ハヲ小屋

関心空間ひっこし先

福井ミラビリア

2010-09-25 17:27:01 | 日記
風の盆の八尾より一路、城下町の宿。
露天のぬる湯で節々伸ばすも寝つけぬまま
短い夢をいくつか見て、夜が明けました。
カーテンめくれば靄けぶる町なみ
もうひと眠りを誘います。

目覚ましシャワーすます頃には、上々のお天気
散歩でもしないともったいないですね。
前夜深くまで賑わっていた宿周辺、朝が遅そう。
人っこひとりおらぬ公園、樅の木陰のベンチへ腰掛け
うすぼんやり。 帰ってもっぺん風呂浴びるかな。

戻る道々「元祖・羽二重餅」看板かかげる和菓子屋が
お寝ぼうな町でポツンと店を開けてるのに会いました。
白餡入りのと餡なしの羽二重餅、半々の折詰めいただきます。
  「こちらは、朝早くからやってらっしゃるんですね」
  「んーー…そうですね。 ‥‥ま、うちはこれが普通ですけど」
多分その「んーー」と「そうですね」の間には「この界隈にしては」が入るものと。
さても創業弘化四年(1847年)、伝統の味を守って営々の八代目ご当主
たんたんとしてらっしゃる。 帰って包みをひらくのが楽しみです(とくに白餡入)。
ついでに、このあたりで朝の珈琲に与れる店はないものか伺うと
真裏に一軒たぶん開いてるはず、とのこと。

純喫茶「カファ・ブンナ」、扉のむこうにはすでに先客。
小型テレビに流れるはご当地の天気予報。
お客さんとママさんの残暑ボヤき合いへ侵入路をさぐります。
  「今日も暑くなりそうですねぇ」
  「暑いよーまたこれ」  
  「もうそろそろ暑さも気がすんでもらわないと、しんどいですよね」
  「彼岸までこの調子だってよ」
  「はぁ、まだ気がすむ気配ないのぅ」
語尾に「〜のぅ」がつくのが福井言葉なのかな、おっとりして良いです。
顎肘に具合よく長居カモンなカウンター、ん? 灰皿群の脇に煮干しのタッパーが。
お店マッチもこんなかんじだし…もしや
  「コレは猫ちゃん用ですか?」
  「いや人間様用だよ、ツマんでいいよ」
もうおひとかたご入店になって常連色が増したのをしおに、お勘定願えば
「お気をつけて〜」の声が、余所者の背をほんわりと送ってくれます。
いい町です。

福井といえば「化石」、越前ガニ(も涎だが)の前にまず「化石」。
勝山市には県立恐竜博物館なんかもあって、初の福井行にワクワクでしたが
そっち方面は今回どスルー。 否応なく永平寺へ連行されます。
ぁぁぁ勝山… 地図ではすぐ隣なのに〜〜
や、ひょっとしたら門前からタクシーぶっ飛ばしゃなんとかなるか?
…ざっと見たとこ制限時間内ではムリめ。 トンボ帰りはツラすぎるし!!
博打断念、おとなしく禅寺徘徊に決めました。
池の畔ではナヨい菩薩が、蓮の小舟を出すか止そうか数十年ばかし思案中(違)

大本山永平寺、厳かにはちがいないけど日照のせいか明るくオープンな印象です。
見学コース、かわきりは傘松閣(さんしょうかく)の大広間。
156畳の頭上いちめん格天井、144名の大家による花鳥画230枚どひゃー
ツカミの物量作戦、参拝者を圧倒にかかる。
絵天井のうち、「鯉」と、「お獅子」各2枚に、「栗鼠」1枚(看板画像)を
すべて探しおおせれば何かしらご利益あるとか。噂ですけど。
いちお願掛けときましょう「アニメ『蟲師』第2期もしくは○○○成就!!」。

