New Vinyls!ニュー・ヴァイナルズ

「アートなジャケット」記事と超個人的主観による「アートなジャケット」年度表彰を行うブログです。長期休暇より復活!

Michael Franks/Time Together

2015-11-22 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●マイケル・フランクスのジャケットは実に美的なものが多い!ルソーのタッチをモチーフにした「タイガー・イン・ザ・レイン」も良いし、最近の作品では「ドラゴンフライ・サマー」も素朴で良い。何んと云っても(アートなジャケット)と云えばゴーギャンの絵をそのまま使ってしまった「オブジェクツ・オブ・ディザイアー」になる。しかしながら私の切り口は若干違うかも知れない。ながらくマイケル・フランクスのジャケットと云えば、「スリーピング・ジプシー」を超えるものは皆無だった。特に有名な曲「アントニオの唄」が収録されていた事とは無関係にジャケットの絵柄が素晴らしかったからだ。森を見上げた時の木漏れ日がキラキラとして何とも言えない高揚感がある。色合いもどちらかというとモノトーンでセピアに近い色合いで、これが今ではなく遠い記憶の中の木漏れ日を連想させるのだ。そしてワンポイントに置かれた蛾-たぶんこれは蝶では無い。美しいものの中に1点の毒を置くことの小粋な演出も光る。



 
 そんな訳で、今も「スリーピング・ジプシー」を超えるジャケットは無いのだが、2011年これまでの印象とは全く違うタッチの新作が発表された。それがこの「Time Together」だ。イラストは「ローズとライオン」の絵本などを描いたクリスティーナ・スワーナーさん(米国、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン卒業。2006年にコレット・インターナショナル図書賞受賞。2008年、2011年にはシドニー・タイラー図書賞で金賞を受賞。イリノイ州シカゴ在住)少し幼稚な絵で子供が描いたのかと思ったが(失礼)なんともドリーミーな絵画である。アルバム・タイトル通り運命のボートに揺られながら同じ時を生きるとでも言いたいのであろうか・・・。(恐らく愛犬の死を通して描かれたのが本作なのだろう)そしてジャケットの裏面を飾るのはマイケル本人が映した写真!水草の生えているところに目をやると愛犬と記念撮影に収まった景色とそっくりではないか・・・。もしかしてこれは愛犬と散歩を楽しんだ水辺?そして右上には上記の「スリーピング・ジプシー」に使われていた蛾がレーベル名と共に蘇っている!しかも蛾のいる後方にはあの木漏れ日がありそうな森が一面に広がっている!マイケル本人に確認するしか方法は無いが、ここには何か明確な意図があるような気がしてならない。(音楽を通して考察すれば、このアルバムは「スリーピング・ジプシー」のアンサーソング的なアルバムだという人も多いらしい)




 収録曲の♪「MICE」は「含蓄があって素晴らしい」と友人が言っていたが、私は英語が分からないのでどうしようも無い。ただ、収録されている中では出色の出来だと思うが、ここでも切り口が他の人とは違っているのかも知れない。(歌詞の内容を知りたい方は以下の公式ページでご確認下さい。歌詞は著作物であり、無断でネット上では公開できませんので!)

http://www.michaelfranks.com/lyrics.html



Will Young/Friday's Child

2015-11-22 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●ジャンプアップしてるのではなく、ジャンプダウンしてるのだが、何ともウィルの楽しそうな笑顔が印象的で晴れ晴れとしたこのアルバム・ジャケット。オーディション番組のファイナリストとして登場した彼もこの10年ほどで6作ものアルバムを残しているが、このジャケット以外で心から笑っているジャケットを見たことが無い。やはりジャケットというのは歌手の心をも写す鏡なんだろうか?その後の活躍を伝え聞くニュースも無く、唯一彼がゲイだということを告白したことくらいかな・・。
 オーディション番組っていろいろあるけれど、陽の目を見ない素人にとっては又と無い機会を与えてくれる。これらの番組がなければ、ポール・ポッツやスーザン・ボイルは今の歌謡界にはいなかったことだろう。ウィル・ヤングも正にそんな一人だ。アルバムには珠玉の名曲たちが収められているが、中でも心を打たれるのはティム・クリステンセン原作の「LOVE IS A MATTER OF DISTANCE」かな・・・。オリジナルも良いが、カヴァーのウィルの方が何となく良い。晴れた日に青空を見上げてこの曲を聴いてみると理由もなく涙がにじんでくる・・・。そんな名曲だ。曲の中で歌われる「距離」とは彼氏のことを想って切なく歌ったのか?それは深読みなのかも知れないけれど、同様の感覚をエルトン・ジョンの名曲「ダニエル」にも感じたものだ。ともあれ、内容とジャケットが見事に融合した傑作と位置付けたい。


