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『権力を取らずに世界を変える』 その1

2011-05-01 15:06:50 | Weblog

『権力を取らずに世界を変える』(ジョン・ホロウェイ著 大窪一志・四茂野修訳 同時代社 2009年刊)

 

2年前に購入した540ページほどの書であるが、何回かチャレンジしているが中途で挫折を繰り返している書である。しかし、この「権力を取らずに世界を変える」というメッセージは、その後、自由のことを考えたり、無政府主義的なことを考えたりしている中でも、常に頭の中で気になるフレーズなのである。

 

ホロウェイの問題意識は、最初の「日本の読者のみなさんへ」で端的に表明されている。(以下、「 」は要約引用)

 

「資本主義が人類にとって破局をもたらすものであることが明らかになってきた。では、どのように資本主義を倒す革命を起こせばいいのか。20世紀の革命は失敗に終った。それも、多くの災厄を招き寄せながら。

 

本書の狙いは、革命が21世紀にもっている意味をめぐる論議の扉を開くことにある。ラディカルな社会変革の可能性について語ることができるようになるためには、20世紀において一般に受け入れられていた、革命の中心課題は国家権力を獲得することにあるという考え方を問い直さなければならない。

 

権力を取らずに世界を変えることが必要だ。それは、どうやったらできるのだろうか。そんな不合理なことを追求した本である。」

 

1 叫び

本書は、「初めに叫びがある。われわれは叫ぶ」というフレーズから始まる。「怒りからこそ、思想が生まれ出る」

 

「私たちの出発点は、私たちがまちがっていると感じている世界を拒絶すること。否定的なものだと感じている世界を否定すること。これが、私たちが握って放すべきではない観点だ。」

 

「私たちっていったいだれ?」「私たちは、純粋なものではなく、雑然とした存在であり、対立した社会から生まれ出てきた対立をはらんだ存在である。感情をわきにおいて、客観性を重んじることから出発してはいけない。」

 

「私たちの叫びは単なる恐怖の叫びではない。自由になることを夢見ているから叫ぶのだ。」

 

「この本の狙いは否定性を強めることだ。」「否定の思想のうちで最も強力な潮流はマルクス主義だが、否定の思想を「イズム」に変形したため、否定の力を狭めてしまった。」

 

「私たちは、平穏な生活を守るため、飢餓や暴力や不平等に対する嫌悪や違和感を意識的もしくは無意識的に抑えている。」

 

*ホロウェイが述べていることは、例として、子どもたちの中(社会)で、いじめ(理不尽)が存在する時、アンケート調査や道徳(理論)を説いても問題の解決にはならない。必要なのは、自分で加害の相手を裏庭にでも呼び出して、渾身の一撃を食らわすこと(叫び!から)にしか打開の道はないのではないかという提起である。


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