風の盆の八尾より一路、城下町の宿。
露天のぬる湯で節々伸ばすも寝つけぬまま
短い夢をいくつか見て、夜が明けました。
カーテンめくれば靄けぶる町なみが
もうひと眠りを誘います。
目覚ましシャワーすます頃には、上々のお天気。
散歩でもしないともったいないですね。
前夜深くまで賑わっていた宿周辺、朝が遅そう。
人っこひとりおらぬ公園、樅の木陰のベンチへ腰掛け
うすぼんやり。 帰ってもっぺん風呂浴びるかな。
戻る道々「元祖・羽二重餅」看板かかげる和菓子屋が
お寝ぼうな町でポツンと店を開けてるのに会いました。
白餡入りのと餡なしの羽二重餅、半々の折詰めいただきます。
「こちらは、朝早くからやってらっしゃるんですね」
「んーー…そうですね。 ‥‥ま、うちはこれが普通ですけど」
多分その「んーー」と「そうですね」の間には「この界隈にしては」が入るものと。
さても創業弘化四年(1847年)、伝統の味を守って営々の八代目ご当主
たんたんとしてらっしゃる。 帰って包みをひらくのが楽しみです(とくに白餡入)。
ついでに、このあたりで朝の珈琲に与れる店はないものか伺うと
真裏に一軒たぶん開いてるはず、とのこと。
純喫茶「カファ・ブンナ」、扉のむこうにはすでに先客。
小型テレビに流れるはご当地の天気予報。
お客さんとママさんの残暑ボヤき合いへ侵入路をさぐります。
「今日も暑くなりそうですねぇ」
「暑いよーまたこれ」
「もうそろそろ暑さも気がすんでもらわないと、しんどいですよね」
「彼岸までこの調子だってよ」
「はぁ、まだ気がすむ気配ないのぅ」
語尾に「〜のぅ」がつくのが福井言葉なのかな、おっとりして良いです。
顎肘に具合よく長居カモンなカウンター、ん? 灰皿群の脇に煮干しのタッパーが。
お店マッチもこんなかんじだし…もしや
「コレは猫ちゃん用ですか?」
「いや人間様用だよ、ツマんでいいよ」
もうおひとかたご入店になって常連色が増したのをしおに、お勘定願えば
「お気をつけて〜」の声が、余所者の背をほんわりと送ってくれます。
いい町です。
福井といえば「化石」、越前ガニ(も涎だが)の前にまず「化石」。
勝山市には県立恐竜博物館なんかもあって、初の福井行にワクワクでしたが
そっち方面は今回どスルー。 否応なく永平寺へ連行されます。
ぁぁぁ勝山… 地図ではすぐ隣なのに〜〜
や、ひょっとしたら門前からタクシーぶっ飛ばしゃなんとかなるか?
…ざっと見たとこ制限時間内ではムリめ。 トンボ帰りはツラすぎるし!!
博打断念、おとなしく禅寺徘徊に決めました。
池の畔ではナヨい菩薩が、蓮の小舟を出すか止そうか数十年ばかし思案中(違)
大本山永平寺、厳かにはちがいないけど日照のせいか明るくオープンな印象です。
見学コース、かわきりは傘松閣(さんしょうかく)の大広間。
156畳の頭上いちめん格天井、144名の大家による花鳥画230枚どひゃー。
ツカミの物量作戦、参拝者を圧倒にかかる。
絵天井のうち、「鯉」と、「お獅子」各2枚に、「栗鼠」1枚(看板画像)を
すべて探しおおせれば何かしらご利益あるとか。噂ですけど。
いちお願掛けときましょう「アニメ『蟲師』第2期もしくは○○○成就!!」。
古刹には曰くがつきものですが、清冽なこのお山にも暗部?
