面体という多面体の系列には位相が与えられており、この系列全体は位相空間を構成している、と考えてよいようである。そして、この系列には、nがどう変化しても(nを無限大にもっていくまで)位相不変量と呼ばれるものが常に保存される。それが、オイラー数または2つの不動点である。n=3,4,5,...とするn角形という閉曲線で囲まれる面の系列についても同様である。

 参考文献
 砂田利一著「現代幾何学への道」(岩波書店)
 志賀浩二著「大人のための数学5 抽象への憧れ」(紀伊国屋書店)