缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

『缶詰の現場から』福井缶詰

2010-08-31 16:14:17 | 取材もの 缶詰の現場から

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福井缶詰の商品の一部(最奥はリリーブランド
同社がノルウェーサバにこだわるのは何故か?

「夏山や 通ひなれたる 若狭人」
 与謝蕪村の俳句であります。
 大汗をかきながらも、山道をすいすい歩んでいく行商人の姿が目に浮かぶようだ。
 この行商人が運ぶのは鯖。ところは鯖街道。
 すなわち、若狭の小浜湾から京都を結ぶ若狭街道のことであります。
 若狭で獲れた鯖にひと塩して、街道を上っていくと、ちょうど京都へ着いた頃合いで、塩が慣れて食べ頃になったという。
 これが世に言う“若狭のサバ”。
 しかし、そんな若狭のサバが、今はほとんど獲れなくなったことをご存じだろうか。
 今回の『缶詰の現場から』は、そんな若狭・小浜湾で、ノルウェー産のサバを使ってサバ缶を作り続ける福井缶詰を取材してきた。




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風光明媚な小浜湾
このすぐ近くに福井缶詰がある




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これが本社及び工場。昭和18年創業であります

「日本も80年代までは500g以上の大サバが獲れていた。それが今はゼロ歳から1歳程度の、小さなローソクサバと呼ばれるサバが多く水揚げされている」
 こう語るのは、同社代表取締役社長の重田軍治氏であります。
 なぜ大きく育つまで待たず、ローソクサバなんぞ獲ってくるのか。それは「オリンピック方式」という、各漁業者が競争するように漁獲する日本のサバ漁に原因がある。
 つまり、先により多く獲った漁業者が儲けるのだ。そして、漁獲した総量が漁獲可能量(TAC)に達したところで
「はい、今シーズンはここまで」
 お上から操業停止の通達が出る。
 これだと、最新の設備(魚群探知機や巻き網など)を持った大規模船団が圧倒的に有利だ。売値が高い大きなサバを先に獲っていく。すると中小規模漁業者は、残されたローソクサバを数多く獲るしかない。
 売値の安い小さいサバだから、漁獲量を増やすしかないわけであります。
 いずれ親となって卵を産むはずのサバまで獲っているのだから、このままでは日本のサバは壊滅してしまう。しかし漁業者としては、生計を立てるためにローソクサバまで獲らざるをえない。
「何と無策な...」
 重田社長はその現状を、深く憂えるのであります。




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同社のサバ缶はすべて手詰めだ

 これに対し、ノルウェーでは2歳魚以下は漁獲できない規則がある。
 ちなみに年齢と体重の関係を大ざっぱに示すと、

 1歳 300g
 2歳 450g
 3歳 550g
 4歳 700g
 ※三重大学准教授・勝川俊雄氏のデータを参照

 当然、大きいほうが売値は高い。つまりノルウェーでは、幼いサバを守りながら大型サバを売って、儲けが出るようにしてるわけだ。
 重田社長も同国を
「漁業の先進国と言える。日本は発展途上と言わざるをえない」
 と残念そうに語っていた。
 何となれば...。
 福井缶詰は、日本のサバ資源を守るためにも、高価なノルウェーサバを輸入して缶詰に使っているのであります。
 しかもノルウェーサバは、脂の乗りが何と日本のサバの約2.5倍ある。そして安全に管理された生け簀で育てられている。
「化学汚染がなく寄生虫もいない養殖魚だから、逆に価値がある」
 ノルウェーはこういう概念を持っているのだ。「天然物こそ最上」とばかりは言ってられないではないか。




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半解凍状態で手詰めされたサバ
半解凍ゆえ調整(切分け)が容易。つまり鮮度が保てる




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まず蒸し煮にする。これはサバ缶では珍しい工程




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蒸して浮いてきた余分な水分・脂分を捨てる
このノウハウが冷凍サバを極ウマに変えるのだ




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 同社のサバ缶を開缶すると、缶汁が澄みきっているのが分かる。
 製造工程に工夫を凝らした証左であります。




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 かくのごとし。
 こってりと脂が乗っているが、飲み込んだ後は口中に残らない。サバ缶好きのあいだでは、同社のサバ缶は
「文句なしにウマい」
 と評判だ。
 そしてこのサバ缶。菱食のリリーブランドからも『旬海庵』というシリーズで出ている。
 つまり、同社はリリーのOEMメーカーでもあるわけだ。




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カニ缶の製造ラインの様子

 さて、そんな福井缶詰はカニ缶でも自信作を持っている。
 同社オリジナルブランド『マーメイド印』の『紅ずわい蟹 脚肉ほぐし』は、重田社長イチオシの缶詰だ。
 兵庫県の香住(かすみ)港で水揚げされた紅ズワイガニを、約3時間で“冷蔵”陸送して、フレッシュパック(生詰め)している。それは
「従来のカニ缶とは一線を画する」
 と重田社長もおっしゃる。果たしてどんなお味なのか、近いうちに当ブログで紹介する予定であります。

 御食国(みけつくに)として、平安時代から朝廷に食料を献上してきた若狭の国。そんな歴史も伝統もある土地で、日本の漁業制度に警鐘を鳴らし、既成概念にとらわれない缶詰作りを続ける福井缶詰。
 そのまっすぐな志、まるで戦国武将のような缶詰企業でありました。

