平家琵琶定期演奏会 平家物語探訪2-2(32) 秋山良造
3月4日(日) 午後2時始 於:東京四谷石響サロン101
曲句 : 巻一 二代后 ・ 額打論
二代后 元近衛帝が17歳の若さで崩御すると、后は皇太后宮としてひっそりと暮らしていた。次帝二条天皇(17,8歳)は、この太后が天下第一の美人ということに恋慕し、父後白河上皇の反対を「天下に父母なし」と言い放って再入内を宣下する。この曲句には和歌二首が詠まれている。再入内の心の乱れの一首と、先帝近衛帝との懐かしい面影を偲んだ歌である。
額打論 再入内をさせた二条帝もまもなく崩御(23歳)。蕾める花の散れるが如しであったと物語は記す。この二条院葬送の地、船岡山(京都北区大徳寺西南丘陵)の墓所に南都北嶺の寺の額を懸けるという行事があった。寺格に従って東大寺、興福寺、延暦寺、園城寺の順に従うべきが、延暦寺が興福寺を出し抜いて額を懸けた。これに怒った興福寺の悪僧二人が大太刀持って、延暦寺の額を打ち落とす騒動が起きるのである。
此の二句は、物語の筋が続いているが、琵琶の曲趣は全く異なっている。前句は女性の哀れが静かに流れる曲である。後句は葬送の場であるのに悪僧大衆の大立ち回り、躍動感溢れる曲句である。