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題詠20011  100首まとめ

2011-12-16 | 題詠blog2011

 

001:初
初雪は三月に降るじらされてシュガーパウダー塗れにされて

 

002:幸
正確に折りたたまれた幸せを挟んだ場所が思い出せない

 

003:細
細すぎる絹さやのすじ切れかかりためされている指の先まで

 

004:まさか
やわらかな嘘はそぉっと包み込む まさかが目覚めてしまわぬように

 

005:姿
うらおもて半分ずつの本音持つ後ろ姿の猫はさみしい

 

006:困
パスワードはアスタリスクで隠されて答えに困る質問の先

 

007:耕
耕して地中深くを弄れば銀の指輪は失くしてしまう

 

008:下手
単純な音階だった下手くそな旋律だったキスのうしろは

 

009:寒い
暗闇を歩けば梅が手招いて寒い夜には月が明るい

 

010:駆
駆け引きを身に付けていく五つ目の嘘に被せる濡れたハンカチ

 

011:ゲーム
目隠しを外した街は溶けていて夢とゲームの境目がない

 

012:堅

堅雪をしみしみ渡るはしゃいでもスキップしてはいけない決まり

 

013:故
何故だろういつまでも憎みきれなくて春を重ねてアイロンあてる

 

014:残
過ちをなかったことにできるほど修正テープが残っていない

 

015:とりあえず
なりゆきにまかせてもいいとりあえずふたつだけ買う硬いアボカド

 

016:絹
薔薇色の絹のスカーフひらめいて銀座を泳ぐ東京金魚

 

017:失
タンポポの綿毛は飛んで次々と失くしてしまう甘い自意識

 

018:準備
曇りのち雨の準備はできていてあたりまえには傘はいらない

 

019:層
指に残る背骨をなぞる感触がリアルな夢の深層心理

 

020:幻
口づけをせがむグロスをかわしつつ幻覚めいて花びらは散る

 

021:洗
目に見えるカイカンが好き洗濯機のドラムぐるぐるぐるぐるまわる

 

022:でたらめ
でたらめな色を重ねる指先を誰かのために正しく使う

 

023:蜂
蜂蜜は正しい位置に戻されて何もなかったような沈黙

 

024:謝
謝りのメールは封印されたままスクロールばかり繰り返す指

 

025:ミステリー
ミステリーサークルの渦に巻き込まれ容易く狂いはじめる磁石

 

026:震
やさしさとあわれみ分ける直線がうまく引けずに震えてしまう

 

027:水
ゆるしあうことができないあたたかい涙はただの水にかわった

 

028:説
保証書も説明書もない契約はむすんでひらいてくちゃくちゃにして

 

029:公式
銀紙を破らず剥がす隠された公式サイトに潜む暗闇

 

030:遅
透明な背中の糸に気づかれて遅れた二度目の羽化が始まる

 

031:電
停電が右と左に分けられて紅い椿はふしだらに咲く

 

032:町
雨の日は灰色になる町にいて足に合わないヒールを磨く

 

033:奇跡
壊れかけの明日としている指きりは四つ葉をみつける奇跡にも似て

 

034:掃
笑いにも缶詰があり墓掃除にも代行がある惑星(ほし)になる

 

035:罪
かりそめの甘い香りを纏いつつ罪を重ねる白い梔子

 

036:暑
ねじくれたミミズ平らにはりついてプール帰りの歪んだ暑さ

 

037:ポーズ
プロポーズを受けて交わした誓約書 透明な嘘とガラスの靴と

 

038:抱
抱きあげて母という名を授かって痛みときみを引き換えにして

 

039:庭
家庭画報をゆっくりめくる指先のジェルは剥がれていてはいけない

 

040:伝
曖昧なことばで縁取りされていてハミングまじりにつなぐ伝言

 

041:さっぱり
一本のコーラ交互に飲みながらさっぱりしている関係のまま

 

042:至
共犯に至る理由を聞きながら正解のない答をさがす

 

043:寿
反抗は壁に開く穴 押し寿司の型にはまったような窮屈

 

044:護
傷ついた保護フィルムが剥がせない寂しくて噛む深爪のせい

 

045:幼稚
撫でられて猫になりたいこのままで幼稚なところが好きだといって

 

046:奏
核心を衝かれ薄れていく正義いつもより長い前奏のあと

 

047:態
くちびるが不覚に緩む電話越し思わせぶりな態度に揺れて

 

048:束
それはもう大人のルールと決められた指きりげんまんしない約束

 

049:方法
鍵を開け暗号を解き手に入れて!あたしを夢中にさせる方法

 

050:酒
こたえにはたどり着かないまた今夜 酒という字に頼るよわむし

 