どんより版「永平寺七不思議」脈々語り継がれて、いるとかいないとか。
夜半の風にキィーヒィー哭くという、いかにもな「夜鳴杉」など
七つのうち、雲水さんと門前の娘との恋がらみなのが2フシギ。
厳しい修行に明け暮れる若き雲水さん、200人もいればそりゃなんかあってもね(苦笑)
鮮やかしキューティー広天目さんとか、がちキメキメな四天王きわ立つ総ケヤキの
唐風山門、サイコいや最古を誇るこちらの伽藍にも、哀れなフシギが。
人柱となった棟梁の娘供養か、一本だけ礎石のない柱があるそうです。
とか謂れを知ると、錠前に閉ざされた梯子の行くても何やらその〜(苦笑)
ほかには、仏殿工事中に過って大工が顛落して以来、天井を飛ぶムササビの声が
どうしても「足場くれー足場くれー」に聞こゆ…などいうフシギもありますけど
もういいですか。 書いてておっかなくなってきました。
見学にあたっての注意事項のひとつに「雲水さん撮影禁止」てのがありました。
僧堂脇、柱に隠れて撮ってる人もいましたけどね。気持ちはわかる。
メガネ雲水のキレイさん見かけた折は、自分もちょっと手が疼きましたもの。
お姿ベタ撮りはダメ。 ならコレはどうです?
穢れなき白足袋が履く黒草履、きちんと揃えられた各々の鼻緒に名札。
真新しいのは新人さん、先輩になるほどクタっとして年季が伺えますね。
さまざまな妄想が去来します。
てっぺんにある法堂への階段は、段差こそ低めなんだけれど、果てしなく長くて
途中でくじけそうになりました。
やっと着いたとおもえば、日向に熱された床板がアヂアヂ!
たて続け思わぬ修行を強いられます。
心頭滅却、むりっす。
つま先立って早々退却し、回廊を大庫院(庫裏=台所的なエリア)方面へ下ると
階段の隅、数段おきに床へ鉄製のレリーフが嵌め込んであるのに気づきます。
おそらく上り段にも同じものがあったんでしょうが、ヘロった目には入らず。
お掃除修行ズルするための掃き出しじゃあるまいし、通気用かなと思いつつ
下りきった廊下の隅へも、所々同様な嵌め込みが。
嵌め込み点在は、いずれも吹きっさらしな階段・廊下
やはり雨露の排水や換気のための溝、ということのようです。
つまりは、硝子が用いられる前代の造築そのままなんですね。
磨き上げらる木目もソフトな床板に錆のひとつもない溝…。
その星霜と、質実なる「美」の有り様にグッときました。
ま、こういう謎な鍵穴にも、容易にグッときちゃうんですけどね。
それとか、古エレベータの階数表示。 ゼロ階って。
昼膳(甘海老と胡麻豆腐がムチャ旨♪)を前に時間が余ったので
冷房の効いた聖宝閣へ、涼みがてら寄ってみました。
怖いほど照明が抑えられたほぼ闇な室内に、点々と仄浮かぶ像や経本。
東博の宝物殿に雰囲気が似かよってます。 真似たネ。
端折った順路の最奥、玉座に3才児サイズな達磨禅師がおられました。
ひと気皆無。 なんとなくその場へ膝折り、ポカンと仰ぎます。
ザンバニ号の天心様に面通しさせられたアキユキの当惑って(←ザムドです。苦笑)
こんなんかなとか邪念いっぱいながらも、向きあってるうち妙に気分が鎮まりかえり
知らず手と手が合わさってました。 して、頭ん中からっぽです。
一礼後、辞すと何かすっきりしている。
わけわからない。
不信心者をもこんな境地へ漂わすとは。 スゲーな達磨禅師。
感服しきりに下る長閑な門前町、ならんだ土産屋のどこかに悲恋の末裔が…
