今日は三郷中央総合病院で、パーキンソン病の学術講演会がありました。
脳神経内科の志村 秀樹先生が御講演してくださいました。
パーキンソン病(PD)はドパミン神経が変性脱落する神経疾患で、患者数は20万人と言われています。
”振戦、固縮、無動、姿勢反射障害”の4つの運動障害が有名ですが、
自律神経障害、精神障害(幻視、妄想、アンヘドニアなど)、便秘、汗、
起立性低血圧などの症状も見られます。
発症から3~5年は薬の効きがよいのですが、それ以降は薬の効きが落ちてきます。
理由については後述します。
最近の研究では、prePDとして、精神障害、自律神経障害、睡眠障害などが見られ、その後
パーキンソン特有の運動障害が起こりPDと診断されるケースが多いことがわかってきました。
そして早めに治療を開始することが、PDの進行を遅らせることができるとわかり、現在も
どの時点で治療を開始するのがよいのか研究が進められています。
運動障害についてはヤール重症度分類というものがあり、ステージ1(軽症)~ステージ5(重症)の
5段階を16年ぐらいで進行していきます。
ステージ5は重症で歩けなくなった状態ですが、パーキンソン病そのもので歩行困難になるより
骨折や肺炎など他の要因で歩けなくなるケースがほとんどです。
薬の治療としては、
�ドパミン補充療法:パーキンソン病はドパミンが不足して起こる病気なので、ドパミンを補充する方法。
ただし、ドパミンは直接脳に入らないので、前駆物質であるL-Dopaを脳内でドパミンに変換して補充します。
ドパミン神経細胞が変換するのですが、パーキンソン病の人は発症時ですでにドパミン神経自体が
20~30%しか残っておらず、5年ぐらい経つとさらに減り、薬が効かなくなるというわけです。
早期に開始すれば、運動障害など速やかに改善するため、積極的に使用するとよいようです。
�ドパミン受容体刺激:効果が出るまでに1~2カ月かかりますが、ドパミン補充療法と
併用することで効果が高まります。
�抗コリン薬:パーキンソン病ではドパミンが減ることで相対的にアセチルコリンが増加しているため、
使用されてきました。ただし、認知症の発症リスクが高くなると言われており、最近はあまり
使用されなくなってきました。
�ノルアドレナリン補充療法:立ちくらみなどの症状の改善に使用されます。
早期に治療開始すればよいと書きましたが、適量に注意が必要です。
薬の量が多すぎるとジスキネジアなどの副作用が現れることがあるのです。
また、パーキンソン病の発症から年数がたつと同じ薬剤量でも、wearing off(薬の効果がきれ
動きが悪くなる状態)やジスキネジア(不随意運動)などの副作用が起こりやすくなります。
そういった場合には長時間作動型、持続型にすることで副作用を軽減することが
できます。
最近はパーキンソン治療の客観的評価として、歩行分析計による評価が研究されています。
"5m歩行"短時間の測定と"2泊3日"長時間の測定があります。
短時間測定では歩行の質、左右には動くが前後上下の動きが悪いなどをみます。
長時間の測定ではすくみ足の頻度を検出し、日内変動を調べたりすることができます。
薬が切れるとすくみ足がでるので薬を服用するタイミングを調整したり、朝がすくみ足が
酷い場合には朝の薬の量を増やすなどの対策をとることができます。
将来的には多くの人に、より細やかな治療が期待できますね。