https://www.youtube.com/watch?v=unXeptR5Zqw



Fairground Attraction / First Of A Million Kisses

2015-11-21 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●「ジャケットがいい!」という世間の批評とは裏腹に、私の中ではジャケット写真としては序列の低いアルバムです。というのも、写真がこのアルバム用に作られたものではく、写真家エリオット・アーウィットの既存の作品を流用した、いわゆる「貸ポジ」作品であること。例えるなら、自分の作った音楽にイメージの近い写真を切り取ってジャケットにするようなものなのでインスタントなイメージは避けられない。ヒットした「パーフェクト」「ファインド・マイ・ラヴ」などの収録曲より、どちらかというと「Smile In A Whisper」に胸がウズいてしまう自分だ・・・。しかしながら、フェアグラウンドのジャケットを見る度に、ずっと後になって発売されたシックスペンス・ノン・ザ・リッチャーの「KISS ME」って曲が思い浮かぶのは私だけか?サウンドと曲のイメージをびったり合わせるのは難しい。だからこそオリジナルのアルバム・カヴァーは必要なのだ!(88年にして最初で最後の彼らのアルバム。その後のエディ・リーダーの活躍はご存知の通り!)

https://www.youtube.com/watch?v=B9lBefWU8Gs

Miami Horror / All Possible Futures

2015-11-07 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●80年代の所謂AOR的なイラストと云えば、やはり鈴木英人さんや、永井博さん、わたせせいぞうさんがパっと思い浮かぶ。もうこれは時代に刻まれたタトゥーのようなものだ。一体彼らのいくつの作品がジャケットに使用されたのだろう?
 こんな風に「AOR」と聞けば彼らのタッチが思い浮かんでその業績の大きさを知ることになるのだが、悲しいかな音楽というものは思い出とセットになっていることから、なかなか「温故知新」には至らない。古い名盤やベスト盤が未だに売れ続けているのも、その「遠い思い出」のせいだろう。人は思ったより保守的で古いものしか温めていないのだ。
 
 さてここに、今年発売されたばかりのMiami Horror なるバンドがある。まずはそのジャケ写を見ていただきたい。まさにオールドファンも唸るタッチだ。そして何より音自体AORの進化形と呼べるもの。いつまでもクリストファー・クロスとそれにまつわる思い出だけに留まっていないで、まず一歩を踏み出してほしい。そして出来ることなら、こんな新しいAORを持って街や海に出かけて欲しい。そうすることで、また新しい思い出があなたのものになる。そして数年後、この素晴らしい出来のジャケットを再び眺めるとき、今のキラキラが鮮やかに蘇るだろう。


https://www.youtube.com/watch?v=LtLfZXan4xI

PFM / Photos Of Ghosts

2015-11-05 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●脳科学者が「幽霊は脳で見る」と言っているようだが、怪しい。おおよそ科学者や医者は自身の専攻する専門分野にはめっぽう強いがその他の領域はからっきしだという場合が多い。しかも「いかにも私は先生だ」だと云う上から目線が更にイヤらしい。実際、私は母親が病気の際に病院をたらい回しにされた苦い経験を持っているので、そう言い切れるのだが・・・。まず自分の知らない、分からないことを自分の知的領域の中だけで判断しようとする(仕方がない、専門バカなのだからね)。