なんてね。 下世話な性分、ミラクル及ばじ(苦笑)
ともあれ、ぺしゃんこな期待がいつかほんわり帳尻戻され
プラスプラスな福井行でした。(長文御免ください)
続いて郡上八幡へ向かいます。
水のまちです。
* つづく *
露天のぬる湯で節々伸ばすも寝つけぬまま
短い夢をいくつか見て、夜が明けました。
カーテンめくれば靄けぶる町なみが
もうひと眠りを誘います。
目覚ましシャワーすます頃には、上々のお天気。
散歩でもしないともったいないですね。
前夜深くまで賑わっていた宿周辺、朝が遅そう。
人っこひとりおらぬ公園、樅の木陰のベンチへ腰掛け
うすぼんやり。 帰ってもっぺん風呂浴びるかな。
戻る道々「元祖・羽二重餅」看板かかげる和菓子屋が
お寝ぼうな町でポツンと店を開けてるのに会いました。
白餡入りのと餡なしの羽二重餅、半々の折詰めいただきます。
「こちらは、朝早くからやってらっしゃるんですね」
「んーー…そうですね。 ‥‥ま、うちはこれが普通ですけど」
多分その「んーー」と「そうですね」の間には「この界隈にしては」が入るものと。
さても創業弘化四年(1847年)、伝統の味を守って営々の八代目ご当主
たんたんとしてらっしゃる。 帰って包みをひらくのが楽しみです(とくに白餡入)。
ついでに、このあたりで朝の珈琲に与れる店はないものか伺うと
真裏に一軒たぶん開いてるはず、とのこと。
純喫茶「カファ・ブンナ」、扉のむこうにはすでに先客。
小型テレビに流れるはご当地の天気予報。
お客さんとママさんの残暑ボヤき合いへ侵入路をさぐります。
「今日も暑くなりそうですねぇ」
「暑いよーまたこれ」
「もうそろそろ暑さも気がすんでもらわないと、しんどいですよね」
「彼岸までこの調子だってよ」
「はぁ、まだ気がすむ気配ないのぅ」
語尾に「〜のぅ」がつくのが福井言葉なのかな、おっとりして良いです。
顎肘に具合よく長居カモンなカウンター、ん? 灰皿群の脇に煮干しのタッパーが。
お店マッチもこんなかんじだし…もしや
「コレは猫ちゃん用ですか?」
「いや人間様用だよ、ツマんでいいよ」
もうおひとかたご入店になって常連色が増したのをしおに、お勘定願えば
「お気をつけて〜」の声が、余所者の背をほんわりと送ってくれます。
いい町です。
福井といえば「化石」、越前ガニ(も涎だが)の前にまず「化石」。
勝山市には県立恐竜博物館なんかもあって、初の福井行にワクワクでしたが
そっち方面は今回どスルー。 否応なく永平寺へ連行されます。
ぁぁぁ勝山… 地図ではすぐ隣なのに〜〜
や、ひょっとしたら門前からタクシーぶっ飛ばしゃなんとかなるか?
…ざっと見たとこ制限時間内ではムリめ。 トンボ帰りはツラすぎるし!!
博打断念、おとなしく禅寺徘徊に決めました。
池の畔ではナヨい菩薩が、蓮の小舟を出すか止そうか数十年ばかし思案中(違)
大本山永平寺、厳かにはちがいないけど日照のせいか明るくオープンな印象です。
見学コース、かわきりは傘松閣(さんしょうかく)の大広間。
156畳の頭上いちめん格天井、144名の大家による花鳥画230枚どひゃー。
ツカミの物量作戦、参拝者を圧倒にかかる。
絵天井のうち、「鯉」と、「お獅子」各2枚に、「栗鼠」1枚(看板画像)を
すべて探しおおせれば何かしらご利益あるとか。噂ですけど。
いちお願掛けときましょう「アニメ『蟲師』第2期もしくは○○○成就!!」。
古刹には曰くがつきものですが、清冽なこのお山にも暗部?
