Kanaheiのデンマーク生活

糖尿病の勉強をしたくてきたデンマークでの紆余曲折な生活を日記として残しています。

葛藤いろいろ 前編

2012年12月11日 | 妊娠関係
 さっくり前向きにガツガツと取り組んでいる不妊治療ではありますが、なんとなくまとめづらかった心の変化とかを、準夜勤でちょっと時間のある(そして走りにいったりする気力がない)ときにちょっと残しておこうと思います。


「家族の中の私の立ち位置って?家族になりたい」
 2011年春頃、H氏宅へと引っ越し3ヶ月が経ち、隔週でやってくる息子達との関係にも少しずつ慣れてきた頃。普通の家族と違って、同じ家に住む義姉家族や近所に住む義母など、完全にH氏家族に囲まれての生活で、みんな本当に温かく優しくしてくれるんだけど、完全にアウェーな気分は高まる一方。
 共通の思い出がない、家族の歴史を知らない、私以外はほぼみんな血のつながりのある家族、もしくは子供達がまだ赤ちゃんの頃から知っている人達。彼らは私の家族は背景を知らない、興味がないわけではないんだろうけど、きっと遠い外国のことだし、漠然とし過ぎててイメージもつかないんだろうけど。とにかく、周りにもよく言われるし、自分でも思うけど、まあよくそんな完全アウェーな家族の中に飛び込んでいったな、と感心します。
 でもこの頃はとにかく「家族」というのがつらかった。息子達のこともすごくがんばってたけど、がんばればがんばるほど、「それでも家族ではない、私のものではない、私は彼らの一部にはなれない」という気持ちもありました。
 で、子供が欲しくなった、と。もちろん、大好きなH氏との子供が欲しかったわけですが、家族の中でどうしても時々痛感してしまう孤立感を子供をつくることで、どうにかしたかった。H氏家族と自分をつなぐためにも子供が欲しかった。
 なので、まだ同居して間もないのに、子供ほしくて、という私に一部の友人達は「まだ早いんじゃない?そんなに焦らなくても大丈夫だよ~」となぐさめてくれたものですが、新しい環境と家族とに慣れるのに必死だった私は、今思うとけっこうヒステリックな反応をしていたと思います…。H氏とも「結局はあなたは子供達を、私ではなく家族を絶対選ぶ」と、絶望的な喧嘩をしたものです。
 とにかく自分の立ち位置が不確かで、それで子供が欲しいとかって、自分勝手な動機だったなーと。しかもあるとき日本人のお友達で、ご近所に義両親が住んでいる人と結婚し、子供が生まれた方にそんな話をしたら、「でも子供生んでもその感覚って変わらないよ。むしろ孤立感はもっと強くなるかも。だって自分の子供ですらむこうの家族と血がつながってるんだもの」と。彼女はある日仕事が遅くなって家に帰ったら、子供を含む自分以外の家族が一家団欒をしているのをみて、ふと切なくなったそうです。それを聞いて、ふーむ、なるほど…と妙に納得したものです。