051:漕
繰り返し犯す過ち簡単に三輪車を漕ぐことができずに

 

052:芯
とりあえずやっておきたいそのひとつきゃべつの芯はくりぬいておく

 

053:なう
ひとりでは生きていけない青い鳥タイムラインに「なう!」が溢れる

 

054:丼
向き合ってささくれに触れることもせず黙々と食べる他人丼(どんぶり)

 

055:虚
秒針は虚しい音を響かせて記憶の襞をざらざら舐める

 

056:摘
憎しみが盃の渦に溶けていく肴を摘む箸に見惚れて

 

057:ライバル
ライバルになりたくはない傷ついた膝にはひとりキズバンを貼る

 

058:帆
手つかずの弁当箱を持ち帰る帆布バッグが肩に食い込む

 

059:騒
胸騒ぎを覚えるたびに剥がされる傷口ふさぐ黒い瘡蓋

 

060:直

嘘つきにも馬鹿正直にもなれなくてバジルをちぎる白いキッチン

 

061:有無

愛情の有無を確かめ合う欲しい指はこれだと確信をして

 

062:墓
タワーから見下ろすビルは犇めいて雨に濡れてる墓標のように

 

063:丈
大丈夫だからといって拐かすクシャっと頭を撫でるてのひら

 

064:おやつ
ガラス箱のペットは眠るあたたかい腕とおやつと明日を夢見て

 

065:羽
偽物と見分けられない羽もある天使は舌を出しながら泣く

 

066:豚
包丁は研ぎ澄まされた冬の月 白磁を酢豚で彩る夕餉

 

067:励
励ましのことばがのどに貼り付いてベリーニの泡をじっとみていた

 

068:コットン
コイン式ランドリーには空がないコットンシャツの回る真夜中

 

069:箸

菜箸で転がしているゆでたまご「母」で始める一日のため

 

70:介
厄介な留守電を消す真夜中の雨で濡らした靴のつま先

 

71:謡
流れ出す時代遅れの歌謡曲ささくれを剥くちいさな痛み

 

072:汚
砂遊び気付けばひとり残されて靴の汚れのせいにして泣く

 

073:自然

不自然な笑顔を映すコンパクトはみ出し気味に塗った口紅

 

074:刃
歳月はひとを象る使い込む出刃の重みがこの手に馴染む

 

075:朱
喚び起こす記憶のページは破られて朱肉の匂いが残る指先

 

076:ツリー
天界の雨は下界を滲ませてマンゴツリーで踏む蓮の花

 

077:狂
呆気なくリズムは狂うひとつだけ指を滑らす黒鍵がある

 

078:卵
戻せない時間ばかりが増えていく固ゆで卵の黄身は蒼くて

 

079:雑
牛乳を拭いた雑巾 罪のないものが凶器に変わる教室

 

080:結婚
結婚で始まるものと捨てるもの狭いカーブの先が見えない

 

081:配
遺伝子の配列ひとつ書き換えてルンバは愛を語り始める

 

082:万
左手は猫の手にする丁寧に万能ねぎを刻む練習

 

083:溝
U
字溝が積み上げられた空き地にはセイタカアワダチソウと口笛

 

084:総
事務的な自動音声聞きながら窓口探す総合案内

 

085:フルーツ
待ち望むことは遅れてやってくるフルーツトマトを口に含めば

 

086:貴
食後にはとろりと甘い貴腐ワインもたれ合いたい関係だから

 

087:閉
残像が消えずにフラッシュバックするドロップ缶に閉じ込めた蟻

 

088:湧
ふつふつと疑心暗鬼が湧き上がる貝のピアスをひとつ外せば

 

089:成
嘘ばかり溢れかえったメディアには成熟できない大人が映る

 

090:そもそも
幾度にも重ねる言葉は嘯いてそもそもすべては見せかけだけの

 

091:債
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092:念
丹念に指を滑らす一日の終わりに嘘は塗りこめておく

 

093:迫
選択を迫られているデミカップのエスプレッソはあと一口で

 

094:裂
次々と更新されるプログラム分裂していく退屈な理性

 

095:遠慮
遠慮がちに反論をする明確な答えなどない盃の底

 

096:取
触れそうで触れない指で繋ぐ糸こころ隠して二人綾取り

 

097:毎
習慣はひとつのカタチ気が付けば毎朝卵の数をかぞえる

 

098:味
銀紙をうっかり噛んだ後味の悪さのように叱ってしまう

 

099:惑
誘惑の迷惑メールが増えていく秘密の共有なんてできない

 

100:完
完璧な鎖骨のかたちそこだけは生き方うつす真実であれ