古刹には曰くがつきものですが、清冽なこのお山にも暗部?
どんより版「永平寺七不思議」脈々語り継がれて、いるとかいないとか。
夜半の風にキィーヒィー哭くという、いかにもな「夜鳴杉」など
七つのうち、雲水さんと門前の娘との恋がらみなのが2フシギ。
厳しい修行に明け暮れる若き雲水さん、200人もいればそりゃなんかあってもね(苦笑)
鮮やかしキューティー広天目さんとか、がちキメキメな四天王きわ立つ総ケヤキの
唐風山門、サイコいや最古を誇るこちらの伽藍にも、哀れなフシギが。
人柱となった棟梁の娘供養か、一本だけ礎石のない柱があるそうです。
とか謂れを知ると、錠前に閉ざされた梯子の行くても何やらその〜(苦笑)
ほかには、仏殿工事中に過って大工が顛落して以来、天井を飛ぶムササビの声が
どうしても「足場くれー足場くれー」に聞こゆ…などいうフシギもありますけど
もういいですか。 書いてておっかなくなってきました。

見学にあたっての注意事項のひとつに「雲水さん撮影禁止」てのがありました。
僧堂脇、柱に隠れて撮ってる人もいましたけどね。気持ちはわかる。
メガネ雲水のキレイさん見かけた折は、自分もちょっと手が疼きましたもの。
お姿ベタ撮りはダメ。 ならコレはどうです?
穢れなき白足袋が履く黒草履、きちんと揃えられた各々の鼻緒に名札。
真新しいのは新人さん、先輩になるほどクタっとして年季が伺えますね。
さまざまな妄想が去来します。

てっぺんにある法堂への階段は、段差こそ低めなんだけれど、果てしなく長くて
途中でくじけそうになりました。
やっと着いたとおもえば、日向に熱された床板がアヂアヂ!
たて続け思わぬ修行を強いられます。
心頭滅却、むりっす。
つま先立って早々退却し、回廊を大庫院(庫裏=台所的なエリア)方面へ下ると
階段の隅、数段おきに床へ鉄製のレリーフが嵌め込んであるのに気づきます。
おそらく上り段にも同じものがあったんでしょうが、ヘロった目には入らず。 
お掃除修行ズルするための掃き出しじゃあるまいし、通気用かなと思いつつ
下りきった廊下の隅へも、所々同様な嵌め込みが。
嵌め込み点在は、いずれも吹きっさらしな階段・廊下
やはり雨露の排水や換気のための溝、ということのようです。
つまりは、硝子が用いられる前代の造築そのままなんですね。
磨き上げらる木目もソフトな床板に錆のひとつもない溝…。
その星霜と、質実なる「美」の有り様にグッときました。

ま、こういう謎な鍵穴にも、容易にグッときちゃうんですけどね。
それとか、古エレベータの階数表示。 ゼロ階って。

昼膳(甘海老と胡麻豆腐がムチャ旨♪)を前に時間が余ったので
冷房の効いた聖宝閣へ、涼みがてら寄ってみました。
怖いほど照明が抑えられたほぼ闇な室内に、点々と仄浮かぶ像や経本。
東博の宝物殿に雰囲気が似かよってます。 真似たネ。
端折った順路の最奥、玉座に3才児サイズな達磨禅師がおられました。
ひと気皆無。 なんとなくその場へ膝折り、ポカンと仰ぎます。
ザンバニ号の天心様に面通しさせられたアキユキの当惑って(←ザムドです。苦笑)
こんなんかなとか邪念いっぱいながらも、向きあってるうち妙に気分が鎮まりかえり
知らず手と手が合わさってました。 して、頭ん中からっぽです。
一礼後、辞すと何かすっきりしている。
わけわからない。
不信心者をもこんな境地へ漂わすとは。 スゲーな達磨禅師。
感服しきりに下る長閑な門前町、ならんだ土産屋のどこかに悲恋の末裔が…
なんてね。 下世話な性分、ミラクル及ばじ(苦笑)

