New Vinyls!ニュー・ヴァイナルズ

「アートなジャケット」記事と超個人的主観による「アートなジャケット」年度表彰を行うブログです。長期休暇より復活!

chicago/VI

2015-06-19 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●「シカゴ」の現在のロゴマークはファースト・アルバムの「CHICAGO TRANSIT AUTHORITY」(シカゴ交通局)のジャケットの一部分に既に意匠化されている(Nick fasciano作)。セカンド・アルバムでグループ名を変更したのを機にロゴデザインも現在のものに変更されている。以降ずっとアルバム・ジャケットにこのロゴを使用している(これは記録的)。

 シカゴのロゴ・マークを様々な素材に同化させることでデザイン的な面白さを演出しているが、その素材は多岐に渡っている。木から始まって、金属、星条旗、皮革、プールさらにはICチップ、梱包材、高層ビルとキリが無い。実は素材としては「木」が2回登場する。1回目は上記のファースト・アルバム、そして「サタデー・イン・ザ・パーク」などの名曲を収録した5作目も「木彫り」である。個人的にはカーネギーホールでのライヴを完全収録したライヴ盤の「レリーフ」素材も捨てがたいが、今回は紙幣をデザインした「VI」を推してみた。このロゴデザインそのものは、70年代のサイケデリックな文字体ではあるけれど、バランスと躍動感が半端ない-完成された文字デザインの最高峰である。

紙幣をデザインしたジャケットは当初は見開きになっていて、開けるとド迫力だが、実は紙幣の表面が本物の紙幣のようにザラっとした感触を持っていた。このリアルさ、最高!本アルバムの前後からシカゴは一旦自らのルーツでもあるジャズに帰還した後、「ラヴソング」路線に大きく舵を切る。実は、サード・アルバムまでシカゴ自体がかなり政治色の強いメッセージ・バンドだったと記憶している。確かにそういった歌も多く歌っている。しかしながら後日談で、あの当時政治色を色濃く出すことで、より世間の注目を集めるだろうという売り込み手段だったと聞いた時には相当がっかりした。

「なんだ本心から政治のことを歌っていたのでは無かったのか・・・」という思いと、だがそうすることでアメリカの若者に政治に興味を持たせるという大きな役割を担ったのだと評価する二つの思いが交差している。日本に今必要なのはそうしたメッセージソングではないのか?政府は拙速に自衛隊法を改憲までして成就させようとしている。こんな蛮行は民主主義以前の問題だ。万が一、自衛隊が有事の際には、賛成した政治家全員が自らジャンヌ・ダルクのように最前線で旗を振ってもらわねば困る。それが責任というものだ。いつも弱者の上に立とうとするものは、人を盾にする。原発だって国会議事堂の横に設置されてはじめて意味があるものだ。こんなことを書けば危険人物としょっぴかれるかも知れないが、今や全国民誰もが黙っておれない状況になりつつある。人には出来ることがある。いや、しなくてはならないことがある。これを表明することが自分の役割なら、現代の音楽家たちはこれを歌に託す必要がある。ラブソングの一部を返上してでも声をあげて欲しいと願っている。それはきっと後の世になって時代が評価してくれることなのだから。決して素手で外交をしろなどという子供じみたことは言っている訳では無い。多くのことは国民の総意があって初めて決せられることなのだから・・。今無党派層の子供たちや保守的な老人たちを奮い立たせるのは、こんなちょっとしたことから始まるのかも知れない。シカゴがそうであったように・・・。
 音楽で世界を変えられると信じていた世代かも知れない。嘘くさいと言われるかも知れない。こんなちっぽけな音楽市場になってしまったけれども、でもまだ音楽の力を信じている「音楽はマジックなのだから!」


https://www.youtube.com/watch?v=mR6BeerSSWw
「The Whole World is Watching!」「The Whole World is Watching!」「The Whole World is Watching」・・・・
「CHICAGO TRANSIT AUTHORITY」より♪「Prologue / Someday August 29, 1968」






Bon Jovi / Slippery When Wet

2015-06-11 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●86年のアルバム発売時に「卑猥」だとしてジャケット変更をした(という・・・真偽のほどは不明)このジャケット。本国では今尚別のデザインになっている。日本では上記写真のようにオリジナルのジャケットが採用されているが、今もってこのジャケットのどこがいけないのか?不明である。海外では時々こういうことが起きる。ロキシーミュージックのあるジャケットも「卑猥」だとして物議を醸したが、どうやら日本人と外人では「卑猥」の定義が若干違うようだ。外人はと云うとそのもズバリより、そこから想像されるものを問題視するようだ。しかしながら日本人に言わせれば「それは考えすぎだろ」となる。