「私が望むものは、彼にとってはエクストラ」
 息子達との夏休み3週間南イタリアのバカンスを終え、旅の中で喧嘩したり泣いたり仲直りしたりして、ぐっと距離が縮まった息子達との関係。ようやく「家族になりたい呪縛」から少し解放され、H氏も「よっしゃ、じゃー作るか!」といよいよベイベープロジェクトも本格始動。
 しかし超ありがちなことに、妊娠なんて本気になればすぐできるものと信じ込んでいた(というか自分が難しいタイプとは想像もしていなかった)ので、毎月生理が来るたびに「なんで?!」と、がっかり&そして悔し泣き(?)。そんな妊娠を望んでいた女性なら誰でも理解できるつらい中、H氏に言われた言葉が「でもたとえできなかったとしても、僕たちにはTとA(息子達)がいるんだし、それで幸せだと思うことにしよう?もちろん、君は彼らの本当の母親ではないわけだけど…」と。それはもう、私の脳みそがWi-fiでネットにつながってたら、瞬時にSASの日本行きフライトをオンラインブッキングしていたであろうほどのショック、そして怒りでした…。
 バツイチ子持ちとの再婚は、自分が彼との子供を望むとき、たとえ彼が子供を作る事を賛成して喜んでくれていたとしても、それはエクストラの子供、前向きな表現をするなら「ボーナスチャイルド」でしかないのだと悟った、悲しい時期でした。
 またH氏にとっては、元奥さんと離婚して、T3歳、A1歳半の幼児を隔週ごとに一人で9年間育て、やっと子供達もそこまで手がかからなくなり、新しい彼女もできて、さあこれから恋人との時間を楽しむぞ!という時なのです。そこに終ったばかりの「ヒステリーな妊婦の対応」、「赤子の泣き声で寝れない日々」、「山のような洗濯物とおむつ替え」を新しい彼女と繰り返すわけです。気楽に街へ週末繰り出すのも、年に数回のローマやパリなど都会への旅行もまたしばらくおあずけだし、かっこいい車を買うのもおあずけ。子供はかわいいに違いないんだろうし、彼女のために欲しいとも思う、けどまた最初からやり直すのか…という、ちょっとしたトホホ感があるのでしょう。
 私もその彼の気持ちがわからなくもなかったし、でもまだ「家族になりたい」期間からの過渡期だったこともあり、この事実は受け入れるのにだいぶ時間もかかりました。

「子供は欲しいけど、君とはずっと恋人同士の気分でいたい」
 これもまた前述したH氏の「これから第二の青春!」的期待から派生した発言ですが、特に繰り返し言われるようになったのは、いよいよ不妊治療を始めたころからです。
 母親になった、もしくはなると自覚した瞬間から「女」ではなくなり、パートナーも「異性、男」ではなく、子供を作るための人材、父となる人、となってしまうことへの危機感がなぜかH氏は強く、不妊治療に入れ込み過ぎてしまうのも、この恋人同士という二人の関係がもっと機械的、実務的なものに変化してしまうので恐いのだそうです。なんというか西洋的といいますか…。
 さらに「君に限ってはそんなことはないだろうけど、子供が出来て激太りする女の人とか、正直その彼氏やだんなさんが気の毒でしょうがない」とか!「なんで子供を生むとみんなショートヘアにするんだろう。母親になったからってセクシーさを捨てる必要はないのに」とか!!「君みたいな人は子供が出来てもちゃんとメイクをしてワンピースやヒールの靴でおしゃれして出かけるんだろうな。僕はそんな君が誇りなんだ」とか!!!言いたい放題です!!女が身体をとことん犠牲にして子供を生み育ててるってことがわかってない、男の妄想め!首締めてやりたいです…。
 愛されているのはわかる。でも…プレッシャー半端ないっす…!(これを読んだ女性の大半をH氏は敵に回すはず…)

 そんなわけで、長くなりましたので、ここまで前編とし、次回「ま、いっかー」の後編へと続きます。


ある秋の日にHareskovといううちから30分くらいの森に焚き火をしにいってきました。
Æbleskiverという丸いパンケーキを焼いて、ココアを飲んで、秋のヒュゲ。アウトドア野郎のH氏はこういうの大好き。


ココさんは相変わらずいつでも食べ物を狙ってます。


ベイベープロジェクト7~メトフォルミン服用開始!~

2012年12月10日 | 妊娠関係
 前回の謎の水嚢胞発生から1ヶ月経ち、生理が来たので再びクリニックへ。今回は私担当の助産師のヘレの診察です。カルテを読んで、さて水嚢胞はどうなったかと探るべくスキャン。無事に水嚢胞は消失しているとのことで、やれやれ一安心です。

 本来ならここで第4回目(最後)の人工授精の打ち合わせとなる予定だったのですが、ちょっと私なりに調べてみて気になることを彼女に相談してみました。

「実は友達の奥さんが2度目の妊娠がなかなかできず、このクリニックに通ったことがあって、彼女は炭水化物を一切抜いた食生活に切り換えたら3ヶ月で自然妊娠したって聞いたんです。彼女は肥満ではないし、そこまで元々炭水化物過多の食生活だったわけではないんだけど、でもそれでも効果があったのなら、私もちょっと本気でやってみようかなと思って、今完全炭水化物抜きの食事を取ってるんです。
あと日本の産婦人科ジャーナルの論文をネットで見つけて、それによると非PCO患者に対してもメトフォルミンは妊娠の効果があるって書かれてるんですよね。私はPCOの診断はないけど、水嚢胞もできたし、あと母とその兄弟姉妹ほとんど全員2型糖尿病なので、私もなんらかの形でインシュリン抵抗性みたいな傾向があるのかなーって。なので、ものは試しでメトフォルミンを服用してみることはできませんか?」と、もちかけてみました。

 私の提案をじっくり聞いてくれたヘレは、大きく頷いて「そうね、いいかもしれない。やってみましょう」と!