ともあれ、ぺしゃんこな期待がいつかほんわり帳尻戻され
プラスプラスな福井行でした。(長文御免ください)
続いて郡上八幡へ向かいます。
水のまちです。

 * つづく *


福井ミラビリアの画像



坂のまち/灯とり路地

2010-09-19 05:34:37 | 日記


  浮いたか瓢箪 かるそに流るる
  行先ァ知らねど あの身になりたや

耳に憶えの長囃子、いづくの通りを練るものか。
ぼんぼり灯る宵の衣擦れ、 おわら漂う群ら現し。


一年も二百十日の時季、実りをむかえる農作物が
風(颱風?)に倒れぬよう、五穀豊饒祈って行われた“風おさめ”
すなわち「風の盆」とは、さきに一服した喫茶ご常連の言。
だいぶん、きこしめしてらっしゃるようすなのに
お説あたたかく誇りにみちて、拝聴一同「ほぇ〜」でした。
パンフに読んだ由来ごとも、お国言葉で語られると
なお、しんみり胸におちます。

三百年余の歴史をもつという「おわら」の語源には諸説あって
かつて遊芸の達人らが滑稽な変装で町練りした、その謡の語句の
「おわらひ(お笑い)」が「おわら」へ転じたというものや
藁の束が大きくなるようとの豊年の祈りから「大藁」に起源をとる説
八尾に近い「小原村」が出の、とある美しい声の娘が
奉公先で唄った子守唄にちなんだ小原村説などがあるようです。

南北に凡そ3km、縦に長い八尾の町内・十一の支部それぞれに独特な
衣装や踊りを、なるたけしっとり味わってまわりたいところ
長い坂道 雪洞舞台、昼にも増しての人出です。
お練りの両脇なんかはもう、上げた腕を下ろしもできぬ有りさま。
また新人CX-1君(デジカメ)が、からきし言うこときいてくれなくて(苛)
祭り風情、ブレ画像お見せするにしのびなく、コレでご勘弁願うわけには…
ま、それもアレですんで、失敬ついでにチョイとばかしお目よごしを。
娘踊りのこの仕草は、(たぶん)螢を指ししめすもの。
  富山あたりか あの燈火は
  とんで行きたや 灯(ひ)とり虫
こんな節にも唄われましょう。全編けっこう切ないフレーズです。
つづいて若衆の舞う トンビ(未満)。 ああせっかくのキメポーズが〜
(ちなみに、男踊りのキメどころ「カカシ」は こんなふうな傾斜“命”型です)
そぞろ行く好ましいおじさまがたの流し姿なんか、撮っても撮ってもブレブレで(涙)
いいかげんファインダ越しの深追いは止そう。
胡弓の哀切、なめらかな弓さばき、うっとりだ。 ただうっとりしていよう。

灯りの照らす昭和なおもかげ愉しみつつ
辻から辻へ行き会う偶然、のんびり辿りっ端
南がたの旧町で、運よく「輪踊り」に出会えました。
地方衆の奏でる周りを、童らが幼い手足ふるって踊り巡るさまは
なんとも愛らしく、和やかな笑いが人垣にさざなみ立ちます。
浴衣にやや不釣り合いなア・シンメ茶髪の三味線手も、神妙な面もち。
この季節には方々から、おわらに染まりに皆がお里へ帰りなさるのでしょうね。
祭りが終わったあとの八尾は、どんだけ静まりかえるのかしら。