 2800万枚を売り上げたモンスター・アルバムは正に「我が家に1枚」的な作品だが、ではこれを「アートか?」と問われると、いささか困ってしまう。「う~ん」と唸ってしまう・・・。顔はブちぎれているし、黄色のタンクトップにピンクの縁取りそして意味深な「Slippery When Wet 」(滑りやすいので注意)アメリカン・ジョークか?ともあれ、そんなことはどうでも良い。かつてジョン・ボン・ジョヴィが発言したことに敬意を払ってこのジャケットを取り上げてみた。ちょっと主旨が違うがお許し願いたい。このブログの語りたい部分が代弁されている。そして、音楽の何かを知っている者だけが語ることのできる重要なことが語られている。

“Kids today have missed the whole experience of putting the headphones on, turning it up to 10, holding the jacket, closing their eyes and getting lost in an album; and the beauty of taking your allowance money and making a decision based on the jacket, not knowing what the record sounded like, and looking at a couple of still pictures and imagining it. God, it was a magical, magical time. I hate to sound like an old man now, but I am, and you mark my words, in a generation from now people are going to say: ‘What happened?’. Steve Jobs is personally responsible for killing the music business.”

要約するとこんな感じか?

「今の子供たちは、ヘッドホンを着けて、ヴォリュームを10にして、ジャケットを手に取り、瞳を閉じて、アルバムの世界に迷い込む…そんな一連の体験をする機会を失ってしまった。さらに云えば、自分にある限られたお金でレコードを買うという美学、買う時はアルバムのサウンドさえわからないのにジャケットを見て選ぶという期待感、選ぶ時はジャケットに描かれてる絵や数枚の写真とにらめっこして想像をふくらます…そんな行為さえ失ってしまってる。だけど、それが素晴らしかったんだ、例えようのない魔法の時間さ。こんなことを言って年寄り扱いしてほしくないけど、実際はすでにそうなのかも。でも僕が言ってることを覚えていてほしい。未来の人達は「一体、どうなってるんだ?」って言うだろうね。スティーブ・ジョブズには音楽ビジネスを破壊した個人的責任がある。」

これはスティーヴ・ジョブズに対して2011年に言い放った言葉であるけれど、今私はこれを実感を持って受け止めている。昨今の洋楽事情を見ても惨憺たる状況だ。問題はジョンが語ったように、音楽ビジネスについて問題が起こっていることだ。皆さんもご存知の通り、音楽は強力なスポンサーがいなければ成り立たない「文化」である。かつては王族がこのスポンサーを担っていた。テクニックのあるもの、評判の高い者を召し抱えて、競わせる。そうしてあの超絶的なクラシック音楽は完成された。クラシックはやがて王族が消えることで運命を共にする。

では、現代のポピュラーミュージックはどうなのか?スポンサーはオーディエンスのはずだ。お客様がレコードを買うことでアーティストは自らの才能を生かして成長する。更にはレコード会社にその余力を与えることで、お金の潤沢ではない新人を育ててきた。それこそが音楽を育てる方法論だったのだ。今はどうなのか?みんな音楽は「無料」だと思っている。世の中に無料のものなど存在しないのにだ。秋には聴き放題の音楽ツールがまた現れると聞く。それでいいのか?ミュージシャンは自分の権利ばかりを主張する為に個人事務所を作っては「権利」を守ろうとしている。そんな動きになんの美学も哲学も無い。音楽はスポンサーの寄付によってのみ生きられるのだとは言わない。だが、無駄やムラがあってこそ、全体として音楽なのだから。人だって良い部分と悪い部分を持っている様に、だからこそ楽しくて美しいのだ。それがジョンの云う「マジック」ではないのか?
たかが数曲のうちの何曲かが自分の好みに合わなかったからといって「余計なものを買わされた」と思うのはあまりにも心が貧しくはないか・・・。完璧な人間でない者が完璧さを求めるようなケチくささ。アーティストを育てる、いやもっと先の音楽を育てているという広い心が無い者に音楽は無用の長物である。

音楽ビジネスを知らない人や興味のない者にとっては、現存するスタイルも悪くは無いと考える人間がいるかも知れない(おそらくこれを読んでいる人の中にも反論者はいるだろう)だがしかし、ジョンの云うマジックはそういう方々には永遠に訪れないし、音楽を育てる意味も理解されることは無いだろう。ある人から聞いた話だが、以前は音楽家に憧れて、少しでもその近くに身を置きたいと願う若者がいたが、今は「音楽では食って行けない」という理由から、音楽にたずさわる職業自体の人口も減っているという。アルバムを作るには、ジャケットを飾るアーティストや写真家がいて、それを加工するデザイナーがいる。クラブを運営する者がいれば、そこで照明やミキサーを担当する者もいる。今、これらを目指す人は確実に少なくなってきている。これは音楽や音楽ビジネスだけではなく、その影響は周辺にも及んでいるのだ。(破壊したのは音楽だけではないということだ)