 PCO(正式にはPCOS)とは、多嚢胞性卵巣症候群といって、卵子を包む卵胞が嚢胞性変化(殻が厚くなって排卵しにくい)してしまう、またそういった卵胞がブドウのようにたくさんできてしまう状態なんだそうです。原因は未だ謎だそうで、でもPCOSの人には特徴的な症状として肥満体型であることがあげられます(他にも月経不順やにきびなども)。(詳しくはこちら
 肥満体質では糖代謝異常や、インシュリンなどのホルモン分泌過多であったりするため、どうやら体内インシュリン濃度の影響を強く受けるPCOの治療薬として最も使われているのが、2型糖尿病治療薬である、メトフォルミンなのです。
 メトフォルミンは2型糖尿病治療の第一選択薬で、低コスト、ハイエフェクトな素晴らしい薬。筋細胞でのインシュリン感受性を高め、分泌されたインシュリンを効率よく取り込んで使ってくれるのです。
 2型糖尿病は遺伝性の疾患で、片方の親が2型糖尿病を持っている場合の、子供への遺伝率は40%強。しかもうちの母の出身である鹿児島県や奄美大島は日本の中でも2型罹患者が多い地域で、うちの母の家族は5人兄弟中2型罹患者は4人という、スーパー糖尿病家系です。しかも肥満ではないのに糖尿病ということは、糖代謝やインシュリン感受性が極度に悪いとかなのでしょう。

 そんな背景を説明したところ、ヘレは「通常メトフォルミンは肥満傾向であったり、PCOの診断があったら処方するものだけど、あなたのケースでは試してみる価値があると思う。今始めたっていう炭水化物抜き食と一緒に続けてみたら、自然妊娠も夢じゃないわね」とのことで、この日からメトフォルミン500mgを一日一回服用スタート。

 メトフォルミンの副作用は吐き気、腹痛、下痢、腹満感といった消化器系症状なのですが、私はそういった症状一切なく、楽勝!しかし、急激かつ極度の炭水化物抜き食のせいでケトン体という、糖を燃焼する代わりに脂肪をエネルギーとして燃焼する際にできる物質が発生し、1週間後に再度受診したときに、ヘレにそのことを伝えると「え?!ケトン体?!それはいくらなんでもやりすぎよ!少し炭水化物を食べなさい!」と怒られてしまいました…。やりすぎ…。
 しかもその日からメトフォルミンも一日二回、計1000mgに増量となり、まだ体内にケトン体が残っていたからでしょうか、そこから2日ほどは吐き気と疲労、さらにかつてない下痢に悩まされることに…。今は少し炭水化物も食べているので体調も戻り、好調です。

 結局、ヘレとも話し合い、メトフォルミンと食餌療法の効果が出てくるまで待ち、準備万端になるまで最後の人工授精は取っておくことに決めたので、年明けまで引き続き休憩です。
 なんだか、母が糖尿病だとはいえ、まったく成り行きで選んだ自分の仕事(糖尿病専門ナース)ですが、再婚したH氏は糖尿病(1型)だし、自分の身体にまでこうして関わってくるとは思ってもみませんでした。もうここまで来たら行くとこまで行こうじゃないか、糖尿病人生!(あ、でも自分が糖尿病になることは避けたい…)


トップ写真:
炭水化物ゼロ食のために焼いた「石器時代のパン」。ナッツ、ごま、種数種類、卵でできています。
デンマークでも炭水化物抜き食が流行っていて、まだ小麦や米などの農業が始まっていなかった石器時代の食事(肉食や木の実など中心)のレシピ本などまで出ているほど。