古くは旦那町と呼ばれた艶っぽい通りから、雪洞つたって
町外れの閑散としたあたりに迷い込みました。
看板「カドヤ」を掲げるバラック呑み屋の軒先
路上に並ぶ腰掛けで数人ほど、涼んでいるのは店のお客でもなさそう。
歩き疲れた見物人へひと休みを提供する、気のいい店主のおっちゃんへ
ここは何処のカドなのか、マップを広げ伺ってみます。
ご案内、懇切丁寧。 おっちゃん推奨の見どころは結構おさえて廻れたようですが
集合まで20分余の残り時間内、北エリアまでは網羅できそうにないことが判明。
ならしょーがない、とりあえず冷ゃっこい「風の盆ラムネ」で喉潤し
夕涼みのお仲間にまぜてもらって過ごすとしやしょう。
  「どこから来たの?」
  「東京からです」
お隣のご夫婦は、大阪から車で5時間かけていらしたそうです。
地元でいっぺん見かけた風の盆を現地で観たくてたまらずやって来たと申せば
  「わかるわかる!  来たくなるよね!」
目を輝かして頷かれるお二人、かなりなリピーターさんらしいごようす。
  「ほんとのおわらは、これからなんですよねぇ」
  「そ、これからがいいのよ。明け方までね」
今日はどちらかへ宿を? と尋ねれば、向かいの路肩を顎指し
  「なーに、そこいらへゴザ敷いちゃうのよ」
  「えええマジすか! さすがですねー!」 
笑ってるとこへ「キーンコーンカーンコーン」アラームが鳴りました。
  「ホラ、呼んでるよ」
  「ああ時間切れですねー」
お元気で! と告げ手をふって、おっちゃんに教わった川沿いコースの
ひと気まばらな暗い坂道を下ります。

これより夜どおし、やすらかに、そしていっそう色濃く
おわらは町びとのおわらとなって、彼岸此岸が交叉するのでしょう。
さっき迷った路地むこう、明けてしらじら音曲の掠れゆくを浮かべ
名残惜しく八尾の宵をあとにしました。

明日は人生初・福井です。
  * つづく *

坂のまち/灯とり路地の画像



坂のまち/盆の淡虹

2010-09-13 01:12:39 | 日記
旅立ちは、九月はじめの金曜朝。
なけなしの【休休】使いきる一泊二日弾丸ツアーです。

初日めざすは富山県八尾(やつお)町「越中おわら風の盆」。
三味線、胡弓の哀調によせ、編笠目深な踊り手ゆかしく
行灯並ぶ坂道ぬって、夜を通しの町流し。
世にもしずかなその祭りをいつか現地で…願い叶っての旅路なり。

北陸道、トンネル合間にのぞく日本海は ほぼ青天
内陸に入っては、キント雲に乗ったミシュランマンが
「ハァイ♪」  陽気な挨拶よこします。
ところがです、富山市内へ入るや 上空にわかに重々しく
とうとう雨粒がフロントガラスを叩きはじめました。
胡弓が濡れに弱いため、小雨程度でも中止になるという祭りのこと
あまりよくない兆しです。

現着17時。 小止みながら不穏な曇天。
首クキクキしがてら仰いだ山辺、真正面にアレ!?
おおおおお!!!
灰色を突いて七色が はんなりと袖をあげているじゃありませんか!
  「虹が ! 虹が立ってます!」
  「どこどこ」「あらー♪」「ホント!」
見知らぬ隣人へ思わず告げれば、辺り一斉たちまち伝播。
目にする人の数だけ虹は立ち、見えぬ円弧の果てまでひろがるものですね。

幸先よろしきお出迎えにあずかって揚々、井田川に架かる八尾大橋を渡り
城壁めいた石垣の坂道延々スイッチバックばりに折れて登って、町内へ辿り着くと
演舞は丁度、夕餉の休憩に入ったとこでした。
くまなく巡り立つ行灯、点る刻限ひかえるも佳き風情です。

ひそりと休む通りを抜けたら、いきなりの賑わい。
「日本の道百選」で名高い諏訪町のゆるやかな起伏は
さすが祭りのメイン通りだけあって、ぎっちぎちな人波。うへぇ〜
中腹、空いたあたりでふり返れば、向こうの混雑へ戻る気がしません。
祭り会期の三日間、延べ20万もの人出というふれこみの真なるを目のあたり。
己れも大挙する一人ながら、思惑とちがうごったがえしに少々へこみます。
町流しが始まったら、いったいどういうことに…。

