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「アートなジャケット」記事と超個人的主観による「アートなジャケット」年度表彰を行うブログです。長期休暇より復活!

King Crimson / Condensed 21st Century Guide To King Crimson: 1969-2003

2017-03-05 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●青天の霹靂というか、1月末にジョン・ウェットンが亡くなった。これでグレッグ・レイクと共に「ヴォイス・オブ・キングクリムゾン」の両翼がいなくなったと思う方々は「おじさま世代」なのだろう。もうアーティストの訃報に驚きはなく、半ば達観したような部分もある。謂わば「ロックの死」は近く、クラシック音楽がそうであるように60年以降のポップス&ロックは今後同じ曲を誰かが何度もカヴァーして生き残っていくという所謂「ロックのクラシック化」の時代を迎えているのだろう。

 ジョン・ウエットンの面影を辿る時、アルバム「レッド」前後の溌剌と若かった頃が最も印象的。ジョンがお洒落にチョーカーをしている優男的な姿は「ロック=若さ」なのだと改めて思うのだ。(他の復活したバンドのDVDも最近はいろいろ発売されているけれど、いずれも何一つカッコ良さを見いだせない。自分自身の体型はどうなのだと自問してしまうが)その後のバンド[UK]もまた若々しさとテクニックと攻撃性を併せ持った作品群であり、その後到達したバンド[エイジア]においては、「最も難しい音楽はメロディアスな音楽である」ことを証明して見せた。これは退行ではなく進化だと断言できる。「人は難解なものにより興味を煽られる」という性癖に対するアンサーとして、また、楽器を操る者が最も難解だとする「覚えやすくシンプルで印象的な旋律ほど作りにくいものは無い」という部分において、この難題をも凌駕してしまった男の境地というものは如何なるものだったのか。彼もまた「やり遂げた人は天に召される」という宿命において、輝かしい音楽キャリアにピリオドを打ったのだ。

 二人のヴォーカリストの軌跡を辿るべくファースト・アルバムの重厚な見開きジャケットを開くとき、そこにひとつの名曲あり。「風に語りて」である。詩人ピート・シンフィールドのペンなるこの佳曲は、その難解さがウケて、未だにネット上でも対訳や個人的な解釈が成され続けていて喧しい。あらためて二人のヴォーカリストの死を通して、この歌詞を鑑みればある解釈に行き着いた。「風に語りかけているのは、死後の自分では無いのか?」そんなふうに感じたのだ。先に旅立ったグレック・レイクが遅れて来たジョン・ウェットンに「やあ、どこにいたんだい?」と問いかけると、ジョンは「いろんなところにいたよ」と音楽遍歴を語る。風=世間と訳すなら、巷に私の音楽は様々な手段で受け継がれ流れては行くけれど、それは風に語るようなようなもので、今となっては誰も答えてはくれないと嘆いている。そして決定的なのは、「外(死後)の世界にいて、中(現生)を見てみると、混沌として何と幻滅を覚えることばかりなんだろう」と結ばれて行く(あくまでこちらも私的な解釈ではあるのだが・・・)。そう考えると涙無しには聴けない名曲であり、この機会におじさま方にぜひ再聴していただきたいものだ。

 キング・クリムゾンのアルバム・ジャケットはこのブログでも一応外せない名作として「クリムゾンキングの宮殿」を取り上げているが、最近このクリムゾンのジャケットに頻繁に起用されているイギリスの女流画家パメラ・ジューン・クルックさん(現在御年70歳)のイラストが「アート」してる。ミニマル・ミュージックを標榜した[ディシプリ]以降はキング・クリムゾンではないという頑固なファンも多いが、最近は彼らもまた第1期の頃のハードで繊細な音楽に戻ってきたりしている。彼女の絵がロバート・フィリップに気に入られて最初にジャケットに採用されたのが、1998年のことなので、考えてみればかなり古いお付き合いということになる。様々な作品の中から、今回のテーマにふさわしいベスト盤のジャケットに採用された作品にスポットを当ててみた。古いファンの方にもクリムゾンにしっくりくるこの絵画タッチは自然と認めてしまっているのではないだろうか?
 新聞を読みふける人々を描写した絵は、恐らく日本の満員電車でスポーツ新聞を広げる光景にインスパイアされたものと同じと思われるが(どちらが先に描かれたかは筆者は存じ上げない)全く同じ構図だ。(昨年、諸橋近代美術館で開かれたpjクルックさんの個展の際に出品されていたと思われる)彼女の手法は頭の中に入った映像を増幅させてそれらをファンタジーにしてしまう手法である。この点は多くのプログレ・ミュージシャンとの共通点も多いのでは?

(以下、クルックさんのクリムゾン作品!※順不同)




























 
 
 





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