音楽を育てるシステムを破壊したのは何もスティーヴ・ジョブスだけではない、YOU TUBEだってそうだ。(いや無料という点で最悪の存在かも知れない)音楽は聴きたい。だけどお金を払うのは嫌というなら、それは腹が減ったので食べ物を盗もうという考えにも似ている。極論かも知れないが。そうだな・・・試食コーナーで満腹になるまで試食できたら、誰もそのスーパーで買い物はしないだろ?そういうことだ・・・。
最近アナログ盤が見直されていると聞く。もしかしたら皆何かに気が付きだしたのかも知れない・・・。そんな淡い期待を抱かせる今日この頃。「ジョン、もうすぐアナログが復権して、これが僕たちの音楽への接し方だと言える日が来るかも知れない。いや、そうあってほしい。」(なぜならアナログであること以外はすべて違法とすることでのみ音楽は生き残れるからだ。)

そんな訳で今回はジョン・ボン・ジョヴィの精神が「アート」であったことをお伝えしたい。(長文ご容赦下さい。)






JOYCE /Delirios De Orfeu

2015-06-05 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●「ブラジル人はボサノヴァをよく聞くんだろうな~」なんていう馬鹿げた質問は一笑に付される。ブラジル人は今流行りの音楽を聴いているそうである。そうだよね・・・日本で例えるなら、「日本人は皆演歌を聴いている」と外人が思っているのと同じぐらい間違った認識ですよね(笑)

ジョイスのこのアルバムやけに出来が良いと思ったらやはり日本人が噛んでいた。ジャケのアートワークも勿論オリジナル曲を3曲に抑えて、後はカヴァーで仕上げてと日本人の痛いところを突いている。未だに個人的にはこのアルバムを超えるジョイスのアルバムに出会っていない(あくまで個人評価ですが。94年作NECアヴェニュー製)。青空にギターをつま弾くジョイスと大輪の花。まことに痛い。ツボにはまったマッサージ。この上なく心地よいサウンドです。

 1曲目「中国人と自転車」・・笑います。切っても切れないものの比喩で引用されていますが、天安門広場でも昔は大挙して走っていた自転車も今は自動車にとって代わっているのですから。ジョイスの思い込みですね。僕のブラジルとボサノヴァと大差ございません。でも心地よい。この季節これを持って出かけたい・・・。

https://www.youtube.com/watch?v=loKSpzFOJdw


EGGSTONE/in San Diego

2015-06-05 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●僕の記憶が正しければ、カーディガンズ達による第2次スウェディッシュ・ブーム以前の93年前後には既にこのエッグストーンが日本に紹介されていたと思う。(第1次スウェディッシュ・ブームはもちろん70年代アバ達による・・・いや、もっと云えば起源はビョルン&ベニーに遡るが・・・誰も知らないしね)EGGSTONEを探してきて、これを日本で売りたいと思ったインディレーベルの方々に感謝!目の付け所が斬新だったのかな!で、ジャケットである。これは何ともポップで、今でもこのデザインは個人的には気に入っている。ミキサーを単純にデザインしたものだけれど、ポップな中身と思いっきりシンクロしている様が芸術的。デザイン大賞です!(ちなみに、アルバム数曲をプロデュースしたのはブームの立役者トーレ・ヨハンセンでした)


https://www.youtube.com/watch?v=8sZ-zI6b0u0

Blue Six / Beautiful Tomorrow

2015-06-05 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●2002年NAKEDレーベルのDJハウスものの傑作アルバム!
ジャケットであるが、これはイラストである(漫画もしくはアニメといった方が良いか?)遠目で見ると実際の写真かと思うほどリアルな質感がある。グループ名に引っ掛けたブルーに染まったガラス張りの部屋。アンニュイな音楽が良く似合う。実はこのジャケット見開きになっていて、ベッドの端には男性も描かれている。意図的なのかどうか、この男性が写っていない方が見栄えがいい。女性独りの方が圧倒的にこのダウンテンポには似合っている。ミステリアスな雰囲気が醸し出されているからだ。ハウス、DJものという割にはギター、ベース、コーラスなどを加えた大所帯で編成されている。これ以降日本国内でもこうしたDJものは大いに増えた。ジャケ買いの衝動に駆られる1枚。

https://www.youtube.com/watch?v=9tqyQBMaeMI