New Vinyls!ニュー・ヴァイナルズ

「アートなジャケット」記事と超個人的主観による「アートなジャケット」年度表彰を行うブログです。長期休暇より復活!

Supertramp / Breakfast In America

2016-07-24 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●LPジャケットをこうして眺めていると、1967年を境にこれまで顔写真の多かったアルバム・ジャケットにイラストやメンバーの顔写真の無い作品が増えてくる。その代表格にこのブログでも紹介したアンディ・ウォーホールの筆になる「バナナ・ジャケット」ことヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコの作品や一連のクリームのサイケデリック・イラスト、同じくエリック・クラプトンの参加したブラインドフェイスの「スーパー・ジャイアンツ」などの傑作が挙げられる。(ジャケット写真は有名すぎるので割愛させていただきます!)

 そして、商業的な成功とインパクトを大衆にもたらした究極の作品は70年キング・クリムゾンの「~宮殿」ということになるのかも知れない。キャッチコピーを見ると「あのビートルズのアビーロードを抜いた・・云々」とある。つまり、それまでの作品は「こんな人が歌ってます」的な解説書に於ける補完的な意味合いの強かったジャケット写真から「歌で勝負しています。誰が歌っているかは買ってからのお楽しみ」的なある意味売る側の論理のような芽生えがこの時期にはあったのかも知れない。それもこれも音楽雑誌やラジオ、歌番組などと云ったマスコミの活発な活動に下支えされて成し遂げられたことは見逃せないポイントだと思う。それらすべてがこの時期に音楽文化と云うものを形成して、結果的にアルバム・ジャケットの芸術性の向上につながったとみている。

●この後70年代以降は雨後の筍のようにイメージ・ジャケットは数多く発売されるようになるが、ピンク・フロイドの「原子心母」やマウンテンの「華」シリーズのイラスト・ジャケット、72年のイエス「こわれもの」、そしてウィッシュボーン・アッシュの「百眼の巨人アーガス」が有名なところか。しかしながら、今度はアルバムジャケットからイメージを膨らませた国内盤の独自邦題が付け加えられるようになるのだが、ここまで行くといささか「やりすぎ」感が強い。その代表格は73年のピンクフロイドの「狂気」。これは原題を「THE DARK SIDE OF THE MOON」と云うが、日本人は誰もが「狂気」と云えば「あ~ピンフロね」となるが原題となるとピンと来ない。最近はそうした反省からか、あまりにかけ離れた邦題はキャンセルされる傾向にあるようだ。



 
●そして70年代もドン詰まりの79年に発売されたスーパートランプの「ブレックファースト・イン・アメリカ」はジャケットの持つインパクトのみを主眼に採用された作品である。70年代の硬派なプログレ・ジャケットや意味深な難解ジャケットに対しのアンチテーゼとして作られたような気がしてならない。そして彼ら自身もこれまでのプログレ的な音造りを排して聴きやすいポップスを前面に打ち出して自分たちが変身したことをこのジャケットを通して高らかに宣言している。その結果、彼らはこのアルバムから3曲ものビッグヒットを放っている。ポリシーを持って「名は体を表した」70年代傑作ジャケットとして位置付けたい。
 飛行機の窓から撮影された自由の女神が太ったメイドのおばさんにすり替えられている。もしかしたら太ったアメリカの病巣みたいなものを本当は歌いたかったのかも知れない。そうだとしたら裏の裏をかいた本当のプログレッシヴ・ロックだ!?(いささか深読みがすぎるか・・・)ジャケット、収録曲ともに満点な作品だ!
 

Paul McCartney / McCartney

2016-07-10 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●久し振りに夢でうなされた・・・。大声をあげてしまった・・・。(汗)
たぶん殺戮ゲームのせいだろう。画像が人に与える影響ってなんてデカいんだろう!こんなささくれだった心の時には音楽を聴くか、本を読むのが宜しい!

 何気なく開いたページにポール・マッカートニーのファースト・ソロ・アルバムが載っていた。ビートルズが来日してもう50年が経つんだ・・・。僕はビートルズ・ファンではないのでそれほど思い入れがある訳ではないのだけれど、ロックがこんなにも早く「クラシック化」してしまったことに驚いている。世の中のコンピュータ化はロックの命をも短くしてしまったのかしら。

 立ち上がって針を落とすとプチプチ音の向こう側に「junk]が流れている。しっとりと心の中に沁み込んでくる曲。こうした小曲でしかも佳曲っていうのは時々お目にかかる。デレク&ドミノスの「庭の木」なんかもこうした系統の曲かな~。アルバムには某FM局の番組テーマソングに採用された曲もあるのだけれど(懐かしい!)一番のインパクトはこのジャケットでは無いのかな。トリミングされた白抜きの中に無造作に置かれた皿と果物の実・・。デザイン的な構図が素晴らしい!何んとも云えない味がある!これは伝説と化したかつてのポールの奥様(そしてバンド仲間でもあった)リンダの「写真家」としての作品である。確かにこのブログでは新作のジャケットが次から次にアップされて、それはそれでジャケット好きには楽しいと思うのだけれど(すみません手前味噌でしたね)秀作となるとそれほど数がある訳では無い。これはその中の1枚に間違いない。

https://www.youtube.com/watch?v=w6qfQ5BEQ2s
これは「がらくた」を歌ったものなんだろうか・・・僕はこの曲を聴く時、がらくたのジャンクより先に海に浮かぶ「ジャンク」を思い出してしまう・・・この曲をどう感じようがそれは個人の勝手である。いやそれこそが音楽の素晴らしい部分なんだ!!(音楽にとってのプロモーション画像の弊害は語られて幾久しいけれど)