 


ウィルキン&ソンズのレモンマーマレードで缶詰の歴史を知る

2010-08-29 14:10:22 | スプレッド

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英国王室御用達のレモンマーマレード
ちょいとブルジョアな雰囲気だ

 そもそも、缶詰のはじまりは1804年。
 フランスの料理研究家、ニコラ・アペールという人が、料理を瓶詰にしたのが最初であります。

 折しもフランスは激動の時代。
 1789年に勃発したフランス革命にも参加していた彼は
「密閉・加熱すれば食品は腐らないはず」
 と、調理済みの食品を入れた瓶を密閉し、瓶ごと煮沸するという実験を行っていたのだ。
「戦地の兵士たちが、栄養豊富で安全なものが食べられるように...」
 という熱い思いがあったのだと、筆者は推測するのである。それが1794年頃のこと。
 そして、翌年1795年。
 フランス政府が、陸軍の糧食に必要な食品保存技術を募集し始めた。
 ニコラ・アペールはこれまでの研究を元に、1804年にパリ郊外マシーに保存食品製造所を造る。ここで製法を確立した瓶詰で、前述の募集に応募、12,000フランの賞金をもらったということであります。
 つまり、缶詰の原型は瓶詰だったのでありますなァ。




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開缶ならぬ開瓶! 中身が見えてるから感動は少ない

 さて、缶詰の父ともいえるニコラ・アペールは、どんな瓶詰料理を作っていたのか。
 (社)日本缶詰協会では、2004年(缶詰生誕200周年)に、当時のレシピを再現している。
 それにはポトフ、コンソメ、ジュリエンヌ(野菜スープ)、イチゴピューレなどがあるが、イチゴピューレというのはジャムと同じ製法だ。
 何となれば、今日我々が目にする瓶詰ジャムというのは、缶詰の元祖でもあるのだ。




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 かくのごとし。
 爽やかなレモンの酸味が、食欲をそそる。
 そして、舌に残るほのかな皮の苦み。
 その切ない苦みからは、あの激動のフランス革命や、その後のナポレオンの隆盛なぞが想起されてくる。
(ナポレオンはコルシカ島の出身だったのだよな。それがオーストリアやイギリスとの闘いで頭角を現し、ついにフランス皇帝にまで成り上がったんだな)
 筆者は、朝から想像をたくましくする。
 このウィルキン&ソンズはイギリスの商品なのに、フランスの歴史に思いを馳せることも可能なのだ。
 甘さも控えめで、ちょいと美味いもんですぞ。




 内容量:340g
 原材料名:砂糖、レモン、酸味料、ゲル化剤(ペクチン)
 原産国:英国




缶詰博士の缶詰メニューあります!

2010-08-29 11:09:00 | 缶詰のあるお店

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 我が街、お台場。
 江戸時代に砲台を築いたという第3台場(台場公園)方向へ進んでいくと、右手に、夜な夜な地元民が集まってくる店がある。
 それが『大隅田川商店』であります。
[Living&Dining敷地内。その開店当時の記事はコチラ(現在は内容が少々変わっている)]
 ご覧の通り、赤提灯の店であります。
 実はお台場にもこういうところがあるんですなァ。いや、それでこそ、人が実際に住み暮らす街といえる。
 ここはおでん、モツ煮込みなど定番メニューのほか、筆者の考案した缶詰メニューも出してくれているのだ。




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こんな塩梅。おかげさまで好評であります!




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これはサバ味噌煮缶のメニュー
ラー油とすりゴマがポイントだ




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こちらがサバ水煮缶のメニュー
オリーブオイルとポン酢がグー!
どちらも旬の野菜をちょいと添えて




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 これは店主ヒデさん特性のモツ煮込み。350円くらいだったと思う。
 小振りの丼くらいの量があって、旨味の染みた豆腐もたっぷり入ってる。
 モツが苦手な細君にして「これ、すごく美味しい!」と言わしめた逸品であります。
 読者諸賢よ。お台場にいらしたときには、ぜひ立ち寄ってみてくだされ!




9/13発売の週刊プレイボーイに

2010-08-27 09:49:05 | メディア

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 9/13日発売予定の週刊プレイボーイで、全国のご当地缶詰特集をやるのだ。
 巻末のほうで、扉つき5ページであります。
 全国という表現に偽りなし。何と、47都道府県すべての缶詰を取りそろえた。
 この快挙、恐らく日本初だろう。
 その気合いの入った特集に、筆者も写真入りで出てます。
 お相手は料理研究家の森崎友紀どの。
 テレビ朝日の『お願いランキング』に登場する美食アカデミーのメンバーとしても有名な方だ。
 みんな、ぜひ買ってくれよな!




世界初(?)缶詰マジック!

2010-08-23 14:29:53 | イベント・講座

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 昨夜、経堂にある[さばの湯]で、世界初の缶詰&魚肉ソーセージ(ギョニソ)マジックが行われたのだ。
 パフォーマーはナポレオンズのパルト小石師匠。
 マルハニチロ食品の協賛のもと、会場は沸きに沸いたのであります。




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缶詰を使った心理マジック
筆者はまったく見破れず




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ギョニソが自在に上下するマジック
こちらはタネ明かししてもらった
みな大笑いでありました!




 ※経堂系グルメ日記でイベント詳細が読めますゾ。