Along with the Mekong

メコン川の流れのように

免状という商品

2008年02月11日 | アメリカネタ
かくしてハードながらも充実した5日間は終わった。このトレーニングは8科目22のテストからなっていて、全部のテストにパスすれば、アメリカの業界団体からカッピングジャッジとして認証される。認証されたからって、ワタシの場合、何に役に立つということもないけれど、その認証が欲しくなかったといえば嘘になる。だから、受講を申し込む前に、係ったことのある人たちにリサーチして、「難しいとはいうけれど、ふつーならば受かる」という結論に達していた。そこに慢心がなかったとはいえないが・・・・ワタシは、落ちた。22のテストのうち、味覚感度テストのPart3ひとつを落として。

実はこの認証のお免状、日本の業界団体が主催するツアーでトレーニングに参加すると、大抵いただいていらっしゃる、すごく合格率の高いもの。だから、「ふつーなら受かる」と言われたわけで、ワタシはフツー以下であることがこの際証明されてしまった・・・くすん・・・

日本でリサーチした合格基準と違うよなぁ、というのは大きな「?」ではあったけれど、たとえどんな条件でも、ちゃんと点数を取れば合格できたわけだし、トレーニングはすごく勉強になったし、とにかく、自分の無能を認め謙虚になろう、と帰国した。ツアー受講だと、認証は受けられなくても発行される「受講修了書」もいただけず、paidのスタンプが押された領収書だけが、ワタシが受講した証拠だった。ちょっとわびしいかも。

謙虚に謙虚に、と思っていたけれど、帰国して日を追うごとに、だんだん情けなく、悲しくなってきた。そんなワタシに試験官から、最終結果を知らせるメールが届いた。「Congratulation !」とあった。「おめでとう。あと味覚感度テストPart3ひとつだけであなたはカッピングジャッジです」と。

ワタシは、「アナタもご存知のように大抵の日本人は合格しています。けれどワタシは落ちました。恥ずかしくて仕方ないのに、アナタが「おめでとう」という意味がわかりません」と返信した。

そして届いた返信---「覚えておいて。あのmethodでならあなたはすべてのテストにパスし、ジャッジに認証されていました」という、ワタシを励ますつもりだったかもしれない彼の言葉は、逆に火に油を注ぎ、ワタシはこの言葉にブチギレた。「methodが違うってドーイウコトヨー!!」

ワタシタチは、22のテストすべてをパスすることが課せられた。けれど、「日本人団体」だと2科目4テスト、生豆の鑑定と味覚感度だけパスすれば認証のお免状がいただけるのだ。その上、各テストのPassing Score(合格基準点)が、団体だと2割ほど低い。これがただのmethodの違い!?こんなに合格基準が違っていて、それでもおんなじ認証の免状が発行されるって、おかしくない?

「団体」は日本人団体だけではない。ワタシが受講するたった一週間前に中米のある国の団体受験があったけれど、その基準も、すべてのテストにパスすることとはなっていたけれど、各テストの合格基準点は「団体割引」だった。それにしても日本人団体様向けのディスカウント率は大きい・・・ 馬鹿にされているんじゃないのか、日本人!?と、腹が立つ。

受講中のある日、ワタシは、「認証だけだったら、生豆鑑定と味覚感度の二つだけパスすればいいんだよね」と口走り、みんなに「ありえない」と反論された。「コーヒーのカッピングジャッジが、カッピング能力に関係なく認証されるはずがない」ともっともな意見が出て、また、すでにこの2科目はクリアしていて、他の科目のために今回リテイクしている参加者がいたことで、ワタシの発言は誤解だということで落ち着いた。この「ありえない」基準で認証されているジャッジが日本に100人もいることを知ったら、彼らはどう思うのだろう・・・

「あのmethod」発言にブチギレたmameはしつこく試験官にメールし、彼は「アレはもう古いmethod」と返信してきた。「古い」って一週間前だって、そうだったジャン、と思ったけれど、もうこの話はここでやめることにした。ワタシは落ちたのだ。その事実は変わらない。いくら騒いだところで、恨み言にしかならない。そもそもワタシのような一匹狼が何を言ったって、相手はびくともしない。ごまめの歯軋り。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

業界団体同士の「取引」なんだろうか。なんのための?この認証を普及させるための?ワタシにはわからない。受講者もこんなことは知らないはずだ。望んでもいないのに勝手に設定された現地より低い基準で認証のお免状を「買わされて」しまった日本人受講者も、ある意味被害者だと思う。馬鹿にするな、ちゃんと勝負させろ、自分はちゃんと規定の基準で合格する力があるゾ、という人もいるだろう。そう思いたい。

大学時代の恩師は、「アメリカは免状を商品にするのが好き 卒業の免状も博士号も」といって、その免状の価値、免状発行団体の信頼性をきちんと確認しないで受験したのはワタシの落ち度だとも指摘された。ごもっともでございます。

ブラジルのコーヒー鑑定士プログラムの関係者は、「今や日本からの団体には受講時間が足りなくてもなんでも鑑定士の免状を出すようになっている それでも日本人受講者は増え続け、年に3回もコースを開催することもある アメリカはそうはならないと思いたい」と、日本人の「免状」に対する執着とそれを商売にする業界団体という、現状を嘆くメールをくれた。

日本のコーヒー関係者にこんなことを訴えるつもりはない。ワタシは所詮「落第したゴマメ」なのだ。誰がまともに聞いてくれるというのだ。そう思うと、合格してきたかった、と強烈に思う。ちゃんと予習していかなかったのは、ワタシの慢心以外の何ものでもない。反省している。もう遅いけど・・・

せっかく、いい勉強になったと思って帰国したのに、トレーニングそのものは本当に有意義だったのに、なんとも後味の悪い展開になった。ま、そんなことはないと思うけど、もしも、もしも、近々実施される日本人の団体受講の合格基準が、ワタシが受けたのと同じになっていたら、ワタシの歯軋りも少しはどこかに届いたことになるのかしらん、と思ったりする。そんなこと、ないだろうけれどね。

業界団体って、ワタシなどには思いつかない価値観と力で動いている。いまさらだけれど、そんなことがわかったのも、収穫といえば収穫だったかも。そしてワタシは自分をどこにポジショニングするのか、ちゃんと自覚しなくていけないということも、ようやく理解できた。(なんたる知恵遅れ) ワタシは、商品としての免状を買えるような場所には生涯座れないことは確かなのだから。

ということで、mameのアメリカ修行のご報告はここまで、でございます。
長々と読んで下さって、ありがとうございます。ではでは。

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