日中の猛暑をとどむ石畳、ぼーーーと霞む眼に秋の草虫がとまりました。
町内かしこ、思い思いの飾りつけの小さな「おもてなし」が隠れているようです。
祭行灯バックに、使い慣れない新調デジカメに四苦八苦(→看板画像)撮っていると
  「なに、こういうの興味あるの?」
作者と思しき小父さま、「他にもあるよ」と母屋からわざわざ‥‥え!?
エビ、ですか(てっきり秋の虫シリーズかと。苦笑)
でも、きれいなバレンシアオレンジ。 材はストローだそうです。お手なみ感嘆。
  「むづかしくないよ、こんなの簡単だよ」
そっぽ向く真顔に嬉しさにじむ小父さま、あんま上手く撮れなくてゴメンね。

夕風待ちに細道をいくつか折れた先、なげやり気味なリサイクル屋を発見。
新旧混然の品は概ねホコリかぶっており、値札という値札が「10円」です。
さっき覗いた町家造りの小奇麗な骨董屋より、断然そそるワンダーランド。
こういうカオス店こそ、思わぬお宝がひそんでたりするんだよな〜
って早速いましたヨ!!
化石か?  なんてキューツなうずまきさんなの。
値を聞けば、店主のおばちゃん「それはダメ。見ていたいからね取っといてんの」
ぐうの音も出やしない。
ま、そりゃそーだ。 自分が主人だって売るもんか。…しかし、欲しいなぁコレ。
「値札が無いのは売りもんじゃないからね!」ダメオシですか。しおしお〜

しおしおの反動から、屋台の串団子むしむし食いつつ土産屋をハシゴ。
奏でる地方(じかた)や踊り手の、食事タイムであるこの2時間は
見物人らの買い物タイムでもあるわけで、祭りも最終日とあっては
露店・土産屋スパートかかって、呼び込みとび交うかきいれどきです。
特大エコバッグはちれきれんばかり、関係各所への菓子折等を猛然と買い漁り
あの人この人こまごまと選って巡って、疲れました。
老舗味噌屋で気つけがわりに一杯もらった冷やし甘酒の、なんと旨いこと!

元気盛りかえす迷い道、件のカオス店を再び通りかかれば
おばちゃん不在で、息子さんらしき兄ちゃんが店番です。
チャンスか? だねだね♪
石の次に気になってた、軒端で薄汚れたバラ模様の蓋付ミニバケツ(10円)をもとめ
値札の無いすてきマッチ箱を「いーよ。あげるよ」とオマケにつけて貰えた勢い
尋ねてみました。 たのむぜ兄ちゃん。ドキドキ…
  「ちなみにコレ(うずまき)おいくらですか」
間髪入れず、店先で談笑中のおばちゃんへ「おかーさーん、コレ売っていいのぉ〜?」
‥‥フリダシだ。

一服つける場所を探した横丁、岡場所ばりなステンドグラスの雑貨屋隣に
地元のたまり場的な、気取りのない喫茶(兼・呑み屋)を見つけ
小上がりの畳へ荷をおろしました。
天井一帯ツルウメモドキに乗っ取られてて、蟲の館な風情もあり。
カウンターにはご常連、奥では粋な姐さんが一服中。 いいかんじです。
ガム抜きのアイスコーヒー啜り、知人へメール返したりして憩っていると
混み合ってきたので、ご新規団体さんへ長卓を譲り、最奥の席へ移ります。
雑然と盛られた民芸品がほぼ侵食し尽すその卓で、背後の団体さん注文に
釣られオーダーしたカレーライスには、福神漬のかわりに紅ショウガが。
これっていわゆるケンミンネタ?
八尾カレー食してまもなく、頭上の古時計がベーンベーン鳴りました。
ややあって別のがボーン、鳩時計ポーポー…
順ぐりに四つ、褪せた音色でおのおの刻を告げ終えます。
  「みんな現役なんですねぇ」
  「そうさ、現役よ」
  「時間差で鳴るのがまたいいですねぇ」

笑顔に送られ荷をしょいなおせば、待ちかねた頬に夕風。
灯る雪洞むこうより、おわらの調べがわたってまいります。

 * つづく *

坂のまち/盆の淡虹の画像