Chick Corea / Return To Forever

2016-07-09 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●私は「そりゃそうだろ」という言葉があまり好きでは無い。
時として、それは会話の序列として優位に立ちたいが為の常套手段のように聞こえる。
事情をこちらの方がよく知っているのに、さも知っているように「そりゃそうだろう」というアナタに私は懐疑の目を向けます。
「そりゃそうだろ」という人ほど実は事の真実をあまり知らないのかもしれません。
この言葉の正しい使い方は、「詳しいことは自分には分からないけれど、一般的にはそうかもしれないなぁ~」というのが正しいのかも知れません。

●そしてチェック・コリアです。
これはあまりにも有名なジャケットなので敢えて回避しても良かったのですが、やはり彼の「音楽という大海原を疾走していく」姿が如実に表れている様な気がして、いつもこのジャケットに舞い戻ってしまいます。ところがこのアルバムの内省加減といったらジャケットとはほとんど対極にあります。個人的にはその後76年の「My Spanish Heart 」が今でも凄く気にっています。コーラスの「♬lalala~」と入る部分では心がどこかへ飛んで行ってしまうのです。考えてみればチックの音楽性って一体どこに本性があるのか分かりません。「The Mad Hatter 」(78年)のプログレ志向や、86年以降のエレクトリック・バンドのフュージョン志向と、そしてゲーリー・バートンとのクリスタル・シリーズの静寂の世界や最近では上原ひろみさんとのハードなコラボ。そしてクラシックへの接近など・・・。本当に彼は「天才」と呼べる人たちの中の一人なのでしょうね。とにかく音楽性の幅が広すぎます。

 そんなチック・コリアの音楽をよく知る人の前で私は「そりゃそうだろ」なんて言葉は使えません。貝のように押し黙ってその人のご意見を聞いていることでしょう。私がチック・コリアのことを語るには未熟すぎるからです。





※詳細はユニバーサルさんのサイトをご参考に!
http://www.universal-music.co.jp/chick-corea/

VARIOUS/Cafe Hawaii

2016-07-03 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●最近いたるところで販売されている廉価盤で「NOT NOW MUSIC」シリーズというのがある。ネットでも熱心なオールディーズ・ファンが目ざとく見つけてきては寸評をアップしているが、概ね良好な評価を叩きだしている。音源自体は50年代から60年代をピックアップされているがすべてブラッシュアップされていて聴きやすい。先日もこのシリーズのポップス・コンピレーション・アルバムを聞き流しながらドライブした。これはすごく楽しい!何がって、「日本のポップスの原点がすべてここに凝縮されているから!」

 あの大瀧詠一さんのナイアガラ・サウンドから山下達郎さん、かつて熱狂的に受け入れられたグループサウンズに至るまで、日本の流行歌の原点がそこここに聴かれる。「ああ、あの曲はこの曲がモデルだったんだ!」とか「この曲あの曲に似てるなぁ・・・」とか「この感じが拡大されてあの流行歌になったんだね・・・」というような感嘆符が次々に飛び出して来て楽しい。自然と顔がスマイルマークになってしまう!もちろん、今取り上げるとマズいようなパクリぎりぎりの楽曲もあって、ここは「リスペクトしている」ということで許してしまおう。

 ダウンロード全盛の世の中で、こんなに古い音源をCDで大量に製品化している逆転の発想というか、UK廉価メーカーの音楽に対する情熱がひしひしと感じられて熱い!メジャー・メーカーはこういった企画自体は採算に合わないし、売れないと思っているからこそ、それぞれのアルバムは廃盤になり、世の中から消えたのだ。しかしながら先ほども触れたようにアーカイブとしては貴重な音源ばかり!今聴いているオールディーズのコンピからメインジャンルのジャズはもちろん、ブルース、カントリー、ワールド系に至るまで現在のCD店では置いていないものがほとんどだ。とりあえずオムニバスものは千円前後で買えてコストパフォーマンスが異常に高いのでオススメ!

 確かに今の若者にとってはオールディーズは触れたことのない音楽だからこそ彼らにとっては「新しい音楽」なのかも知れない。今チャートをにぎわしているメーガン・トレーナーの音楽などはそうした意味合いなのかなぁ。(彼女の音楽は全くのオールディーズに聞こえる!) 

 「おお、この曲はマツコのテレビ番組の主題歌ではないか!こんなものまで収録されているとは・・・」ちょっと嬉しかったりする。(♪LINDA SCOTT 'I'VE TOLD EVERY LITTLE STAR’」


●そんなNOT NOW MUSICから、ジャケットのデザインが素敵なものをひとつ。
同レーベルからシリーズ化されている「カフェ・シリーズ」の中の絵柄もの。概して世にあるオールディーズのジャケットはダサいものが多いが、こちらは飾っても良し。オールドハワイアンのオムニバス(あえてここはコンピとは呼ばず、オムニバス)なので、現在のようなスティールギターではなくスラックギターのハワイアンになるのでお間違え無く!ハンフリー・ボガートみたいなオッサンにレイをかけているハワイアン・ドレスの女性と抜けた青空が底抜けに楽しいイラストだ!この夏一味違った夏を過ごしてみれば?!