どんより版「永平寺七不思議」脈々語り継がれて、いるとかいないとか。
夜半の風にキィーヒィー哭くという、いかにもな「夜鳴杉」など
七つのうち、雲水さんと門前の娘との恋がらみなのが2フシギ。
厳しい修行に明け暮れる若き雲水さん、200人もいればそりゃなんかあってもね(苦笑)
鮮やかしキューティー広天目さんとか、がちキメキメな四天王きわ立つ総ケヤキの
唐風山門、サイコいや最古を誇るこちらの伽藍にも、哀れなフシギが。
人柱となった棟梁の娘供養か、一本だけ礎石のない柱があるそうです。
とか謂れを知ると、錠前に閉ざされた梯子の行くても何やらその〜(苦笑)
ほかには、仏殿工事中に過って大工が顛落して以来、天井を飛ぶムササビの声が
どうしても「足場くれー足場くれー」に聞こゆ…などいうフシギもありますけど
もういいですか。 書いてておっかなくなってきました。
見学にあたっての注意事項のひとつに「雲水さん撮影禁止」てのがありました。
僧堂脇、柱に隠れて撮ってる人もいましたけどね。気持ちはわかる。
メガネ雲水のキレイさん見かけた折は、自分もちょっと手が疼きましたもの。
お姿ベタ撮りはダメ。 ならコレはどうです?
穢れなき白足袋が履く黒草履、きちんと揃えられた各々の鼻緒に名札。
真新しいのは新人さん、先輩になるほどクタっとして年季が伺えますね。
さまざまな妄想が去来します。
てっぺんにある法堂への階段は、段差こそ低めなんだけれど、果てしなく長くて
途中でくじけそうになりました。
やっと着いたとおもえば、日向に熱された床板がアヂアヂ!
たて続け思わぬ修行を強いられます。
心頭滅却、むりっす。
つま先立って早々退却し、回廊を大庫院(庫裏=台所的なエリア)方面へ下ると
階段の隅、数段おきに床へ鉄製のレリーフが嵌め込んであるのに気づきます。
おそらく上り段にも同じものがあったんでしょうが、ヘロった目には入らず。
お掃除修行ズルするための掃き出しじゃあるまいし、通気用かなと思いつつ
下りきった廊下の隅へも、所々同様な嵌め込みが。
嵌め込み点在は、いずれも吹きっさらしな階段・廊下
やはり雨露の排水や換気のための溝、ということのようです。
つまりは、硝子が用いられる前代の造築そのままなんですね。
磨き上げらる木目もソフトな床板に錆のひとつもない溝…。
その星霜と、質実なる「美」の有り様にグッときました。
ま、こういう謎な鍵穴にも、容易にグッときちゃうんですけどね。
それとか、古エレベータの階数表示。 ゼロ階って。
昼膳(甘海老と胡麻豆腐がムチャ旨♪)を前に時間が余ったので
冷房の効いた聖宝閣へ、涼みがてら寄ってみました。
怖いほど照明が抑えられたほぼ闇な室内に、点々と仄浮かぶ像や経本。
東博の宝物殿に雰囲気が似かよってます。 真似たネ。
端折った順路の最奥、玉座に3才児サイズな達磨禅師がおられました。
ひと気皆無。 なんとなくその場へ膝折り、ポカンと仰ぎます。
ザンバニ号の天心様に面通しさせられたアキユキの当惑って(←ザムドです。苦笑)
こんなんかなとか邪念いっぱいながらも、向きあってるうち妙に気分が鎮まりかえり
知らず手と手が合わさってました。 して、頭ん中からっぽです。
一礼後、辞すと何かすっきりしている。
わけわからない。
不信心者をもこんな境地へ漂わすとは。 スゲーな達磨禅師。
感服しきりに下る長閑な門前町、ならんだ土産屋のどこかに悲恋の末裔が…
なんてね。 下世話な性分、ミラクル及ばじ(苦笑)
ともあれ、ぺしゃんこな期待がいつかほんわり帳尻戻され
プラスプラスな福井行でした。(長文御免ください)
続いて郡上八幡へ向かいます。
水のまちです。
* つづく *