 では聞こう。例えば幽霊が脳の働きによる幻影だったとして、付随して起きる不可思議な現象はどう説明するのか?二人でそれを同時に見た場合はどうなのか?これも脳の力だというなら人間は恐ろしい超能力を持っていることになる。(大笑)新聞やそれなりに名があるものが書けばそれなりの説得力を持っているように聞こえるが、実際は片手落ちな見解に過ぎない。昔はそれでも情報伝達手段が少なかったのでそれに頼り切っていたが、今の時代はネットが普及して、玉石混交と云えども一方通行の情報だけではなく、様々な情報を得ることが出来るようになったのは幸せである。昔と云えば魔女狩りのようにデマや間違った情報で多くの人が命を落としたのだから。
 そもそも科学とは人が「無」であることを証明したいのか?私はそんな夢の無い話は聞きたくない。今や感情と自己判断と恋愛をも体験できるロボットが誕生しようとしている世の中である。(考えようによっては幽霊より恐ろしい事柄だが・・・)

 折角幽霊の話しが出たので、こちらの「Photos Of Ghosts」も紹介しておこうかな。イタリアが生んだクラシカル・ロックの名作なのだが、ジャケットは残念ながら、この後発売される「World Became The World」の方が面白い。(下図参照)くり抜かれた空に島が見える仕掛けだ。この「くり抜き」はLPでしか楽しめない。他にも様々なくり抜き型のジャケットが当時流行ったものだ。(ハンブルパイの「サンダー・ボックス」やELPの「恐怖の頭脳改革」やストーンズの「スティッキー・フィンガーズ」のジッパー付きもある意味これに近い)
 人は見えないものを見ようとする。ジャケットのように穴をあけて簡単に中が見えたらいいな。でも、そんな単純じゃないから人間はおもしろい・・・。この73年の大作を改めて聴くと想像の泉が湧いてきて、自分をあらぬ場所に飛ばしてくれたりする。それは脳の中で起こっていることだけれども、もしかしたら魂が本当に中世の世界を旅してるかも知れない・・・。そして呪文のようにこの言葉を唱えてる自分がいる。「プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ、プレミアータ・フォルネリア・マルコーニ・・・」(=PFM)
「音楽っていいな。作者が死んだ後も幽霊のように人々の口から現れる。音楽って永遠の命を持つものなのだ。」




Emerson Lake and Powell / The Score

2015-11-01 | アートなジャケット(CD&Vinyl)読み物
●ミュシャという画家について特に好んで見てみたいという感覚は無かったが、先日細部のディテールについて長年の謎が解けた。(今更ながらですが)背景や流れるようなデザインのモチーフは花や動物の他、櫛やテーブル、フォークなどに使われた花などの素材、そしてその光り方のデフォルメだったこと!「そもそもアール・ヌーヴォーのあの流れるようなデザインはどこから発想されたのか?」そんな謎が解けた瞬間はまるでミュシャという画家、いや、アール・ヌーヴォーのすべてが分かったような気分に陥る(もちろん完全なる錯覚なのだが・・・)。

 その後、時代はアールデコへと変化していく。やや直線的でモダンなデザインが主流となっていくが、その代表格に巨匠ジャン・カルリュがいる。彼の代表作の中にビールの宣伝ポスターがある。この直線的でシンメトリックな構図に影響を受けたと思われるのが、今回のELPのジャケットだ。なぜ彼らがこういったモチーフのジャケットにしたのかは不明だが、「名は体を表す」という意味においては正しいのかも知れない・・・。
 というのもアール・ヌーヴォー的な優しさやふくよかさ、流れるような音は消されて、直線的で攻撃的、スパルタ的で戦闘的な楽曲を残すことを選んだELPそのものを表していると云えるからだ。もちろん、ジャケット選定については彼らが「恐怖の頭脳改革」の制作の際に、実際に鬼才HR.ギーガーの工房に足を運んで決めたという経緯が輸入盤の特別記事に書かれていることからもわかるように、彼らが絶対にジャケットにこだわり持っていると確信しているからだ。

 既にELPには以前にもこのコーナーで登場いただいたが、こちらは同じELPでもドラムをコージー・パウエルに変更した後期ELP。そもそも別グループと考えた方が正しいのだが、オールドファンにとってはそれこそアール・ヌーヴォー的な楽曲を再び聞きたかったに違いない。♪「STILL...YOU TURN ME ON 」「FROM THE BEGINNING 」「Stones Of Years」・・・many many more。流麗で神秘的でふくよかな楽曲は心霊現象などを信じていたミュシャとの共通項があるかも知れない。ELPの音楽がアール・ヌーヴォーからアールデコへと変化した時代なんだなと・・・。